第3話、アリスは私の大親友!
「はぁ、はぁ……危うく首が無くなるとこだった……」
肩で息をしながら、私は先程の出来事を思い出す。
そして、男たちの会話を少しずつ脳に再生していくと、自然と出る結論はただひとつ。
(アンドルフ様……もしかして、いや、もしかしなくとも狙われているタイプ?)
確かに、御貴族様は立場が偉いほど命を狙われやすいと聞く。でも、よりによってあの超名門であるビネガス公爵家のご令息様を狙うなんて……
私にとって“推し”であったアンドルフ様の衝撃事実を知り、半ば呆然としながら廊下を歩く。
突き当りに差し掛かったとき、誰かとぶつかった。
「はうっ!」
「きゃっ!」
その可愛らしい声で、私は相手が誰だかすぐに気づく。
「アリス!!ごめんね、大丈夫?」
大丈夫だよ、と言って立ち上がる彼女は、私の仕事仲間であり大親友でもあるアリス。アリスも平民出身だが、やはりメイドとして抱え込まれるだけあって整った顔立ちをしている。同じ頃にお屋敷に来て、年が近かったことからすぐに仲良くなった。今ではお互いになんでも言い合える仲だ。
アリスはボーッとする私に、こてんと首を傾げ、たずねる。
「それにしても、どうしたの?エミリー。なんだか心ここにあらずって感じだけど……」
そこまで言ったところで、アリスは何かに気づいたようにニィッと笑みを浮かべる。
「あー!わかった。恋したんでしょ!ふふ、エミリーにもついに春が来たかぁ。それで、お相手はどんなお方?もしかして、最近来た執事のエドワード君?」
なんだか恐ろしい方向に話が行きそう。私は慌てて否定した。
「違うよぉ!……なんていうか、ちょっと気になることがあって……」
「気になること?もしかして、アンドルフ様繋がり?」
思わぬ言葉に、私はびっくりしてアリスの顔を凝視する。
「なんでわかるの!?」
「あははっ、やっぱり。エミリーが悩んでいるときは、大体アンドルフ様関係なのよ」
楽しそうに笑うアリスに、私は湿った視線を投げかける。
「それってどういう意味ー?」
「そういう意味!」
仲良くおしゃべりしていると、時間はすぐに溶けていく。気づけばお昼の鐘がなっていた。
ゴーン、ゴーンという重苦しい音に、私達は顔を見合わせる。
「え、もうこんな時間!?」
「急がないと、食堂のテーブルが埋まっちゃうっ!」
私達は、使用人専用の食堂に向かって走り出した。