第16話、着いてしまったようです。
……は?
え?え?うん。……え?
なんですって?
「僕の専属メイドに、するよ」
困惑する私の様子に気がついたのか、アンドルフはわざわざ強調して繰り返した。
いや、もうそれはわかってるんです。わかってないけど。……それに至った経緯を教えてくれませんでしょうか?
「っ……スー、えーっと、はい。説明をお願いします」
そして、心の中にある、困惑、拒絶、不満などの感情をすべて押し殺した笑顔で私は問うた。営業スマイルというものが、とてもうまくなった気がする。嬉しくないけど。
……もう、本当になんなんだろうか。今日は厄日どころか命日なのかってくらいに心臓に悪いことが、立て続けに起きているのですが。
あれ?もう、最初の頃に確かにあった、『夢を見る年頃の乙女』みたいな感情が全て消えてしまった気がする。……早すぎないですか?大人の階段登る速度。
「うん。だから、たった今決めたんだ。君を、面白そうな君を、専属メイドにしようって」
色々言いたいことありすぎなんですが。しかし、すべて問いただす暇はないだろう。
「面白そう?どのあたりがです?」
「うーん、君の生い立ちから性格まで、全てってとこかな?」
こいつ……!私が普通の美少女ではないって気づいてやがる!私は心の中で舌打ちをした。もはや、貴族へ対する尊敬など、皆無である。なんだか口(と性格)も悪くなった気がする。パパ、ママ、ごめんなさい。昔の素直で可愛いエミリーはもういなくなりました。これからはもう、これでやっていきます!
そんな風に、両親に心の中で謝り倒していると、ふと馬車が止まった。
「着いたようだね」
そう言って、アンドルフは窓から外を見る。
……着いた。着いてしまったのだ。私がこれから仕えることになる、ビネガス公爵家に。




