第15話、はい、説明をお願いします。
「ちょ、ちょちょちょ……!」
「ん?なんだい?」
そんな不思議そうな顔をされても……!
「いい、いきなりどういうことですかっ!わた、私許可して、ませ、んよね!?」
焦ったあまり、とても噛んでしまった。うう、視線が痛いよう。
というか、最初は多少『御貴族様のメイド』という職業に憧れはあった。でも、ねぇ?あのマルドスの態度を見てからじゃ、そんな気持ちはこれっぽっちも湧いてこないっていうかあ。
そもそも、この事件(事故?)が終わったら、ここを出ていこうと思っていたところですし。今更勧誘されても……ちょっと。
そんな心の声が表情にでていたからか、アンドルフ様はにっこり笑って、こう告げた。
「これは勧誘でもなんでもない……命令だよ?」
「……」
つまり私には拒否権はないってことですか。……誰か助けて?お願いだから。この横暴貴族に……助けて?
***
「バイバイ、エミリー!……うぅ、どうしてこんなことに」
「泣かないで、アリス」
そんなこんなで、私、エミリー・ワトンソンは、御主人様であるマルドスから離れて、急遽ビネガス公爵家に行くことになりました。……なんでなんだろう、本当に。
今は、仲良くしていた数少ない友人のアリスと、メイド長であるローズさんとの、お別れの言葉をかわしている最中であった。
「エミリー……あなたがいた期間は少ないものだったけれど、向こうでも実りある生活ができるよう、祈っておきます」
「ローズさん……はいっ、ありがとうございます!」
そしてついに、時間が来てしまった。
なぜだかわからないけれど、私はアンドルフ様と同じ馬車に乗ることになった。仮にも公爵家の方と同じ空間なんて、胃が痛くなるだけだから荷馬車でいいのに。本当に。
私が馬車に乗り込むと、高級なガラスの窓から、アリスが泣きながら手を振っているところが見えた。
……ごめんね、アリス。私もできれば、こんなおうぼ……公爵家に仕えるなんて、恐れ多くて嫌だよ。
「不満かい?ごめんね、無理やり連れてきてしまって」
私も窓に張り付いて手を振っていると、アンドルフ様の声が聞こえた。
……いやもう本当に、アンドルフでいいかもしれない。というかこれから先、貴族の人はみんな(心の中では)呼び捨てで行こう。うん、絶対ね!
振り向くと、にこやかに微笑むアンドルフと目があった。
(……本当に思ってないくせに)
そして私も、笑顔を顔に貼り付け、言葉を紡ぐ。
「いいえ、とても光栄なことでございます。……しかし、私の両親に、連絡は?」
「ああ、もう出しておいたよ。2人とも、『なんと光栄なことか!』と涙ぐんだらしい」
「はぁ……」
行動が早い。さすが公爵の息子。
「それで……私は、向こうでどんな仕事をすればいいのでしょうか」
すると、アンドルフは「うーん」と何やら悩む素振りを見せた。
……え?まさか決めてもないのに連れてきたとか、そんな訳ありますか?と少し心配になったとき――
「そうだね、君は僕の専属メイドにしようか」
そう言って、彼はにっこり微笑んだ。




