第12話、ジ・エンド
や、やばいやばいやばいぃぃ……。
マルドス――いや、マルドス様は内心大慌てな私をまだ見ている。やばいやばい!そんな見ないで!謝るから!
それでも突き刺す皆の視線。痛い。
私は忘れていいはずだ。あんな過去。なにか、別の言い訳を……!
私は「ふぅー」を息を吐いてから、話し始めた。
「じ、実は……わた、わたくし、私の父の家系は代々、い、ぃい医者でございまして……」
嘘だろ、と皆が言ってる。目で。
しかし、誰も口を挟まない。正直言って、かなり怖い。
「それで、娘の私も、すす少し、その知恵を……」
「なるほど、お前の家は医者の家系なのか」
「はっ、はいぃぃぃ」
マルドス様はあいも変わらず険しい顔をしていらっしゃる。……よくないよぉぉぉ、にっこりも怖いけど、その顔も良くないよぉぉぉぉ。
「――だが」
「ひぃっ」
色々隠しきれていない声に、マルドス様は眉間にシワを寄せる。そういうところだけ目ざといの、やめたほうがいいと思います!さっきは「俺がルール」的なことを言ってたじゃないですかぁ!モテませんよ!いいんです!?
「お前の父親は、そんなことを言っていただろうか……」
うう、そうですよねぇ。……私のような使用人候補がここに来るとき、親は必ず職業を言わなくてはならない。そのとき、父ははっきり言ったのだ。……「建築家です」と。
……馬鹿だねぇぇぇ、私。こんな嘘バレバレだってぇ!もっと他に言いようがあったでしょう!
私はマルドス様がなにか言う前に、声を上げる。実はとんでもない不敬なのだが、今はそんなの関係ない。私の過去を知られたら、もっと面倒くさいことになる。絶対貴族のあれこれに巻き込まれてしまう。
「あ!ご、ごめんなさいっ、間違えました。確かに私の父の家系は医者ですが、その後を継いだのは叔父でした!すみません」
「ほぅ、だがなぁ……」
また何か言い返される!今度こそ、ジ・エンドするっ!そう思ったとき――
「やぁ、先程のお嬢さん。ありがとう、助かったよ」
誰かの声が響いた。
救世主!と思い振り返った私は、背筋をピキリと凍らせた。
そこにいたのは、とんでもなく整った顔立ちの青年――アンドルフ様だった。




