第11話、ガラガラガラガラ……(素敵な御貴族様(&護衛騎士様)が崩れていく音)
※エミリーはただ今ひどくイライラしています。たまに言葉が悪くなりますが、あらかじめご了承ください。
廊下で聞いた怪しい会話。アンドルフ様を陥れようとする者達。その存在を聞いたマルドス様たちは真っ青な顔で震えていた。
「ま、まさか……そのような者がいたとは……」
「……」
アリスがなんだか物申したいような視線を向けてきているが、無視を決め込む。
べ、別に好きで迷い込んだわけじゃないからね!?怒らないでよぅ!!
ゴホン、と一つ咳払いしてから、私は続ける。
「おそらく、本当におそらくですが……怒らないでくださいよ?」
「いいから言わんか!!」
チラリと伺った私に、マルドスがシラが切れたように怒鳴りだす。うるさいなぁ、誰のせいだと思ってんの?
もうひとつ咳払いをすると、マルドスはようやく静かになった。先程のトンチンカン発言を思い出したらしい。暴言を吐いたことはちょっと後が怖いけど、まぁ大丈夫でしょう!!
不安になりながらも、私は声を絞り出した。
「……多分、エドワード君がアップルティーを選んだのは、その者たちの仕業かと思います。現に――」
そこで言葉を切り、私は部屋の角の衝立で死角になっていたところに手を突っ込んだ。
すると、「ウギャッ」という声が聞こえる。
私は躊躇なくそれらを引っ張り出して、マルドスに突きつけた。私の馬鹿力舐めんなよ。
――そこには男が二人。そう、あの廊下で怪しい会話をしていた張本人だ。
きっと、うまくやり過ごそうとでも思っていたのかもしれないが、こんなのバレバレである。
マルドスは目をまんまるにし、そばにいた護衛騎士?が剣に手をかける。というか仕事しろよ、護衛騎士。
引っ張り出した男たちは諦めたのか、大人しく捕まっている。
「私が聞いた会話をしていたのはこいつ……この方たちです」
色々出てるよ、というアリスの声が聞こえてきたが、聞こえなかったふりをして無視を決め込む。
「こういう連中は、大体が、自分が作った楽しい楽しい光景を見ないのはもったいないと、こうやって覗きの真似事をします。私がそう考えたのは間違いではなかったようです」
つまりは、最初からずっとここに潜んでいたのだ。
たまにこらえきれない笑いが聞こえてきたというのに、誰も気づかなかった。護衛騎士さえもだ。なんだか、私の「素敵な御貴族様像(&護衛騎士様)」が崩れていく気がする。よし、決めた。これが終わったらここを出ていく。
まあ一旦その話はおいておいて……私は口を開く。
「きっと、エドワード君はアンドルフ様が林檎アレルギーだったことを知っていたが、なにかを盾に取られ、やらざるを得なかったのでしょう。例えば――故郷の家族なんかを」
そのとき、エドワード君がピクッと肩を揺らした。その様子に私は目を細める。
――どうやら予想通りだったようだ。私は微笑み、男たちをますますマルドスに近づけた。途端に、男たちはビクビク反応した。
「こいつらはおそらく、アンドルフ様を狙った盗人か何かでしょう。すごいですね、最近の犯罪者は。こんなやすやすと伯爵様の所有物であるお屋敷に侵入することができるわけですから。」
警備が疎かだと言うことを暗に言われた護衛騎士は、虫が悪そうに俯いた。
その様子に「フン」と鼻を鳴らしながら、私はマルドスに目を向ける。
なぜだかひどく怯えていたが、私には関係ないことだ。どうでもいい。
「そして、脅されたエドワード君は仕方なくアップルティーを選び――あとは察しの通りです。まぁ、こんなところでしょうか?」
説明終わり、というように私は手のひらをひらひらとした。
ちなみに、私が会話を聞いていたときにした、「パリン」という音は、想像だがエドワード君が自分がこれからすることに動揺しすぎてティーカップかなんかを割った音だろう。なにかお咎めがあったかも知れないが、私としては助かった。
まあそんな感じで事件は終わったわけだが、どうにも気になる。
――なんでみんな、こんなに私を見ているんだろう?
さっきから部屋にいる者たちの視線が怖い。穴が空くほど見つめられていては、こっちとしても落ち着かない。
すると、マルドスが恐る恐るというふうに口を開いた。
「それで……どうしてお前は、そんなに知識を持ち、頭がいいのだ?」
あ、と今度はエミリーが真っ青になった。




