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とあるゲームの悪役令嬢

作者: 琴音

この話には、ヤンデレ・メンヘラな描写がございます。


 とある晴れた日の昼下がり。



 学園の一端のローズガーデンにて、二人の令嬢によるささやかなお茶会が開かれておりました。


 一方は白百合の姫と呼ばれる公爵令嬢、キャサリン・レイクルーラー。

 金色のウェーブがかった、腰まである髪の毛に、翡翠色をしたパッチリとした目。

 おっとりと微笑む姿は周りの雰囲気まで穏やかにすると噂の、学園生徒の評する三大美女の一人。


 そしてもう一方は、赤薔薇の女王と呼ばれる公爵令嬢、レティシア・テオラシティス。

 この国の王太子の婚約者でもあり、何があろうと毅然とした態度を保っていた彼女は、身分性別問わず学生達の憧れの的でした。

 学園生徒の評する三大美女の一人でもあります。



 ――そう、憧れの的()()()



 人払いをし、場に二人きりになるとキャサリンは口を開きました。


「ねぇ、レティ。率直に聞くのだけれど。子爵令嬢を虐める様に仕向けているのは貴方ね?」


 聞くと言っておきながら確信を持っているように言うキャサリン。



「あら、何を根拠に? そのような事を言うとは、サリーは私を諌めたいということかしら? 私はなにもしていないというのに。可哀想な子爵令嬢を守ってあげるという正義感かしら?」

「あら、そういうわけではないわ。というか、あの令嬢に特に興味は持っていないもの。……そうねぇ、今回貴方を呼んだのは、子爵令嬢を相手にした貴方が見ていられない程愚かに見えたからだもの」

「なんですって!?」

「今だってそうよ。少し落ち着きなさいな。最近すぐ態度に出てるわよ?」


 キャサリンの対面に座るレティシアは、普段から吊り上がっている目がさらに吊り上がり、醜くキャサリンを睨みつけています。睨みつけられているキャサリンはいつものニコニコ顔ですが。


 現在二人が話題にしているのは、数ヶ月前に学園生徒の仲間入りをした令嬢について。


 オット子爵家の庶子である彼女は、平民街で暮らしていた所を一年前にオット子爵に発見され、学園に通う事となったのでした。

 周囲の環境が急激に変わり、まだまだ貴族としての作法も覚えていないものの、持ち前の素直さと前向きさで周囲の人々の――主に男子生徒の――関心を惹きつけていきます。それはもう、異常と言える程に。


 レティシアの婚約者でもある王太子、フィンセントもそのうちの一人。

 元々は真面目で優しく、国の為ならば公平な決断を下せる、立派な王の器を持った方でした。


 しかし、今は子爵令嬢に入れ込んでいて、学業も、婚約者であるレティシアの事も疎かにしてばかり。


 それに怒ったレティシアが子爵令嬢を虐めるように仕向け、フィンセントに咎められ、もっと怒り…………。



「ねぇ、レティシア。貴方って、社交界の華と呼ばれる程、高潔で、毅然としていたでしょう?」

「…………そうね」


 言葉に詰まったのは、キャサリンの言葉が過去形な事に怒ったのか、過去形に話した理由を自覚していたからなのか。


「それは、礼儀作法すらままなっていない、子爵令嬢如きに自分の婚約者が奪われてしまったから? 嫉妬しているのかしら?」

「……何が言いたいのかしら」

「あら、安心して。友人として相談に乗りたいだけなのよ。好きに話せるように人払いもしたのだし」


 茶会の会場は屋外ですが、周りは低木ばかりで人が潜めるような場はありません。そもそもこの茶会場は公爵家以上の家格を持つ令嬢しか入れないので、今の世代だとレティシアとキャサリンしか入ることが出来ないのですが。



「そうね。殿下とは十年以上前から婚約をしていて、信頼も情も芽生えてきていたわ。……ッ、それなのに、あの女狐! 何度注意してもわたくしの婚約者(パートナー)を籠絡しようとしてくる! わたくしの殿下をッ!」


 殿下は貴方の物ではなくてよ? と思いつつ、キャサリンはまだ言いたりなさそうなレティシアの話を笑顔で促します。恋する乙女は怖い。


「殿下も殿下よ……。あんなポッと出の令嬢なんかに。もしも現状が続くようなら……殿下を殺して私も死ぬわ。殿下は誰にも渡したくないもの」



 キャサリンは雲行きの怪しくなった言葉に慌てて言葉を挟みました。


「レティ、お待ちなさいな! ねぇレティ、私、思ったのだけれど。レティは自分の好いている方が他の人に盗られそうだから焦っているのでしょう? でもそれって、王太子殿下も同じ状況じゃないかしら」

「?」

「社交界の華と呼ばれたレティですら婚約者が他の人に懸想していたら嫉妬するのよ? でも、あの子爵令嬢は何人も男性を侍らせているのに王太子殿下は何もしていないのよ? つまり、王太子殿下は子爵令嬢を好いてなどいないと言うことではないかしら?」

「!」


 ハッとした顔のレティシアに、キャサリンがニコリと安心させる様に笑います。



「ありがとう、そうね。サリー、相談に乗ってくれてありがとう」

「いいえ、大切な友人の悩みが解消されて良かったわ」




 茶会がお開きになる時には、レティシアは憑き物が落ちたかのように穏やかに笑っていました。






 さてさて、悪役令嬢モノの物語において、悪役令嬢がヒロインを虐めなくなった場合、実は転生者だったヒロインが虐めの自作自演をするのはお約束。

 そして、パーティーで王太子が婚約破棄宣言をするのも、ヒロインの自作自演がバレるのも、お約束。


 社交界の華と呼ばれるに相応しい態度をとっていたレティシアの隣には、金髪の白百合の姫が付き添っていたそうな。
















 学園の卒業パーティーにて、王太子が突然婚約破棄を宣言しました。


 生徒が主役の、学園主催のパーティーとはいえ、卒業生達の成人式も兼ねた、陛下も祝辞を告げにやってくる大規模なパーティー。

 そこで、王太子含めハーレム要員達はあろうことか子爵令嬢と結ばれる為に王太子の婚約者であるレティシアに冤罪をかけ、罰しようとしたのです。


 当然、王太子達は隣に侍らせていた子爵令嬢と共に捕えられ、王太子の座も第二王子へとスライドしました。

 子爵令嬢は国を乗っ取ろうとした罪で家ごと取り潰し、見目が良かったのが災いし盗賊に殺されてしまいました。


 愛した相手が盗賊に犯され、無惨に殺されたと知り、王太子……いえ、元王太子は深く絶望してしまいました。

 魂の抜けた人形のようになってしまったフィンセントを、誰もが邪険に扱う中、唯一献身的に支えたのはレティシア。


 あのパーティーの日から一年経った今、二人はめでたく結ばれました。

 すっかりレティシアに傾倒、依存し、他の男と関われないようレティシアを鎖で部屋に繋いで屋敷に監禁するフィンセント。

 そして、フィンセントが他の女と視線を交わすのも忌避し、一日中同じ部屋にいようとするレティシア。


 レティシアは最近社交に参加していませんが、周囲の人々はフィンセントを愛妻家と評し、レティシアもすっかり正気に戻ったフィンセントと幸せになれるだろうと噂していました。



「この前ね、会いに行ったら、レティったらずっと幸せそうな顔で笑っていたのよ。思わずこちらまで笑顔になってしまったわ」

「そう……いや、兄上もきちんと仕事はしているし別に良いんだけどさ……。あの子爵令嬢の末路を兄上に教えたのは君だろう? サリー」

「そうよ? だって彼女はどうした、って叫んでて鬱陶しかったんだもの。詳しく教えてあげたらすぐ閉口したわよ。心が壊れた彼はもう、今はレティのことしか考えられないわね」


 王城の一角でそう話すのは、あと数ヶ月で即位する第二王子もとい、王太子と、その婚約者であるキャサリン。

 穏やかに微笑むキャサリンに、苦笑いぎみに王太子が言いました。


「兄上が子爵令嬢に入れ込むのをわざと放っておかせたのも、子爵令嬢の自作自演の虐めを、証拠を掴んでおきながらわざと過激な行動をさせるまで放置したのも、君だろう? それと、社交に出ないレティシアを不自然に思わないよう噂を流しているのも。私を王にして、君が王妃となる為かい?」

「いいえ? 私はただ親友の夢を叶えただけよ。レティの夢は王妃になることではなく、フィンセント様の妻となることだったもの。子爵令嬢に関しては、階段から身を投げて自殺……ということにならないかと少し期待していたけれど」


 そういうと、キャサリンはニッコリといつものように穏やかに微笑みました。





自分で書いといてなんだけど、若干メンヘラ気味のレティシアと、そんなレティシアに相応しい存在に王太子を作り上げたキャサリンが怖い……。メンヘラとヤンデレって相性いいよね。

逆ハーものの攻略対象者達って、なんで一人の女を共有出来るんだろ……? と思って、勢いで書いた。


感想とお星様どちらかだけでも募集中。

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