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ゴルブル兄弟 2



 ダンジョンの中に入ると、そこはぐねぐねといくつもの分かれ道が続き、迷路のようになっていた。

 ミゲルは以前にもダンジョンに入ったことがあるが、造りは概ね似たようなものだ。


 以前踏破をしたダンジョンとは、大きな違いがあった。

 ――未だに誰にも荒らされていないこのダンジョンは、アイテムの宝庫だったのだ。


「おおっ、すげぇ、今度は直剣だぜ! しかも刀身が鋼鉄でできてやがる……」


「がっはっは、大量だな、兄貴!」


 二人の背嚢の中には、ダンジョンに入ってから見つけた戦利品達がぎっしりと詰まっていた。


 ダンジョンにはいくつかのパターンがあるが、ここのダンジョンはどうやら宝箱が設置されているタイプのようで、彼らは現在出てくる魔物を切り伏せながら、この第一階層にある宝箱をしらみつぶしに開けている最中だった。


 出てくる魔物は最弱の魔物であるスライムのため、大して苦戦することもなく倒すことができる。

 にもかかわらず宝箱から出てくるアイテム達はどれも高値で捌けそうなものばかり。

 飲めばたちまち怪我を回復させるポーションや、売れば金貨一枚はくだらないであろう業物の武具……全部合わせれば果たしていくらの値がつくことか。


 ちなみに既に手に入れた戦利品は彼らだけでは運びきれないほどの量になっているため、現在肉壁要員として連れてきたシンディには、ダンジョンの入り口近くの岩陰で荷物番をさせていた。


「ちっ、また来やがった! ガルは右の二体を!」


「おうよっ!」


 新たに見つけた宝箱の中身に舌なめずりをしていると、左右から三体のスライムが襲いかかってくる。


 だが二人に慌てる様子はない。

 最弱の魔物スライムなど、Cランク冒険者である二人にとっては物の数ではないからだ。


 ミゲルは胸に巻いている革帯からナイフを抜くと、すかさず投擲を行う。

 彼の投げナイフはスライムの弱点である核を一撃で射貫いてみせた。


 戦闘を終えているミゲルの右には、スライム目がけて駆けていくガルの姿があった。


「しゃらくせえっ!」


 純粋な戦闘能力でいえば、ミゲルよりガルの方が圧倒的に高い。

 ガルはまず左の一撃でスライムの身体を大きくのけぞらせ、その間に右の本命で核を殴って砕いてみせる。

 同様のワンツーでもう一体も処理をすると、死んだスライムの肉体がどろりとダンジョンの中へ溶けていく。そして後には、砕かれた核だけが残った。


「スライムを倒すだけでこんなに大量のアイテムが取れるってなると……もしかするとめちゃくちゃ優良ダンジョンなのかもしれないぜ、兄貴」


「受けた時はビビってたが……最初に来れたのが俺達で良かったぜ。面倒なことも多いが、勇者様になれたからこその役得と思えば我慢もできる」


 二人の背嚢には、今回のダンジョンで手に入れた戦利品がどっさりと入れられている。

 宝箱の中から出てきた鋼鉄の剣を背嚢に入れると、ずっしりと重みが増した。

 その重さにニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている彼らは、完全に欲に目がくらんでいた。


「兄貴、どうせなら第一階層に居るボスを見に行かないか? ただの宝箱でこれなんだから、ボスを倒した時のアイテムはどれだけすげぇものか……」


「たしかに……それもそうだな。これだけスライムづくしってなりゃあ、出てくるのもせいぜいがビッグスライムだろうし」


 長い年月を生き抜いたスライムが進化することで生まれるビッグスライムは、Dランクモンスター。

 Cランクのモンスターも難なく狩ることができるCランク冒険者の二人にとっては、大した敵ではない。


 ――これから手に入るであろうお宝に鼻息を荒くする二人は、知るよしもなかった。


 このダンジョンを作り上げたダンジョンマスターが、ダンジョンのあらゆる構築法を網羅した廃ゲーマーであることを。


 そしてこの名もなきダンジョンはそんな彼が、五年もの年月をかけ手塩にかけて作り上げた、難攻不落のダンジョンであることに――。


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