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まだ見ぬ強者


「あ、そういえば今ブラッドはどうしてるんだ?」


「ティアマトに引き渡して、頭の中を弄ってもらってます~。そう遠くないうちに、Bランク冒険者が持ってるくらいの知識は共有できるなるかと」


「おお、それはかなり助かるな」


 人体実験するな、などと叱るつもりは毛頭ない。というか俺もガブリエルが何もしてなかったらティアマトに頼むつもりだったし。


 Bランク冒険者の頭の中には、この世界については一般常識レベルでしかものを知らない俺達からすれば値千金の情報がみっちりと詰まっているからな。


 一応混沌迷宮で死んだ冒険者達からは死霊術で情報をもらったりもしてるが、Dランクまでだと限られた情報しか得られないし。


 バリスに聞けばある程度は教えてもらえるだろうが、あまり借りは作りたくないので渡りに船というやつだ。


「しかし――まだまだ情報が足りないな……」


 俺が現在喫緊の課題だと思っているものは、この世界の強者についての情報だ。


 ダンモンのゲームシステムと微妙に異なるこの世界では、複数のジョブを掛け合わせることで本来のゲームより強力なシナジーが発揮される。


 恐らくだがこの世界の人間はこのシナジーを使い、本来のゲームではできなかったような壊れ火力の技を使って自分より強力な相手を倒すのだろう。


 どのような手を使い、どのような戦い方をするのか。

 この混沌迷宮に届きうるだけの強さを持っている者達――現状存在しているという三人のSランク冒険者と五人のAランク冒険者の情報は全員分欲しい。


 名前や活動地域だけではなく、可能であれば戦闘のスタイルや奥の手も全て把握しておきたい。

 初代寄りな世界観のこの世界だと可能性は低いが、この世界にギミック持ちがいる可能性もまだ捨てきれない。


 ワープギミックと権能禁止ギミックを出されると一気にキツくなるからな。

 もしいるなら、ダンジョン外にいるうちに確実に仕留めておきたい。


 あとは……人類以外の強者についての情報もだな。

 人類が把握していない亜人達の中にも実力者はいるはずだし、この世界のAランク上位の魔物の強さも実際に戦って調べておきたい。


 この世界にいる強者達全員を相手取っても勝てるという確証が得られない限り、枕を高くして眠れないからな。


 彼らに関する情報を集め、可能であれば戦闘能力を把握。

 可能なら特級戦力を派遣して全員倒しておきたいが……やり過ぎて世界のパワーバランスが崩れたりするのもマズい。


 どうするのかを考えるためにも、やはり情報が必要だ。

 となるとこのままダンジョンの内側にこもり続けるというのは悪手。


 この世界基準ではおいしすぎる混沌迷宮を解放した以上、その名が知れ渡るのも時間の問題だ。

 もしかすると俺達に残されている時間は思っていたよりも少ないのかもしれない。


 であればこちらから積極的に打って出るしかあるまい。

 多少のリスクは承知の上で、混沌迷宮からモンスターを出し、偵察に向かってもらおう。


「ガブリエル、ティアマトとベルナデットを呼んできてくれ」


「うー…………わかりましたっ!」


 自分の方が役に立ちますよ感をアピールし続けるガブリエルだったが、俺がじっと見つめているとどうやら折れたようだ。

 ちらちらとこちらを見つめながらも、そのまま部屋を出て行った。


 それと入れ違いになるように入ってきたのは、手に小さなお皿を持っているラビリスだった。

 妖精用の小さな皿の上にカップケーキをのせ、ずいぶんとご満悦な様子だ。


「マスター、次は何をするんですか?」


「ああ、ここから先は――世界を見据える。俺達を打倒できるやつらの情報を完全に集めるぞ」


 複数ジョブによるジャイアントキリングは、極めて限定的な状況下でのみ成立する技のはずだ。

 それならば相手の手の内を把握し、事前に条件を潰してしまえばいいだけのこと。


 俺達はこの世界のことをあまりにも知らなさすぎる。

 だが知りさえすれば、対等な条件下で戦うことができるはずだ。

 ジョブシステムは、人間にだけ有利に働く類のものではないからだ。


 それに……複数ジョブに就くことが可能となると、もしかしてあれも可能かもしれない。

 初期ロットでしか使うことのできなかった、あのバグ技――キメラジョブが。


 もしあのバグ技がこの世界で再現可能なら――配下の魔物達を一気に強化することができる。

 人里を見るのが、ますます楽しみになってきたぞ。


 俺は外に出せそうな人員を頭の中に思い浮かべながら、ラビリスと一緒に、ティアマト達がやってくるまで、ゆっくりとした時間を過ごすのだった――。

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