01-0001-03 世界の更新 アップデート
改定内容を本項下部(後書きスペース)に書かせていただくこととしました。
第1話
起稿20240811
起話20240811
改稿20240905
投稿20240921
01-0001-03 世界の更新 アップデート
領都 領主の館 執務室
『そろそろ宜しいですか?』
ガイドのそんな言葉から、更新情報の説明が始まった。
『まず個体名。セイダク ヘイドンの種族名が人族から魔族に変わりました。』
「は?」
「旦那様の?」
『はい。残念かは判別しかねますが、同族個体はこの周辺地域ではいないはずです。ちなみに人族との繁殖行為自体は可能ですが、繁殖は不可能です。』
「繁殖って」
「旦那様、恥ずかしがるのは結構ですが、結構深刻ですよ。対策を考えませんと旦那様で代が途絶えてしまいます。」
「セイジツ。相変わらず冷静過ぎない?」
『繁殖については、いつか必ず聞かれることになるとなっていましたので先に話しました。詳しくは追々話をさせていただくとして、種族維持にも問題が出ることがありますので。…話を先に進めます。魔族は幻獣や妖精と同じ系統に当たります。』
「同じ系統?」
『世界の更新前の世界の時は実体を持っていなかった種族という括りで同じ系統に属します。』
「それって神様や悪魔もかい?」
『神族はまだ実体化していませんが、盟約の約定により、世界の更新の後、こちらの世界の管理をする神の実体化と地上へ派遣するか等が検討されている状態です。物語りの関係もあるので判断に迷われているようですが。人々が神に頼りすぎると色々と弊害が出ますので、この世界の安定化を考えると期間を置くか、この世界の生物との接触自体を最小限に留めることが派遣の最低条件ではあります。現状では様子見が妥当となっているはずです。また、悪魔族は、条件付きでこちらの世界に実体化しているはずです。この世界の覇権を悪魔族が得てしまうことを懸念しての措置です。ちなみに魔族は悪魔系統に分類されます。』
「悪魔?」
「神話でも神様の眷族や神族に反抗したことにより悪魔になった者というのもいたと記憶しています。」
「大きな分類で神と悪魔は近しいところがあるということ?」
「そうではないかと...。魔族がこの推測の通りであれば」
『極一部分ではありますが、一面的には正しいといえてしまい。その他の面からは異なるとしか言えません。なかなか複雑らしく解明されていないようです。ただ、神族は、同族以外との婚姻関係やそれに準ずることを基本的には認めていません。また、魔族は、悪魔族だけでなく、怪物、魔物、死霊とかなり広い範囲を同族として認めています。』
「魔族は多種多様な種族を受け入れている種族だということ?」
『そうなりますね。個体名セイダク ヘイドンの繁殖を目的とする場合、生態的種族からすると亜人種の中の一部との交渉が妥当となります。』
「なるほど、今後の参考にさせていただきましょう。」
「おいおい」
『種族については納得していただけたようで何よりです。これで称号のお話が出来そうです。』
「称号?」
『はい。貴方の特殊な状態は、人族から種族が変動したことだけではありません。そういう方々は比較的少数ですが部族単位や個人単位でいらっしゃいます。』
「そうなんだ」
「称号とは?」
『普通ならば、敬称、二つ名、別名、略呼称というものと同じように、他者から認められたり、当てはめられたりして名付けられるものですが、私がこれからお話しするのは世界称号。ワールド ロール ネームであり、この世界が授ける称号です。』
「なんか大袈裟だな」
「して、どのような称号ですかな」
『個体名セイダク ヘイドンの世界称号は、[魔王]と[世界の敵]。[魔王]は魔族の頂点を指し、[世界の敵]は、これから現れるプレーヤー族の最終討伐目標となる敵を表します。』
「なんだそれ。魔族に種族が変わったばかりで王なんてあり得るのかい?なんか仰々しいし現実味が無いな」
「プレーヤー族とは何ですか?最終討伐目標とはいったい」
『プレーヤー族というのは、異世界の戦闘集団と捉えて基本的には問題はありません。人族や亜人種の姿形ですが、半実体の生命体です。』
「何故旦那様を討伐目標としているのでしょう?」
『プレーヤー族は、この世界でそれを目的に訪れるからです。』
「意味や理由は無いと」
『強いて言えば、魔王を倒すことが一つの目的であり、物語りの進行上でいう最終目的となっているからです。』
「なんですか!その理不尽さは。何か敵対する何かがあるわけでもなく討伐目標にするなんて」
『お怒りはごもっともですが、当事者であるはずの貴方は動揺している割に落ち着いていますね』
「実感がないけど理不尽だとは思っているよ。正直戸惑いの方が勝っているという感覚かな。」
『理由付けが必要でしょうか?』
「気にならないと言えば嘘になるかな。もっと気になるのは、魔族の王っていうのも気になるけど、さっきから何度か出てくる物語りってなんなんだい?」
『更に険悪になりそうですが、プレーヤー族がこの世界に来るための理由付け、遊戯としての筋書きです。』
「言うに事欠いて、遊戯とは何ですか!」
「セイジツ。頼むから落ち着いてくれ。ほら。ガイド。続けてくれるかい?」
『分かりました。プレーヤー族は、異世界から自分自身の分身をこの世界に送り込み、分身をこの世界で活動させることにより、行動の指示をし、分身に経験を積ませ、その流れを観察をし、一連する物語りを愉しむことで、この世界を運営する創造者達の利益になります。流石にこの世界の盟約となる約定があり、これ以上の説明は難しいのですが、この世界を運営するのにも、創造者達には利益が必要であり、また利益を得ることで、更に快適な世界への改善が可能となります。』
「なるほど。愉しむ連中が出資か、それに準ずることをするとして利益が生まれて、愉しむ連中が指示、観察する半実体の生命体だから、実行者という意味合いのプレーヤー族となるのね。なんとなく言いたいことは分かった。」
『理解していただけてなによりです』
「はぁ…。物語りというのも納得したくないけど、そういう制度。システムがあるということなんだな。」
『はい。比較的強制力の強いシステムであると思っていただけると助かります。』
「強制力ね。物語りの内容も気になるけど、その様子じゃ童話だったか、神話だったかと同じで魔王は悪役とされてるんだろうし。」
「旦那様」
「セイジツ。頭にくるのは解るよ。ただ、ガイドに抗議しても、たぶん何も変わらない。…だろ?ガイド」
『変わりません。私を通して抗議したとしても不可能です。』
「ならいいさ。理解は出来ないけど、文句を言っても変わらないなら、少しでも目の前を片付けるしかないさ」
『ありがとうございます。理解していただくというよりも、この辺りは設定として認識していただかないと話が進みませんので』
「正直八つ当たりしてぶっ壊したいところだけど、実感がわかないから行動しないだけさ。ガイドの責任というわけでもないんだろ?なら安心かどうかはさておき、話を先に進めてくれるかな」
『助かります。では、称号付与に伴う能力付与に関する内容についてですが、これは実験を用いた方が理解を深めやすいと思われますので、後回しにさせていただくとして。今回の世界の更新内容についてお話しましょう。大まかに今回の世界の更新においての変化内容は大きく分けて2つ。
この世界で生活する種族が増えたことと、自然の摂理や原則を歪める技術である魔法が使用可能になったことの2つです。
1つ目の種族が増えたことについては、貴方は当事者でもありますが、今まで実体を持っていなかった幻獣、妖怪、悪魔、精霊、妖精などなどが実体を持ったことにより、この世界で、実体を持った状態で生活する事になりました。
また、貴方のように人間から魔族へ変わったように、いままでこの世界にいた生物が世界の更新に伴い亜人種へと変わる者たちがいます。
人間由来の亜人種は、人間の姿、形が原型であり、獣、植物由来の亜人種は、由来となる獣、植物が原型で、そこに人間の要素が足される形となっています。』
「生物の種類がとても増えたってことかい?」
『はい。その認識で間違いありません。ただ、物理法則や自然の摂理に則れば、実体を持っても生きることができない生物も多いのですが、今回の世界の更新によるもう一つの要素。魔法の使用が可能な世界になったことで、物理法則や自然の摂理の枠外ですが、生存することが可能になったそうです。』
「今回の2つの更新は、実体が持てなかった種族としては、セットでの更新が不可欠だったわけだ」
『そうなります。そして、その恩恵は、この世界に元々いた種族にも適用され、魔法が扱えることとなります。』
「誰でも?」
『誰でもです。体内に今回の世界の更新によって、追加された魔力というものが備わっていますので、それを用いれば、容量の大小はあれど、発動自体は可能です。』
「技術と言っていたけど?」
『身体能力のことを身体操作技術としますと、魔法能力のことを魔法操作技術とすることができると思われます。訓練により技術の向上は可能であり、魔法の根本としての能力、物理法則や自然の摂理を歪めることが可能です。ただ、これに伴い物理法則や自然の摂理の観察が一部困難になる可能性は十分に考えられます。』
「物理の法則の観察が困難になるっていうのは?」
『魔法が使えることで実証実験が歪めやすくなりますので、魔法との区分け方法などの模索が必要になると推測できます。物語りの上では関係ありませんが、この世界の住民としては科学の発展の弊害になる可能性も否定できないと思われます。』
「科学というのの発展は必要かい?」
『必要になるでしょう。魔法は物理法則や自然の摂理などを歪めますが、元となる法則や原則を完全に無視するわけではありません。法則や原則を歪める代償として魔力を消費します。別の言い方をすると、法則や原則を歪めるためには魔力がなければ不可能です。』
「そうなると、法則や原則に則っていれば魔力は不要だし、法則や原則の歪みが少なくなるほど、魔力の消費は必然的に下がるということ?」
『そうなります。その意味で法則や原則の研究は必須であり、この世界のように科学技術がまだ発展途上である場合、魔法に頼りすぎて、法則や原則の研究が疎かになる可能性が高まりますので、差し出がましいですが説明しています。』
「まぁ、科学って言うのがまだイマイチ解らないけど、この世界にいる限り、ガイドも他人事ではなくなるわけだからね」
「推察ではありますが、ガイド殿は技術力の高い場所から、この世界に送り込まれたということですかな」
普段の落ち着いた声でガイドに問いかけるセイジツ。ようやくいつもの状態になったようだ。
「セイジツも少しは落ち着いたかい?」
「年甲斐もなく興奮してしまいましたが、大丈夫です。して、ガイド殿。如何ですかな?」
『推察通りですが、我々ガイドは、様々な科学技術並びに物理等法則や原則などの開示は、物語りの創造者達の意向に反する形となりますので、その部分の根幹の説明は、補助的もしくはさわりの部分程度しか力にはなれません。この世界の生命体による探求と研究に委ねる形になります。』
「なるほどね。セイジツ。」
「なんでしょう旦那様。」
「セイジツが聞いた更新情報で、魔法のことは、どのぐらい説明されたのかな?」
「世界の更新に伴い新しい技術として、魔法が使えるようになったとは聞きましたが、使用方法などは説明を受けていません。」
『そこは仕方ありません。今までの人族が独占していたこの世界のバランス。国力とか、地域の属性だけでなく、種族間競争など新たな火種も含まれることとなった今回の世界の更新以降、どのような影響が出るか不明確過ぎるため、私のようなガイドを所持した者から技術が伝わるように計画されていますから』
「ガイドはどんな人が持っているんだい?」
『国の代表や種族の代表と物語りの重要人物に配布されています。この世界の立場によっては、ガイドに情報の開示制限をして、ガイドに与えられている情報量自体を減らしていたりしますが、多くてもこの世界で1500個を超えることはありません。』
「1500個。1500人っていうのは多いのかな?」
『少ないでしょう。人族だけで考えれば500個を超えるかどうかぐらいですから。』
「他の種族にもガイドを持つ人はいるのか」
『そうなります。』
「魔法について後で相談させてくれるかな」
『問題ありません。』
「更新情報で他には?」
『後は先程お話しした称号による付加能力と魔法についての話でしょうか』
「実際に体験をしたほうが良いんだったよね」
『そうなります。注意事項と対処法の説明をさせていただいてから、体験していただきたく思います。対処法を知らないと、抜け出せなくなりますから』
「なら行こうか」
「どちらで試されますか?」
「訓練場を使おうか。守備隊に連絡を入れてもらえるかな?」
「承知しました。」
僕達は執務室を後にし、訓練場へ向かった。
2024/09/21
・9/6に投稿させていただいたものを小分けにさせていただくこととしました。