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01-0001-02 世界の更新 情報収集

改定内容を本項下部(後書きスペース)に書かせていただくこととしました。

第1話

起稿20240811

起話20240811

改稿20241020

投稿20240921

01-0001-02 世界の更新 情報収集


領都 領主の館 執務室


カウントダウンを聞きながら、馬上で馬を駆っていたはずだった。


『更新が完了しました。』

頭に響く声なき声で、目覚めたときのように周りを認識出来るようになると、目の前は見慣れた自室の部屋だった。

前傾姿勢で椅子に座っている僕。小脇に抱えていたはずの槍はない。フルプレートアーマーを着ていたはずだが、普段の服装になっている。馬を駆っていたはずの僕は、その姿勢のまま、領都の自室にいた。

まるで子供が騎兵の真似でもしているような状態で…。


少し恥ずかしくなりつつ、思い直して、椅子に腰掛けた。

なぜ僕が自分の執務室にいるのかはよく解らない。

さっきまで馬上で、槍を小脇に抱え、フルプレートアーマーを着込んでいたはず、遠目に敵陣があり、24騎の騎兵で敵陣を突き進んでいたはずだった。


『混乱しているようですが、意識はしっかりしてますか?』

頭に響く音のない声は、明らかに僕に話しかけているように思う。

さっきの不特定多数に語りかけるような、そんな感覚は薄い。


「僕に話しているのか?」

『はい。更新完了に伴い、貴方には、少し特殊な事情も話す必要があり、強制措置を行ったりとしています。一時的な混乱は想定されていましたので、確認をさせていただいております。』


「強制措置?」

『この世界の全ての生きとし生けるものに、世界の更新に伴う強制措置として、意識を刈り取り、身体の更新処置を施しています。また、その更新に伴う変化状況を各個人に伝わる方法で情報を開示することになっています。』


「意識を刈り取るって。気絶していたのか?」

『はい。』

「それで怪我をすることもあるんじゃないかい?」

『あります。ただ、強制措置による弊害の一切はシステムで把握しています。強制措置時に戦闘中、または移動中の場合は慣性で倒れることを考慮して魔法による強制転移を自動発動。転移先は近くの拠点となる場所や安全と思われる場所。このことにより怪我や破損、落命などの一切を無かったことにするように自動的に魔法による治癒を行うようにしています。』


「魔法?」

『はい。後ほど説明させていただく、更新情報に内容が含まれますが、この世界は、魔法を発動できるように世界の仕組みが更新されました。』


「おとぎ話に出てくるような奇跡かい?」

『この世界の神話、民話、寓話、伝承などを把握していますが、それに出てくるような奇跡や魔法とされているものの大部分は実行可能な内容だと思われますが、発動条件が満たされるかどうかが問題となります。自然の摂理と法則に反する場合。発動条件自体が満たされず、発動しない確率が高くなりますので。』


「なんか難しいことなんだろうな。それは後で良いや、戦場はどうなったか知ってるかい?」

『戦場といいますと?』

「僕がさっきまでいた場所だ。」

『あぁ。強制転移直前の戦闘状態自体を無かったことにさせていただきました。貴方を落ち着いた場所に置く必要があり、相手に戦意がなくなったようには見えずにいましたので、覚醒までの時間が掛かるように処置されていると聞いています。』


「なら他のみんなも無事ということ?」

『更新直前の戦闘行為。それ自体が発生していなかったようにしたと聞いていますので、それ以上は判りません。』

「分かった。少し更新とかいうものの話を後にしてもいいかな。僕は指示を出してくる。」


『更新情報を優先していただきたいのですが』

「今の話だと、僕の味方だけが、戦闘を無かったことにしたわけではないんだろう?」

『もちろん。この世界で行われていた戦闘等活動状態に合わせた処置となっています。』

「なら尚更かな。敵側も回復しているならば、指示は早い方が現状を維持しやすくなるんじゃないかな。だから先に指示を出して、防衛準備さえ取れれば、被害は最小限に抑え易くして、君の話をジックリと聞かせてもらえればと思うんだけど、どうかな?」


『…はぁ。良いでしょう。貴方の場合、説明しなければならない量が、他の方よりも多く、加えてある程度融通の効く状態ですので、まとまった時間が必要ですから、安定した状況作りに尽力していただけるのでしたら、譲歩します。』


「で、暇になったら、どうやって連絡を取るんだい?」

『いつでも呼びかけていただければ。』

「名前は?」

『水先案内人という意味合いで、ガイドというシステム名をいただいておりますので、[ガイド]とでも呼んでいただければ問題ありません。』

「分かった。行ってくる」


『ちなみに私は左手のブレスレットですので、置いていかれる訳ではありません。』

「いつの間に…。まぁいいや。じゃ、行こう」


執務室を出て、1階のエントランスに向かう。

特別誰かがいる確証はないのだが、この館で一番人通りが多いのは、間違いなくここだろう。

ここ以上となると使用人の近道があるが、何も無いときは掃除をする者以外は通らないはず。


想像通り、そこにはこの屋敷の執事のセイジツが、使用人に指示を出しているところだった。

「セイジツ」

「旦那様!何故2階に?いつお戻りになったのですか?」

セイジツは、僕の姿を見て慌ててこちらに近寄ってくる。


「さっきの頭に響く声がした後に、執務室に強制転移とかいうのをされたらしくてさ、北東砦からこっちに戻されたらしいんだ。それは良いんだけど、現状の把握もしたいし、遣いを北東砦に出したいと思うんだけど」


「北東砦にですか?」

「あぁ。戦闘の途中で戻されたからさ、頭に響く声は戦闘状態自体を無かったことにしたと言っていたけれど確証は無いし、現状もわからない。もし互いに兵が無事だった場合は、再戦を挑まれる可能性が高いと見ても良いと思うんだ。まずは斥候で周囲の確認。出来ることなら、こちらからも追加の援軍として工作兵を捻出したい。」


「もしや旦那様はあの声がつい先程の話と認識されていますか?」

「どういうこと?」

「すでにあれから2日経過しております。それと、昨夜、北東砦から遣いが参りまして、攻め込んできていた敵影はなく、周囲に斥候を出して確認しても、敵影を確認できなかったようで現在も警戒態勢を維持している模様です。」


「昨夜?頭に響くあの声の話が2日前?」

「一昨日の昼間のことです。旦那様が行方不明だったこともあり、捜索と索敵を兼ねて周囲の警戒を行ったと聞き及んでおります。」

「そうか。守備隊が維持してくれていて、こっちに連絡をくれたんだな」

「そうですな。もし必要でしたらば、昨夜の伝令は、まだ出発していないのでお会いになりますか?」

「頼む。無事を伝えて貰いたいし、北東砦の様子も聞きたい」

「畏まりました。」

言うなり歩き出したセイジツ。


『更新に時間が掛かりましたから。仕方ないですね』

「そうなんだな」

「何か」

数歩歩いたセイジツが振り返る。

「いや、独り言だから大丈夫。」

「左様ですか。では。」

「ん。宜しく」


『私の声は、念話という技術を用いていまして、今は貴方を対象として発信しております。貴方以外には聞こえてないはずですので、受け答えは慎重に』

「……。」

『ん。怒ってます?』

「慎重にね。後でちゃんと話を聞くよ」

『宜しくお願いします。』

執事のセイジツが伝令を連れてくるだろうし、執務室に戻ることにした。


執務室に戻ってから程なくして、執事のセイジツが伝令を連れて執務室に現れた。

「よくぞ御無事で。安心いたしましたが、怪我などは?」

膝をついて畏まった兵士は、安堵の声を漏らしながら、心配してくれた。


「ありがとう。どこも怪我はしていない。どういう訳か執務室にあの時に飛ばされていてね。みんなには迷惑をかけた。」

「とんでもない。」

恐縮している様子の伝令は見覚えがあった。

東北砦の壁の上にいたとき、敵陣に向かうため、厩舎に向かおうとしたときに、代わりに厩舎へ向かってくれた兵士だったと思う。


「敵影が無くなったと聞いたけれど、詳しい話をお願いできるかな?」

「畏まりました。」


伝令の彼が話し始める。

まず、戦場となった砦は、壊された部分も気付いたら、いつの間にか治っていたそうだ。

負傷していた者も傷一つ無い状態となり、警備に当たっているそうだが、戦場に死体だけが残っていたそうだ。

幸い守備隊に死人は出なかったが、ガイドの話と合わせると、更新時にすでに死んでいた者は、蘇生されなかったのだろう。


彼が伝令として出発する時には、戦後処理として道に散らばった死体を、領外側の道の脇付近に埋葬する準備をしていたそうだ。

それから、周囲に敵影は無く、一緒に敵陣営に向かった僕以外の23騎の騎兵達も馬も無事。

警戒態勢を崩さず、防衛に励み、周囲警戒と合わせて行方不明の僕を捜索してくれていたそうだ。


「伝令ありがとう。見ての通り、僕は無事だ。このことも帰ったら伝えて欲しい。」

「必ず伝えます。」

「あと、伝言を頼みたい。」

「は!!」


「こちらの兵士の傷が治ったように、敵側も傷が無くなった可能性が高い。備蓄はこの前送った分があるから、しばらくは大丈夫だとしても、すぐに再戦しに来る可能性は否定できない。十分な警戒をして欲しい。追って指示を出すつもりだけど、援軍として送った人員も含めて防備を固めて欲しい。そう伝えてくれるかな」

「は!必ず」

「うん。お願いね」

「では私はこれで」

「分かった。頼むね」

「承知しました。では」


伝令が執務室から出るのを見送ると、彼は使用人に案内されて行った。

「戦時の対応にも慣れたようですな」

「慣れたくないね、こんなこと」

「いやいや、心強いことです」

「そう言ってもらえると、まだ頑張れそうかな。後は、再戦してこなかった場合を考えて、こちらが一時的に手薄になるけど、1週間程度で交代要員を派遣するか、一旦引くか悩みどころかな」


「まずは、他の都市の代官とも相談してみてはいかがでしょうか?」

「そうだね。続報も出しておきたいし、伝令を入れてもらえるかな」


「畏まりました。旦那様。そちらのブレスレットは?」

「あぁ。ガイドという頭に響く声と同じような声を出して語りかけてくる代物らしいよ。セイジツは持っていないのかい?」

「私もまだ、合う方々全てを把握しているわけではありませんが、身につけている方はいないと思われます。」


「なんか特殊な状態とか状況とか言っていたからなぁ」

「と言いますと?」

「あぁ、指示を優先したから、まだ聞いていないんだ」

「一方的に話をされたのでは?聞き返すことも不可能だったと思うのですが」

自分と状況が異なるからか、戸惑う様子を見せるセイジツ。一方的に話されたなら、聞き逃している人も多そうだ。


「いや会話が成り立っていたし、話し合いで指示を優先させてもらったんだ。」

「あの声と会話が成り立ったんですか?私への伝達相手は、こちらの言葉には反応しなかったので、そういうものなのか、失礼なのか判断に迷ったのですが」

『個別に説明をするにしても、全ての質問に答えることは能力的に不可能ですので、要点を踏まえた説明を自動的に淡々と垂れ流しているはずだと認識しています。』


「能力的に?」

『一人一人に丁寧な説明をしたい所ではありますが、一時的に記憶できることは限られています。また、私のようなガイドを派遣して都度対応をするには、サーバーへの負荷が大きいので、どうしてもこういう不備は発生します。』

「なるほど、頭に響く声ですね」

セイジツが驚きつつも納得の声を挙げる。


「今度はセイジツにも聞こえるように話してくれたんだな」

『貴方と彼の会話で関係性が強く、信頼されているようでしたので。』

「助かるよ。このまま更新の説明を聞こうと思うけど、どうかな?」

『貴方の個人的な情報がありますが良いのですか?』

「問題ない。どうせ受けた説明を説明することになるだろうし」

『分かりました。』


「飲み物をお持ちしますか?」

「あぁそうだね」

「では少々お待ちを」

執事のセイジツがいったん退室する。

少ししてから、ティーセットと共にセイジツが帰ってきた。



2024/10/20

・改行の追加と一部誤字の訂正と追記をしました。


2024/09/21

・9/6の1ページ目を小分けにさせていただくこととしました。

・一部の表記ミスを修正しました。

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