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聖女ドラメルと最後の竜  作者: 創作草
第六章 その墓標に黄昏を
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幕間、オブザーバー「ズ」

全てを失った少年は、その翌朝島を訪れた空船に潜り込んで故郷の島を離れた。

フェキシフト島の滅亡は、その空船に乗っていた人々によって世界に知らされた。


その時少年が、何を思って密航したのかは分からない。

けれど、彼が流れ着いた先がネイケシア島で、そこで後に聖女とされる少女と出会ったのは事実だ。


「いつ聞いても、胸糞悪いわね…」


自身の過去について話す少年を()越しに見ながら、私は小さく呟いた。

薄暗い空間の中、鏡が発する光だけが私を照らしている。

その後ろの方、鏡の光が届かない暗がりから声が聞こえた。


「なに?なんか見てたの?」


「あら、戻って来てたの。お帰りなさい」


振り返らずに、聞こえて来た声に応える。

声の主はいつも、自身が帰って来たことを真っ先に報告するのだが。そんな彼が思わず声を上げるほど、私の口調が重かったらしい。


「元気ないけど、どうかしたの?」


「疲れてるんだよ。…誰かさんが奈落まで行かせるもんだから」


声色がこちらを責めているのが、見なくともわかる。彼が愚痴愚痴言うのはいつもの事なので、それは無視して。


「奈落まで行ったって事は…残り物を、全部集めて来てくれたのね」


「うん。今さっき瓶から取り出してもらって、保管して来たよ」


「ありがとう」


彼の報告に、素直に感謝を述べる。別に良いよと謙遜されたが、紛れもない気持ちだ。

この島を動けない自分にとって、彼の存在は必須のものなのだから。


「…それで?なにを見てたの?」


()()を揃えて座り込んだ彼が、再び同じことを聞いた。


「…フェキシフトの悲劇、よ」


「…ああ。アイツがやらかした、あの…」


彼は納得したように言葉を濁した後、私が唇を噛んでいるのに気付いてため息をついた。


「あんなの、世界のどこでもあり得ることじゃないか。一々御心(みこころ)を痛めてどうすんのさ」


「あんなのって何よ。島一つ滅んでるのよ?」


ムッとして答える。

事実、あの少年は後に、災竜への恨みを募らせた。友人の励ましと、生き残ってやり返すという目的もあるのだろう。


「それはそうだけど…でもフェキシフトに関しちゃ、運がなかったとしか言えないよ。まさか、()()()()に目をつけられるなんて」


「…それなんだけど、もしかしたら少し違うかも知れないのよ」


暗がりに座った大きな気配が、身じろぎする。


「…どういうこと?」


「はっきり()()()訳じゃないけど…」


そう言って、私は振り返る。

暗がりで鏡を反射し光る、大きな青い双眸に向けて、秘めていた考えを口にした。


「フェキシフトが滅亡したのは、偶然じゃないのかも…」

今回で毎日更新は終わりです。

次回から週二更新に戻ります。

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