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聖女ドラメルと最後の竜  作者: 創作草
第五章 その爪牙に祝福を
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14、覚醒と共闘 2

「ちょ、ちょっと…待って!」


思わずそう叫んで、前を行く彼の体を自分の耳で叩いた。

途端、彼…ロキがこちらを振り向く。先程までの敵意はないが、苛ついているのはわかる。


「なんだよ」


「彼女に待てって、言われたじゃないか!勝手に出て行ったら危険だろう」


ロキはメルリが駆け出してすぐ、洞窟を抜け出した。

そこからすごい速さで動くものだから、追いつくのに苦労した。


「…俺は強いんだ。強いやつは弱いやつを守る義務がある。村の同胞を守らなきゃ」


「でも…!」


ロキに食い下がるが、劣勢なのは分かる。

そもそも、彼にメルリの言葉を正直に聞く理由はない。

それに、強者が弱者を守るという彼の考えを、自分は否定できない。


「『加護』のないお前は、隠れてろ」


吐き捨てるようにロキが言う。

自分の身を案じてくれているのは分かるが、その言い方はないと思う。

それに、『加護』を持てていないことを突かれるのは、少し痛い。


「…『加護』が、無くたって…!」


「だめだ。お前が行ったって無駄死にするだけだ」


売り言葉に買い言葉で強く出ようとした時。

木々の吹き飛ばして、三つの巨体が空へ飛び出した。


「…あれは!」


「…アドルオ!」


エルギオとアドルオさんだ。現れた三体目の災竜と戦っているのだ。

と、ロキが突然回れ右をして、来た道を戻り出した。


「ちょっ、はっ!?急に戻るの!?」


叫んで理由を聞いても、彼は何も言ってくれない。仕方なく、無言で彼の後を追う。

さっきまでいた洞窟まで戻ると、ロキはその奥に進んだ。

昏い洞窟だ。僕は思わず入り口で立ち止まった。


彼の性格だ。ここに籠るなんてことはしないだろう。

予想通り、彼は自分と同じぐらいの石を、耳に巻きつけて持ってきた。

彼の馬鹿力に感服するとともに、自分には無い『加護』の凄さを痛感する。


「…それは?」


「ここは採掘場だ。分かるだろ」


そう言いながら、ロキは石を地面に置いて、その上に乗った。

石がふわりと浮き上がる。

採掘場。そこで採掘人により、掘り出されて来たもの。空船の動力源、『浮遊石』だ。

慌てて、浮き上がった石の下部に耳を巻き付けて掴まった。


「使えるの!?」


『浮遊石』は『浮遊の祝福』が宿った石のことだ。石自体に『祝福』があるのだから、それを使うことは凡人にもできる。

かなりの時間をかければ、の話だが。


「念の為に練習してきてた。まさかこんな事に役立つなんてな」


彼がこの島に来たのは、ほんの十年ほど前のはずだ。その間に、『浮遊石』をどうにか自分の思った通りに動かせるようになるとは。

彼は、それほど彼の目的に本気なのだ。


浮かんだ石は、僕とロキを乗せて(僕は掴まってるだけだけれど)飛び立った。

向かう先は、三体の災竜が戦っている島の外れ。


「行ってどうする気!」


「アドルオを助ける。囮ぐらいでも、何かはできるだろ!」


反対しようとしたが、ロキの性格的にどうせ聞かない。

危なくなったら何とかしてでも止めようと、僕は仕方なく決心するしか無かった。


———


「これで最後です、メーレンさん。発進してください!」


恐怖に震えるメムリット族を空船に乗せて、私は船長室に向かって言った。

途端に、足元がぐぐっと動く感覚。

空船が、ケイオール島の港から離れ出した。


ケイオール島は、コンボボロ島やハーマレー島よりも小さい。

故に、災竜が三体も戦っていたら、メムリット族に甚大な被害が出るだろう。実際、アルガイアがちょっと村で暴れただけで、二十以上の被害が出た。


そんな訳で、私たちが乗ってきた空船にメムリットたちを全員避難させたのだ。

そんなに大きな船ではないので、八十近くいた村のメムリット族たちを全員乗せると、かなり窮屈になった。

しかし、文句も泣き言も言ってられない。


「島から離れたよ。カイとダックさんは…?」


空船の元々空き部屋だった一室に入り、そう尋ねる。

部屋の中には、横になったダックさんとカイ、そして彼らに付き添うモルガイさんがいた。


カイは傷が治っても、まだ意識を戻さなかった。息はしているので、少しすれば目を覚ますだろう。

問題はダックさんだった。カイより息が荒く、脂汗も出ている。


「ダックさんは…大丈夫なんですか?」


「ふむ。『奇跡』の使用者を、わしは見たことがない。じゃから無責任なことは言えんが…」


モルガイさんが、耳で掴んだ布でダックさんの汗を器用に拭きながら言う。


「恐らく、彼がこの子供に流したのは、生命力か何かであろう。でなければ、致命傷を綺麗さっぱり治療できん」


「生命力…自分の命をカイにあげたってことですか。そんなことができるんですか?」


「『奇跡』じゃからのう。なんでもありだと思っといた方が良い」


ダックさんを見下ろす。先程までと比べて、僅かに呼吸が深くなっている。

回復してきている、のだろうか。


「他人に自分の命を譲る…名付けるならまあ、『譲命の奇跡』かのう」


「譲命の奇跡…」


モルガイさんの言葉を反芻する。

ダックさんはあの力を聖痕だと言っていた。

確かに彼は、コンボボロ島で聖痕を得ていた。


聖痕を得ることで『奇跡』が生まれたのなら、三つの聖痕を集めよという空読み様の予言は。

そして、空読み様に降りた()()()の真意は。


首を振った。

今はそんなことを考えている時ではない。


「…ダックさん、元気になりますよね?」


生命力を他人に流してしまったから、彼は今苦しんでいるのだ。もしこのまま戻らなかったらと、不安が胸を塞ぐ。

モルガイさんは汗を拭きながら、安心させるように私に微笑みかけた。


「『奇跡』はヒトの為の力じゃ。それがヒトを蝕むことはせんよ。まあ…能力的に、ちと寿命は縮むかもしれんがの」


それでも、生命力は上限のないものだから大丈夫だと、モルガイさんは言った。


「しっかり休めば体調もすぐに戻るはずじゃ。今はとにかく、看病に専念することじゃ」


「…はい」


遠くに聞こえる戦いの音を聞きながら、私は消えそうになる声で返事した。

そして、重い足取りを引き摺りながら部屋を出る。風に当たれば、この気持ちも少しは和らぐだろうか。


「それか、いつもみたいに…」


ペミーをギュッと抱きしめて仕舞えば、その温かさと柔らかさで気持ちが和らぐはずで。

そこで、今ここにいない仲間の存在に、気付いた。


「……ペミー?」


記憶を辿り、彼がどこに居るのか察して、私の心臓が跳ねた。

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