幕間、船長の呟き
「…っと。この辺りの雨雲は、本当に安定しませんね」
空船操縦席にて。
目の前の雨雲を大きく避けて、メーレン・フロウシは溜息をついた。
雨期の空船の操縦は本当に難しい。
そもそも、空船の操縦は空船自体が大きく動くため、本来かなりの揺れを伴うものだ。
乗っている側だと分からないが、出発前に決めた航路から、今は随分ズレてしまっている。操縦しながら、より危険のない航路へ変え続けている影響だ。
「ここまで大回りになったのは、久しぶりですね」
つまり、雨期の空船の操縦には、臨機応変さが求められる。ただでさえ操縦の難しい空船を、雨期に飛ばすことのおかしさが分かるだろう。
(まあ…聖女様の事情は、何となく分かりますが…)
コンボボロ島に寄港する前、聞いてしまった事。災竜になれる人間。まさか彼以外にそんなヒトが居るとは思わなかった。
「…はっ」
小さく笑いが出た。
生き方を変え、もう無縁になった筈なのに、自分の人生にはどうしても災竜が付き纏うらしい。
(それよりも…ケイオール島ですか…)
聖女様たちが次の目的地とした場所。空船の力の源となる『浮遊石』の原産地。
自分にとっては、それ以上に特別な場所。
(懐かしいですね…)
再び目の前に現れた雨雲を避けながら、空船長は小さく微笑んだ。




