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聖女ドラメルと最後の竜  作者: 創作草
第二章 鎮魂祭
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6、事件発生

「はあぁー」


人集りから解放されて、疲れから息を吐く。

多くの人から、私に期待の眼差しを向けられた。ネイケシア島を出た時とは、肩にかかる責任が大違いだ。

本当に重くて、潰れそうになる。


(でも…)


大丈夫、私は潰れない。

だってカイがいるし、頼もしいダックさんもいる。可愛いペミーだっているし、それにエルギオだって。


「……」


ふと、思った。

彼は竜の力を使える。それで、ムロリメロ島の時も、襲ってきた災竜を倒して、私たちを守ってくれた。


彼がいれば、災竜は倒せる。

私がいなくても。

私なんかがいなくても——。


「…っと、何考えてるんだ、私」


思考を切り替える。

エルギオは私と来たがっているし、私も彼と一緒にいきたい。

それで良いじゃないか。

直接災竜と戦えなくても、エルギオの援護ぐらいは私でも出来るだろうし。


と、そんなふうに考えながら街道を歩いていたから、しっかり前を見ていなかった。


「とわっ!」


「おっ!」


気づかず、歩行人の男の人とぶつかってしまった。


「あ、ごっごめんなさい!考え事してて…」


「ああ、いいっていいって。俺も、考え事してたから…」


「え、あなたもなんですか?あはは…」


考え事してた同士がぶつかったということか。どちらも前方不注意じゃないか。


「じゃあ俺はこれで。お祭り、楽しもうな」


「あ、はい!あなたも、楽しんでくださいね!」


そう言って、男の人は去って行った。

私は少し、その場に立ちつくしていた。


(目、綺麗だったな…)


ほっそりとした体に、この辺りでは珍しい真っ黒な短い髪。そして、吸い込まれそうな夜色の青い瞳。


(いろんな人が来るんだな…このお祭り)


それこそ、世界中から。

特に今年は、聖女目当ての人が多いらしいと、ダックさんが言っていた気がする。


「あ、いた!おーいメルリー!」


声が聞こえて振り返ると、カイが私を呼んでいた。

両手いっぱいに食べ物を持っている。

こっちはすっごく疲れているのに、彼はしっかり楽しみやがったらしい。


ダックさんとペミー、エルギオもいる。


「空読み様んとこ、そろそろいこーぜー!」


私たちの目的だった空読み様は、祭りの本番の鎮魂の舞が行われている間は、空読み様本人の部屋で祈祷しているとされている。

だから、鎮魂の舞は終わるまで空読み様はフリーではなかった。話を聞きにいけなかったわけだ。


「そうだね。行こう!」


鎮魂の舞が終わった今、私たちはようやく空読み様に会える。

ここからが、私達の旅の本番だ。

ああ、本当に始まるのかとぼんやり思いながら、みんなのところへと向かう。


(あ、そういえば…さっきの人、名前聞くの忘れちゃったな…)


そんなことを思いながら。


———


空読み塔。

ハーマレー島をハーマ集会が治める東と、ハーレ機関が治める西に分けるマレー街道、その中心に位置する高い塔。

空読み様は、そのてっぺんに住んでいるという。


塔に入った私たちは、白い服に身を包んだ人にある部屋へ通された。どうやらここで、空読み様が来るのを待つらしい。

部屋には三人、先客がいた。


「失礼。あなたたちは?」


先客がいると思っていなくて、完全に硬直した私達の中で、最初に口を開いたのはダックさんだった。

この人には本当に感謝しかない。まだカイとは気まずいらしいけれど。


「おやおや聖女の方々ですか。よく来られました」


ダックさんに答えたのは、部屋の椅子に座っていた優しそうな男の人だった。

後ろに、長い槍を持った人ががいる。お付きの人なのだろうか。


「私、ハーマ集会の会長を務めさせております。ヒラ・ハーマレーと言います」


お付きの人で予想したけど、やっぱり偉い人だ。

ハーマ集会って言ったら、この島の東側を治めてる組織だ。そこの会長ってことは、本当に、めちゃくちゃ偉い人。


「こちらはお付きのボンド・フーリーというものです」


ボンドと呼ばれた人が、無言でお辞儀をする。頭まで紺の鎧を着ていて顔が見えない。


「そちらは、聖女様御一行ですね?」


「あっ、はい!えっと、聖女の、メルリ…です」


ヒラさんに振られて、慌てて自己紹介する。

突然だったこともあって、緊張した受け答えになった。


「カイルスと言います!」


「エルギオ、と言います」


「ダック・ボンテールです。こっちは、飼っているメムリット族のペミー」


「ペムゥ!」


と、私以外の仲間は普通に自己紹介していた。どうやら、緊張していたのは私だけらしい。

しかも男子二人、フルネームで自己紹介していない。

仕方ないのはわかるけれども。


「えっと、それでそちらは…」


ダックさんが言った。

部屋には三人いて、一人はヒラさんでもう一人はそのお付きのボンドさん。だから後一人残っていて、その人はさっきから一言も喋っていない。


赤っぽい鎧で体をすっぽり覆って、長い槍を持っている。

状況的に、この人もお付きだろう。しかもおそらく、この島を治めるもう一つの組織、ハーレ機関の—。


「無礼を承知で名乗らせていただきます。話が、進まないので」


と、その人が口を開いた。

そういえば、普通はお付きの人は自分から話してはいけないという規則があったはずだ。

ハーレ機関は頭首制だから、そういう規則はハーマ集会より厳しいはずだ。

それなのに、自分から話そうとするとは、何かあったのだろうか。


「私は、クニット・モリスと申します。ホラ・ハーマレー機関長様のお付きです」


「はあ…それで、その機関長様は一体どこに…?」


ハーレ機関の機関長の名がわかった所で、改めてダックさんが誰もが想っていた疑問を呈した。

それに答えたのは、ヒラさんだった。


「来ないんですよ、ホラさん。二人が揃わないと、空読み様も来れませんのに」


エルギオが、えっそうなのといった困惑の表情をした。

また、なにも話していなかったことを思い出して、私は顔に手を当てた。


空読み様は、ハーマレー島の二大島主の権限がないと、塔のてっぺんにある部屋から来られないのだ。

それだけ、空読み様は大切な人ってことだ。

と、ここまでを小声でエルギオに説明する。


「えっと…お付きのクニットさん、はホラが来ない理由、知らないんですか?」


「知りません。昼頃に、聖女が来るまでには戻ると言って、街道に出られて以後、戻ってきておらず…」


ホラさんが来ないと空読み様に会えない。それならば、なんとかして見つけないといけない。


「迷子になってるとか?この島、スッゲェ広いし」


「島主が自分の島で迷子になるか」


カイの提案にダックさんがダメ出しをした。

二人の空気が、まだ悪い気がする。早く仲直りしてほしいのだけど。

と、そこに割り込んでくれたのは、ヒラさんの笑い声だった。


「ハッハッハッ!迷うことはありませんよ。私達にとってこの島は家みたいなものですから」


「家みたいなもの、か…」


それなら、迷うことはありえない。

でも、それならどうしてか?


「し、失礼します!」


沈黙を破ったのは、駆け込んできた兵士だった。しかも赤い鎧を着た。

すごく焦った様子に、私は何か不安なものを覚える。


その不安への答えは、すぐに出された。

そしてそれは、この場に衝撃と緊張を走らせた。


「ほ、ホラ様が、何者かによって殺されたとの通報が…!」

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