幕間、インタールード〜悪夢
熱い、熱い、あつい。
痛い、痛い、いたい。
なのに動けない、動けない、動けない。
狭い、狭い闇の中で、私は必死に身を捩る。
けれど、この痛みは和らぐ事がない。
ふと、闇の中で誰かの瞳を見た。
自分より遥かに大きい、白い体。
その、夕暮れのような瞳を。
(そう、だ……)
自分は彼を助けたかった。
苦しみに打ち震え、それでも泣くのを我慢して、必死に感情を抑え込む。
そんな彼を、助けたかった。
でも。
「邪魔だよ、キミ」
帰ってきたのは拒絶の言葉。
そして世界が二、三転し、身体ごと地面に叩きつけられる。
そこで意識は飛んだのだけど、悪夢はその続きを勝手に作り出す。
「……血」
意識が飛ぶ直前に聞こえた、彼の、彼とは思えぬ声。
それと共に、彼の口が大きく開く。
人など、簡単に噛み切れてしまえる牙が、舌の間から鋭く覗く。
生暖かい息と涎で、口が塞がり喉が詰まる。
舌の上に乗せられた体が、口の奥へ滑り落ちていく。
「……あ、ああああっ」
そこで、声も出せなかった私は、叫びを捻り出した。
生きるために、死なないために、体が反射的に叫んだ。
「ああああああああーーーっ!!」
自分の呼吸の限界を超えても、私の叫びは頭に響く。
腹の底からの恐怖の叫びは、人が怪物に出会った時のそれに似ていた。
これは、悪夢だ。
しかもその後半は、知らない光景だ。悪夢が作り出した、幻想だ。
だから気にする事はない。
だから、もう二度と、こんな事など起きないはずだ。
熱い、熱い、あつい。
痛い、痛い、いたい。
暗闇の中で、私はいつまでも、身を捩っている。
けれどこの痛みは、きっといつまでも、消える事はないのだろう。




