幕間、シャーマンズ
細い通路を、私はいい加減苛立ちを募らせながら、歩いていた。
「ラケルーっ!何処にいるのー!返事しなさいよ!」
いつもならそろそろ起きて来るはずの彼が、どこにも見当たらないのだ。
もうすぐ司祭様の儀式の時間だから、両腕の自分達が居ないとまずい。
なのに、その片腕がどこにも居ない。
「まったく…一体どこに行ったのよ…」
儀式に片腕が遅れるなんて事は、あってはならない。調子者だが時間は守る彼のことなので、遅刻はないと思いたい。
そんな事を考えながら、彼がいそうな最後の候補の、部屋を除く。
そして、直前の不安はかき消えた。
「…あっいた!ったく、何してんのよ!もうすぐ司祭様の……」
言葉の端は、戸惑いに埋もれた。
寝床から起き上がった彼が、宙をぼんやり見据えているのだ。
いつもの『加護』の反動ではない。
「……ラケル、どうしたの?」
「…あ、サフィラ、おはよう。えっと、確証は無いんだけど……見たんだ」
彼にしては珍しくしどろもどろだ。
「いつもの事だけど…いえ、おはよう、ラケル。それで?何を見たの?」
もう昼だよ、と言いかけてやめる。今言っても彼を悲しませるだけだ。
それより彼の狼狽の理由が知りたい。
「もしかしてだけど…聖女達が」
それだけで、先に何が続くのか察せれた。
衝撃が体を走る。焦りそうになる胴を押さえて、なるべく冷静に言葉を紡ぐ。
「それは、本当?」
「多分…僕が張った『壁』を、すり抜けたのを感じたんだ。近くに、タンテー様もいた、と思う」
それなら信憑性は高い。というか、ほぼ疑いようもなく、聖女一行だろう。
ついにこの島に、聖女達がやって来るのか。
「…ラケル。あんたは司祭長様に、報告に行って来て!私はマル…司祭様に話して来る!」
勤めて冷静に勤めたけど、けれども興奮と高揚は、口調に表れた。
頷くラケルを置いて、部屋を飛び出す。平静でいようと居たけど、多分今の私は彼より落ち着きがない。
それ程に、私にとっては重大な事だった。
(聖女がついに…ようやく、ようやく……!)
思っていたより短かった。けどそれほど直ぐでもなかった、この時。不安もありながらも、私の心は晴れやかだった。
抑えられぬ熱に浮かされながら、私は来た道を駆け戻り出した。
間章 終
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