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聖女ドラメルと最後の竜  作者: 創作草
第六章 その墓標に黄昏を
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幕間、突然の訪問者

月が、東の奈落から上がってくる。

フェキシフト島跡は、俄に騒がしくなった。

折角の滅んだ島の、それ自体の為の魂柱だ。元が岩山とは言え、野晒しなのは良くない。

そんな訳で、剣の魂柱と名付けられたそれの、周辺環境の整備が、大急ぎで行われていた。


「何から何まで…本当にありがとうございます、メーレンさん」


「いえいえ、メルリ様たちの頼みですから」


メーレンさんに頼んで、ハーマレー島まで事情を説明しに行ってもらった。

そして、メーレンさんは、多くの大工職や治療師を乗せて戻ってきた。かの二人の島主の采配らしい。


「二人の様子は大丈夫か、メルリ」


「僕もカイも大丈夫だよ、ダックさん。緊張の糸が切れただけだって」


カイとエルギオは、仲良く熱を出した。エルギオは肩の傷のせいで、カイは恐らく『加護』と共に疲れ知らずで動いたからだろう。


「二人とも熱は低いし、こうやって話せもするし、大丈夫だと思うよ。私は二人のことを見張ってるだけだし」


勝手に起き出して、また無理しないように。


「…それ、どう言う意味だよメルリ…」


彼ら二人も含め、怪我人や精神的に倒れた者などの看病。魂柱の周りに、ちょっとした設備を設置。

これらの事がひと段落した時、エリクとの戦闘から数日経っていた。


———


「メルリ様、ちょっと」


「はい?」


起き出した男子二人を見送っていた私を、メーレンさんが呼び止めた。


「なんですか?」


「少し…気になる事があるのです。……彼女、観光のガイドの」


「…サンデさん?」


サンデ・サンドイッチ。

確かに私も、少し彼女の事が気になっていた。

私が魂柱の前で祈りの言葉を紡いだ時。彼女は、その時起こった現象を『聖女の奇跡』だと見破ったのだ。

そもそもその名自体、何となくで付けたものの筈なのに。


「気にし過ぎなのかも知れませんが…ハーマレー島でヒラ様に事情を説明した時、不思議がられたんですよ」


「…不思議がられた…?」


「はい…何せハーマレーですから、ヒラ様は観光業に関してもある程度の知識があるのですが…」


あらゆる物が世界中から集まってくる、ハーマレーの島主。それなら、その分多くの観光商と関わって来たのだろう。


「…彼女が所属していると言った、メンタル観光商会。その名を、ヒラ様はご存知なかったのです」


確かに彼女は、メンタル観光商会でガイドを務めていると言っていた。しかし、その名をハーマレーの島主が知らないのは。


「メーレン、さん…?」


「本当に、ただの考えすぎなのかも知れません。けれど…彼女は本当に、ガイドなのでしょうか?そして…」


一度芽生えた疑問は、本人にも止められない。けれど私には、その問いは聞いてはならない物な気がして。


「……メンタル観光商会というのは、()()()()()()()——」


その時だった。

腹から響くような低い音が、辺りに響いた。それが何かが風を切っている音だと察したのと同時に、私たちに影が落ちた。

巨大な影が、私たちの頭上にいた。


「……は?」


周りにいた誰かがこぼす。

だってそれは青い鱗に覆われていたから。

それは、翼と牙と、爪を持っていたから。


「…さ、い…!?」


青い災竜が、メーレンさんとサンデさんの二つの観光船、それらに片脚ずつ乗せて、降り立った。

一瞬の沈黙の後、忽ちあたりがパニックに陥った。


「み、みんな、落ち着いて!」


そう叫ぶけど、視線は災竜から逸せない。

そらした途端、その爪で身体を切り裂かれるかもしれないから。弱い人間は、災いの挙動を見る事しか出来ない。


「二人とも、大丈夫か!?」


「メルリ、離れて!」


カイとエルギオが、叫びながら私たちの前に滑り込んだ。

最悪の場合、ここで彼が力を使うかもしれない。それだけは防がなければ。

青い災竜は、騒ぎ逃げていく人々を順繰りに見つめていく。


「……?」


その仕草に、敵意というか害意のようなものは感じられず。

私がそう疑問に感じたのと、災竜の視線が私たちを捉えたのは同時だった。

そして、身構えた私たちにどこかから声が響いた。


「…ああ、見つけた。多分、君が聖女で合ってるよね?」


その声は『心話』だった。目の前の災竜が発しているのだ。

そしてその言葉は、僕らの事を知っていたような口振りだった。


「そしてその隣にいるのは…なるほど、どうやら大体揃っているようだね。それなら丁度いい」


青い巨体が、姿勢を正す。

驚愕と困惑に塗れる僕らを無視して、災竜は僕らを見下ろして言った。


「聖女メルリ、竜の長エルギオ。僕は君たちを迎えに来た。君達を招待しよう——竜を祀る、北の果ての島に」

第六章 終


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