破棄しちゃうかー
「ヴェロニカ・レイン・カルテア。
私、アルフレッド・レイン・ユートはこの場を持って、貴様との婚約を破棄する!」
シャンデリアがキラキラを越えて、
もはやギラギラと輝く大広間に、威勢のいい声が響いた。
驚きと納得の視線が交差する。
今ここに、茶番劇が始まった。
婚約破棄と叫んだ皇太子の後ろには、一人の男爵令嬢がおり、
周りには、取り巻き、陰では逆ハーレム要員と呼ばれる側近達がいる。
「私ではなく、そこの愚民を選ぶのですか?何故?
私はこんなに殿下に尽くしてきたのに」
そう言った公爵令嬢の瞳には、沢山の涙が浮かんでいたが、
その瞳には、悲しみや絶望というより、
ただ単純に、赤子が親に聞くように。純粋な疑問を問うているようだった。
そこが、どこか狂って見えた。
「どうしてですか、ねぇ。アルさ」
「私の名を呼ぶな!」
「申し訳、ありません。殿下」
そして、まさに我が娘が婚約破棄されたこの国の首相は、こうも黙ってはいられず、
しかし貴族として、この国の一国民として、無遠慮に皇族の会話に口を挟むこともできず、
頭を悩ませていた。
だが、婚約破棄などという暴言を吐いたのは、自国の皇太子である。
(にしても、婚約破棄などと。婚約解消ならまだしも、婚約破棄は双方の家に傷がつく。
まあ、皇家は引く手あまただから無事かもしれんが。
何故陛下はあのようなアh………いやいや、アレに皇位継承権などやったのか。
いや、これはいい風に考えよう。アホと縁を切ることができるし、
皇家と繋がりが消えるのは多少痛いが、
あそこで呑気に菓子を貪っている鬼畜が逆ハーレム要員に加わるよりましだ。)
そうこうして頭痛を表情に出さないよう、堪えている間に茶番はどんどん進んでいく。
悪役令嬢の父、しかも、現公爵家当主でユーイン皇国の首相さん。
逆ハーレム要員という言葉を使うとは………
威厳とかどうなるんだろ