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異世界徒然なるままに   作者: れっどらー
7/7

別の転移者

遅くなっちゃった


今回訪れた街はとても大きく今まで赴いたことのない市街地へ足を運んだ


そしてここに来たのも行きがけではなくちゃんとした目的がある


『モンスター大量発生。マガルガドへの侵入を妨げよ』


マガルガドというのが今回訪れた街でありある程度戦いに慣れてきた腕試しにモンスター退治を請け負ったという形だ。ギルドもこぞってハンターを集い荒稼ぎを目的としたハンターが多い


報酬額はモンスター一匹に付き50カッパーとそこまでではないが50匹狩れば2500カッパー。


シルバー500の換算となるらしい。それだけでも生活費と武具代に雑費を差し引いても遊んで暮らせるレベルだ。といってもそこまで狩る人物はそういないだろうが


前は上級モンスターヴァルドを討伐した時にゴールド単位を手にしたため低く見えるがシルバー500はヴァルドの報酬以上と考えればお得だといえるだろう。


上級モンスターを狙い下手に危険を冒さず低級モンスター相手に確実に儲ける手段


それがモンスター大量発生らしい。


モンスターが増える現象は珍しくはなく。魔王の魔力や瘴気によるよどみが魔物を活性化させ増殖するシステムとリュミアから聞いた


俺と同じく腕試しをする者もいれば儲け話として請け負う者もいる。そして単純に街を守りたいというものも多い。このような大盤振る舞いもこの町がそれほど重要な区画と杳として告げている


実は今の今まで知らなかったがモンスターを倒すと運が良ければ宝箱がドロップするらしい


二次元も相まってゲームっぽいなここ素敵。


今の俺のレベルは3。雑魚中の雑魚でハンターは基本レベルは10を超えているらしい。


とそれも今しがた知った事実でレベル3でよく生き残れたなとちょっと自分で自分をほめてみる


さすがにヴァルド相手は無理だが低レベルモンスターなら以前の狼たちと同じくらいだろう


その為に体を鍛え、闘呼気も少しづつ慣らしてきたのだ


「俺は、やれる。自信をもっていいんだ」


「その意気だのうシノよ。だが言うまでもないと思うが念を押すぞ。バベルボーンは使用するな

約束できるかの?」


「もちろん!あんなの絶対に使わないよ」


あんな得体のしれないもの人が多いこの場所で使うはずがない。というかどんな能力かもわからないので使いたくはない。


─使えば、あの少女に近づいてしまう。そんな気がして気持ちが悪い


防具と武器も新調し、鉄の槍も新品同様。後れを取るはずがない


そして


『モンスターの群れがマガルガドに接近、迎撃してください!!』


魔法による拡声器と警鐘が町中に響く。いよいよ開戦だ。俺のチームは俺とリュミアだけ。


それは単純に俺の力を発揮するのに他の人を巻き込みたくないのと俺より強い人が狩ってしまったら力が使えないからだ


地震のような地響きが近づいてくる。闘牛の群れのようにモンスターたちが街に向け押し寄せてくる


それに向け大勢のハンターたちが攻撃を開始する。それぞれの適所を守り連携を取っている


そんな中、不意に俺の肩を後ろからたたく人がいた。


服装からして多分俺と同じ世界から来た男。気さくにその男は俺に声をかけた


「よっ、もしかしておたく俺と同じこの世界に来ちゃった系?」


「な!なれなれしくシノに触れるな!!」


そんな態度が気に入らないのか見知らぬ誰かゆえに警戒しているのかリュミアは俺を男から遠ざけるように引っ張る。だけどまあ、この人は大丈夫だろう


「別にいいよリュミア。そうだね。俺は東雲森秋。多分あなたと同郷だ」


そう答えると期待通りの返答からか嬉しそうに


「いや良かった!同じ故郷のよしみがいて助かったぜ!俺は勝木 悠馬。よろしくな東雲」


「うん、といってもこれからどうなるかはわかんないんだけどね。」


「ところがどっこい、実は今回アンタらのチームに加わりたいから話しかけたってわけさ」


「チームか…でも」


俺の事は良いがリュミアの素性を知られる危険は避けたい。やんわりと断ろうと思ったが


「あー皆まで言うな。手の内をさらしたくないんだろ?なら俺のスキルだけ知ってくれれば詮索はしないよ」


「虫が良すぎるな。目的はなんだ?」


条件が良すぎることもあって敵愾心と怪訝なまなざしを勝木に向ける。それが普通だろう見ず知らずの人間に心を許すのがどれだけ命とりか異世界人であるリュミアは知り尽くしている


そのリュミアの態度を意に介さず気楽そうにちょっと切実そうに勝木は言う


「簡単さ。今回金稼ぎに来たのは良いけどいい感じのやつがいなくてよ。そして俺のスキルは多勢に向いてない。よーするに組んでくれる奴がいないと困ってんだよ。だから取り分は少なめでいいからさ。仲間に入れてくれ」


それを聞いて俺は思案する。多分この人の言っていることは本当だ。そしてリュミアの力を詮索する気はないらしい。それさえわかれば何も問題はない。条件も悪くないし答えは決まった


「いいよ」


その提案に俺は快諾した


「シノ!?」


それに反しリュミアは不服そうだが


「困ってるみたいだしそれに俺たちに損はないだろ?条件もいいしそれにこの人いい人そうだし」


直観だが悪い人には見えない。自慢ではないが人を見る目は少しは自身がある方だ


「しかしなぁ…」


良い澱むリュミアに向け少しいたずらに


「ならリュミアは他の人と組んでよ。リュミアの実力なら引く手あまただし」


冗談めかしてそう言った。無論そんなことはしないとわかっての言葉でリュミアを説得する為だ


「へーそこのベッピンさんそんなに強いのか」


感心そうにリュミアをまじまじと見る勝木。どう見たって強さではなくやらしー目をしているが


「な!?シノ!わらわはシノ以外と組む気はない。そしてシノがそこまで言うならば…」


「ありがと、リュミア」


少し無理を言って心苦しいが正直に言えば同郷の人と話がしたかったという考えもある。


それにリュミアにあまり無理をさせたくないという思いもあった。


俺だけではリュミアの負担を軽減できない。ならせめて信用できる相手と組んで戦いを楽にしたいという一心だ


その俺の考えとやり取りを見てほほえましそうに勝木は笑う。そして両人差し指を俺たちに向け


「ヒューヒュー、見せつけちゃって。どうやらナンパは出来そーにねえな。お幸せに」


「なぁ!!!!」


俺とリュミア両方が赤面した


そしてモンスターの群れが接近して狩りの火ぶたが切られる。俺もリュミアも戦闘態勢に入り


勝木に向け俺は尋ねる


「で、勝木のスキルっていうのは…」


「入れてくれたお礼だ。俺のスキル見せてやるよ

『模倣─オルトー!!!』」


周囲の岩や土雑草に至るまで急にクレーターが開きその部分が勝木の近くに収束し。構築し顕現。現れたのは物質は分からないが異世界風に言うならばゴーレムと形容するものだろう


「援護頼むぜベイビー」


「そのゴーレムは?」


「ああ、俺のオルトは物質を分解し再構築する能力だ。このゴーレムだけじゃなくて原子で構成されていればどんな武器も防具も作れちゃうんだぜ」


「つえぇぇー!」


「ほかにも肉体改造もできるけど死ぬほど痛いからからやったことねーが…。俺の戦いはゴーレムで自動迎撃に想像できる武器をくみ上げ兵器としてぶつける。それが俺の戦法さ」


つまりめちゃくちゃチートスキル持ってるってことじゃないですかスゲぇぇぇぇえ!!


と感心しているとリュミアは不機嫌そうに


「ふん、つまり及び腰というわけではないか。その分シノはすごいぞ。レベルが低くても格上を倒せるのだからな。それにスキルも大したことはないのぉ、シノに比べれば!な!!」


「いや、リュミア!?そんな事言っちゃだめだよ!??謝って!!!」


すっごい対抗意識で噛みついている。リュミア謝って!すごくひどいこと言ってるし!!


謝罪を促すもツーンとすっぽをむくリュミア


でも同時にひどいことだがそう思ってくれるリュミアの気持ちがとてもうれしかった


多分普段役に立てないと思っている俺の意思をくみ取ったのだろう。ありがとうリュミア。その成果、見せてみるよ


そんな言葉を聞いて特に何も思うどころか愉快そうに笑って


「へへっ、そう言ってもらえると嬉しいねぇ。俺自身大したスキルと思ってないしなにより夫自慢を欠かせず男を立てるとはいい嫁さんジャンか。大切にしろよ東雲?」


のろけ話に変えられてしまいケッコー恥ずく赤面して顔を覆ってしまう俺 リュミアも例にもれずそう指摘され顔を真っ赤にしている。どうやら色んな意味でこの人には敵いそうにないな


そして魔物の群れも討伐に応じ減ってゆき小休止できるほどには収まっていた


「ふぃー!疲れんのはやっぱやだな!だけどお前らとPT組めて正解だった。思ったより楽に稼げたぜにっひっひ♪」


「むむ…シノにいいとこみせられなんだ…」


愉快そうに笑う勝木に対し不服そうに嘆息を吐くリュミア。さきの戦闘でかなりの数を勝木に取られたのだ


リュミアは強い。だからこそ今回は周囲に人がいるために魔法が使えないのだ。そんなことをすれば魔物より被害が出てしまう。なのでヴェリグリューシュは使えず他の魔法を駆使して戦っていた


そして俺は二人のサポートに回っていた。安全第一。二人に被害が及ばぬよう防御と牽制をしていた為ほとんど倒せてはいないが…


「俺も…リュミアの役に立てている…!」


確かに俺はそう思えた。今まで役立たずだったが今回は恩を少しでも返せた気がする。


「二人ともお疲れ」


「いやいや、東雲がサポートしてくれたおかげさ」


「な!?貴様!!わらわが言おうとしていた言葉を!??」


腰を落ち着かせていた二人に配給された水を渡す。今回体力をあまり使ってはいない分疲れている二人に対し動く余裕があったからだ。


水を飲みながら喧々諤々と仲良く口喧嘩している二人を眺めつい頬が綻んでしまう


こういうの…今まで無縁だったな。そう思い耽って給水する。そして何気なく勝木は俺に対して


「そういやさ、東雲はどうやって異世界に来たわけ?俺は神様ってやつが連れてってくれるって誘いがあったから来たんだけど」


「え!?神様!??もしかしてその神様少女の姿してなかった!!」


「え?おいおいおい…おちつけよ」


思わぬ質問に対し間髪入れず俺は詰問してしまった


「いんや、仙人みてーなひげ蓄えたうさんくせーおっさんだったぜ?少女?なんかあったのか?」


「オイ貴様。詮索は無しといったはずだぞ」


「あ!ワリイワリイ!!」


「いや良いよリュミア…実は…」


今までの俺のいきさつをつまびらかに勝木に説明し同情したように


「つまりお前さんは無理やり連れてこられたってワケか…で帰る方法を探している…と」


「まあそんな感じ…その言い方だとまるで…」

意図的に異世界に来た。そう言うニュアンスに聞こえる


「悪かったな触れたくないことに触れちまってすまない。わびと言っちゃなんだがよ。俺もこの世界に来た理由を話すよ」


勝木の話はこんな感じだった


模倣─オルトーという能力は異世界に着て手に入れた能力ではなく元の世界から持っていた力で


その力を誰にも気取られぬよう隠しながら生きてきたという話である日突然現れた神様らしき老人が『異世界に来ないか?』という誘いを受け半信半疑ながらその申し出を受けここに来たという。


元の世界で使っていたらモルモットにされるか社会から外れるかという中異世界ならばこの能力を受け入れ自分を活かせるのではないかと考えたかららしい


それを聞いて俺は苦しかったのは俺だけではないと、世界から必要とされていないというシンパシーを勝木から感じた。だが同情はしない。同情は可哀そうという勝手に相手の価値を下げる行為だ。そして俺は勝木の痛みを知らないから同情は出来ない。勝手にかわいそうと判断したくないから


「お互い大変だね」


「まーな。つっても今はパラダイスだしいいけどよッ!!俺はお前を応援するぜ!!」


「つまり…それって…」


仲間に入るという申し出かな?そう言い続けようとしたとき


「なあ、わらわを蚊帳の外に置くのはいじめか?」


ジトーと伏目で俺たち二人をにらむリュミアが割って入った。


「そして!わらわは反対だ!!断固として反対だ!!こんな奴を仲間になど!!!」


シャー!!と猫の威嚇みたいに牙をむくリュミア。すると勝木はあっけからんと


「いや、別に仲間にはならないぜ?」


「「え?」」


「そりゃ魅力的だけどよ…残念だけど俺…散財しまくるタチだからぜってー迷惑かけると思う!!ハッハハハ!!」


臆面もなくそんなことを言ってのけ豪快に笑う勝木


「だからよ!俺にできるのはお前に武器をプレゼントすることだ!!ほれ!」


そういって周囲の物質を吸収し構築した頑強な槍を手にしそれを俺に渡した


「え?これって…」


「心配だし着いていきたいのはやまやま何だが俺がいると負担が増えっからな。せめて餞別だけでも渡しておこうと思ってな」


手に持った槍は俺が武器商人から買ったものよりも頑強で手触りも良く重さも俺にあっている

そしてそれを見たリュミアはすかさず


「ならばわらわもその槍に付与ーエンチャントーしてやろう!魔法はこやつには使えぬらしいしな!!

悔しかろうハッハッハ!」


と負けじともらった槍に魔法をかけてさらに強化された槍へ変化した。驚くことにリュミアの魔法に槍が耐えている。普通の槍などにはリュミアの強力すぎる魔法に瓦解するからだ。・・・少し驚いているリュミアを見るにこの槍を壊そうと画策してた目論見は消えたようだ。それをあらかじめわかっていたようでからかうように笑いながら勝木は冗談交じりに


「つまり共作ってわけだなリュミア?俺の槍、大切にしろよな森秋」


「ハァッ!!?ふざける出ないッ!!誰が貴様との共作だッッ!??」


憤慨してガーッと吠えて怒るリュミアと怒らせて面白がっているリュミアと勝木を見て

つい俺も顔がほころんでしまい


―――――――――――――俺にも居場所ができた気がして―――――――――――――――


「ありがとう二人とも」


聞こえないように感謝の意を小声で言って、心強い。三人の武器を大切に握りしめ俺はそこにかすかな絆を感じた気がした。

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