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偽物の町で

作者: 雨森琥珀

なろうラジオ大賞2に参加してみました。

以下が条件です。

・1,000文字以下のオリジナル作品。

・作品タイトルに、以下のワードを挿入すること。

 ブラック企業/必殺技/忍者/おにぎり/ドラゴン/文学少女/名探偵/ボロアパート/大魔王/聖女/サラリーマン/幕末/ブラウン管/伝説/農民/おねぇ/入道雲/暇つぶし/偽物/牛乳/コントロール/森の/



 いつかどこかの町の中で、黒い髪に茶色い瞳の少年が赤髪に濃緑色の瞳を持つ少女に話しかけました。



「ねえねえ、聞いてよ。楽隠居(らくいんきょ)が夢だって言ったら笑われたんだ。なんでかなあ?」

「……ラクインキョって、何?」

「年をとって仕事をやめて、大切な人と自分のしたいことをすることだよ。

 この間、図書館で見つけた本の中に書かれてたんだ」

「なんでそんなことしたいの?」

 少女は首をかしげました。

「楽隠居が、人生をかけて叶える目標だからだよ!

 だってさ、考えてみてよ。楽隠居って、実はすっごい大変なことなんだよ?

 まず一緒に楽隠居してくれる相手がいなくっちゃいけない。

 この町を出て、目の回るような大勢の人の中からたった一人を見つけてその人を好きになって。

 その人も僕を好きになって、それで年をとっても健康で生きてて。

 子どもは自分たちを愛し受け入れてくれて孫は自分たちを慕ってくれる。

 ね、どれだけ大変なことか分かる?」

 少年は両手を広げて、少女に笑いかけます。

「それは……とても難しいことね」

 少女は目を伏せて静かな声で言いました。

 ついこの間まで少年と一緒に走り回っていたのに、少女は十二歳の誕生日の後から急に大人みたいな顔をするようになったのです。

 少年はちょっとつまらない気持ちになりました。

 でも、少年ももう少しで十二歳になります。十二歳になればいよいよ外の世界に出られるのです。

「きっと毎日が試行錯誤の連続だよ。

 誰かを大切にするのも育てるのもきっとすごく難しいよね。

 届かない言葉や誤解されることや、さみしさや悔しさで泣く日もきっとあると思う。

 でもきっとそれだって、逃げないでいればいつかは。

 そう考えるとやっぱりちょっと不安だけど、でもドキドキするんだ。

 経済的余裕だっているよね。どうせなら縁側付きの一戸建てにしたいし。

 大人たちみたいに『どうせ未来なんかありゃしない』なんて言ってられないよね。

 ……ね?楽隠居は人生の集大成なんだよ。

 どう?楽隠居、したくなってきたでしょ」

 顔いっぱいに笑顔を浮かべる少年に、少女は首を振りました。

「え?そうでもない?

 おっかしいなあ……そう思ってるの僕だけ?

 いいと思うんだけどなあ。楽隠居」



 世界の要人たちのクローンだけが住む町で。

 ドナーになるためだけに生まれてきた少年は、ずっと楽しそうに話し続けていました。



読んでくださってありがとうございました!


1,000文字以下ということで書いてみましたが、どうだったでしょうか。

感想等いただけると嬉しいです。

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