放課後の時間~~私は告白されました
・・・6年前、私が小学3年生の時、私は神城優と出会い、そして恋に落ちた。
優君はお世辞にもかっこいいと言えるような人じゃない。頭もそこまでよくないし、運動神経がいいわけでもない。クラスのみんなからも『影』のように扱われている。
でも、私は知っている、優君が毎朝学校へ早く来て、ウサギの世話をしていることを、休みの日には、朝早くからこっそり公園のごみ拾いをしていることを、・・・そして、男に絡まれている女の子がいたら、おびえながらも、助けてくれることを。
私はあの日以来、優君に意識してもらうために頑張った。優君と同じ中学校に入って、ファッションを勉強した。そのおかげか、同級生や先輩から告白されることは多くなった。でも肝心の優君は、私と目が合うと顔を赤くしてそらしてしまう。私から話しかけても、すぐに話題を切り上げて、どこかへ行ってしまう。私ってそんなに魅力ないのかな・・・
今日も、優君と会ったけど、挨拶をしただけだった。
「あー、もう私は何をしてるのよ!」
「芽依どうしたの?」
話しかけてきたのは、星野凛だ。
小さいころから親友で、いつも私の悩みを聞いてくれる。
「それがさー、優君が全然私を意識してくれないんだよね、私ってそんなに魅力ない?」
「え、そんなことはないと思うけど。それに神城は芽依のことちゃんと意識していると思うよ。」
「でも、優君、今日もそっけなかったよ。」
「それは、、、照れてるからなんじゃないかな?」
「そうなのかなー。」
「うんうん!」
「はあー、優君から修学旅行の班誘ってくれないかな。」
「芽依から行けばいいのに。」
「無理だよ、私から行っても、きもいって思われるかもしれないし。」
「そんなことはないと思うけど。(だって、神城も芽依のこと好きだしね。)」
「うーん。凛は誰と回るの?」
「私は、大智と回るよ。」
「え、なんで、なんで?」
「大智と付き合っているからだけど、」
「あっ、そっか。彼氏持ちはいいなー。」
「芽依、今日の放課後、話したいことがあるからこの教室に残っていてくれないか。」
「えっ?」
凛と話していたら、突然、優君が話しかけてきた。
『今日の放課後、話したいことがあるからこの教室に残っていてくれないか』って、あの優君が?
私はその言葉に戸惑った。
もしかして嫌われちゃったかな・・・
「えっと、ダメかな?」
優君は不安そうな顔をして私を見る。
そうだよね、私も優君と向き合わないと!
「いいよ!4時くらいでいい?」
「うん!じゃあ、また後で!」
そう言って優君は教室を出ていってしまった。
「りーんー。私、優君に嫌われちゃったかな?」
「えっ、なんで?」
「だって、放課後に言われることなんて、『芽依、もう俺に付きまとわないでくれ』しかないじゃん!」
「自覚合ったんだね。」
「あー、どうしよう。優君に嫌いって言われたら、私もう、」
「芽依、多分大丈夫だから心配しなくてもいいよ。(はー。本当になんで芽依も神城もこんなに鈍いんだろう。)」
「じゃあ、もし優君に嫌われたら凛が責任取ってね!」
「はいはい。」
・・・・・・
・・・6年前、俺が小学3年生の時、俺は間宮芽依と出会い、そして恋をした。
きっかけは、本当に些細なことだった。
あの時のことは今でも鮮明に覚えている。
俺は、家に帰る途中で自分と同じくらいの年齢の子が、18歳ぐらいの男たちに絡まれているのを見た。心では、助けを呼ばないといけないのは分かっていた。でも俺は男たちにおびえて、声を出すことすらできなかった。しかし、絡まれていた女の子の髪の毛に一人の男が触れようとしたその時、なぜだか俺の体は勝手に動いた。
俺はとっさに女の子をかばうように前に立った。
「あん、なんだお前?どけよ!」
男の一人が俺を殴りつける。
でも俺は倒れなかった。
それから、男たちは何度も俺のことを殴った。
それでも、俺は倒れなかった。
今思えば、見知らぬ女の子のためによくできたなと思う。
それからしばらくして、騒ぎを聞きつけて警察が来た。男たちが、パトカーのサイレンの音を聞いて、逃げ出してしまった後にだが。
その後、俺は病院に運び込まれた。どうやら骨が何本か折れていたみたいだ。そして俺は1か月間入院することになった。
助けた女の子は『芽依』と名乗った。
芽依は俺が入院している間、毎日お見舞いに来てくれた。
そして俺は、毎日お見舞いに来てくれる芽依にどんどん惹かれていった。
だが、そんな幸せな日々はずっとは続かなかった。
俺はついに怪我が完治し退院した。
それから、中学校に入るまで、俺が芽依と会うことはなかった。
でも俺は、まだ芽依のことをあきらめきれていなかった。・・・もしかしたら、どこかで会えるかも、なんていう淡い期待があったのかもしれない。
そして、俺は中学校に入学して、驚愕した。
芽依が、すごくかわいくなって、同じ中学校に入学していたからだ。
俺は、すぐに芽依に声をかけようと思った。・・・でも出来なかった。もし声をかけても、芽依が俺を忘れていたらどうしよう、そんな不安が頭をよぎって離れなかったからだ。
だから、芽依から俺に話しかけてくれた時はとてもうれしかった。このまま、あの頃みたいにたくさん話をできたらどれだけ幸せだろうとも思った。
でもそれはできない。
俺と芽依じゃ釣り合わない。芽依は、才色兼備でクラスの人気者だ。そんな芽依に、クラスでいないものとして扱われている俺が話をしたら、俺だけでなく芽依にも迷惑をかけてしまう。それだけは避けたかった。
そう思い、俺は芽依に対して、そっけない態度をとるようになった。心が痛んだ。
芽依がサッカー部の人から告白されたと聞いた時、俺の心は生死をさまよった。
そんな時に俺を支えてくれたのが、親友の大智だ。
大智はいつも俺の相談に乗ってくれる。
「大智、もうすぐ修学旅行だよな。」
「そうだな。」
「大智は修学旅行の班どうするんだ?」
「ああ、そんなこと先生も言ってたな。確か、『二人組で京都を回るからその班を決めておけ。』だったか?」
「そうそう、もしよかったら、俺と組まないか?」
「ごめんな、優。俺もう凛と回るって決めているんだよ。」
「彼女とかー、いいなー。」
「優も間宮と班組めばいいじゃん。」
「いや、でも俺だったら絶対断られるって。」
「大丈夫、大丈夫!」
「でも、」
「優、お前はいつまで逃げるんだ。今行かないと、間宮を本当に別の男にとられるぞ。」
「俺は別にそれでも、」
「よくないだろ!お前は間宮のことが好きじゃないのか?」
「・・・好きだ、6年前からずっと。」
「じゃあ、修学旅行の班ぐらい誘えよ!断られたら。俺が慰めてやるし。」
「分かった。」
「よしっ、なら。」
「でも、今は人目があるから放課後でもいいか?」
「・・・いいぞ。じゃあ、いま間宮に言いに行け。」
「わ、分かった。」
俺は決心を固めて、芽依のところに行く。
ふー。
「芽依、今日の放課後、話したいことがあるからこの教室に残っていてくれないか。」
俺は緊張しながら、芽依に話しかける。
芽依はそれを聞いて戸惑っている。
やっぱり無理か、、、
「えっと、ダメかな?」
「いいよ!4時くらいでいい?」
「うん!じゃあ、また後で!」
俺は、恥ずかしくなって急いで教室を出る。
外には、大智が待っていた。
「よく頑張ったな。でも本番は放課後だぞ。」
「ああ、分かってる。」
俺は大智と別れて教室に戻る。
~~~
「凛、こっちはうまくやったぞ。」
「ありがとう、大智!」
「じゃあ、放課後また教室の外でな。」
「うん!」
~~~
それから俺はずっと、放課後になんて言うかを考えていたため、授業の内容は頭に入ってこなかった。
・・・放課後・・・
ついに、4時になった。俺は意を決して中に入る。
教室では芽依が一人で本を読んでいた。
「芽依、」
「優君、この本、覚えている?」
芽依が読んでいた本は6年前、俺が芽依から勧められたものだった。
「ああ。覚えているよ。芽依が俺に勧めてくれた本だろ。」
「うん。覚えててくれたんだ!嬉しい。」
そう言って笑う芽依に心臓がドキッと跳ねる。
「それで優君、私に話したいことって?」
ついにこの時が来た。俺は授業中、頭の中で反復していたことを繰り返す。
(俺と一緒に京都を回るのに付き合ってください。)
よしっ、言うぞ。
「芽依、」
「うん?」
「俺と、・・・付き合ってください!」
「!?」
やばい、やっちゃったー。緊張しすぎて、言葉を間違えた。
芽依もすごく動揺している。
今の流れだと、芽依に告白したみたいになっているんじゃ・・・
「あ、あのっ」
「私も優君が好きです。よろしくお願いします。」
「え?」
芽依の顔はトマトのように真っ赤になっている。
『よろしくお願いします。』?じゃあ、俺は芽依と恋人になれたってことか?
・・・やばい、心臓が飛び出しそう。
芽依のことを直視できない。
芽依も同じなのか、ずっと下を向いている。
・・・・・・
私は、覚悟を決めて、教室の中で本を読んでいた。
4時になって、優君が入ってくる。
緊張してきたー。
「芽依、」
私は名前を呼ばれて、焦った。まだ心の準備が・・・
とっさに別の話題を出す。
「優君、この本、覚えている?」
「ああ。覚えているよ。芽依が俺に勧めてくれた本だろ。」
「うん。覚えててくれたんだ!嬉しい。」
私は優君がこの本のことを覚えててくれたことを嬉しく思った。
ふー、これで覚悟が決まった、何を言われても大丈夫。
私は優君に今日呼び出された本題を聞くことにした。
「それで優君、私に話したいことって?」
「芽依、」
「うん?」
「俺と、・・・付き合ってください!」
「!?」
!?!?!?優君が私に告白してきた。言った本人も緊張しているのか、あたふたとしている。
覚悟を決めたはずなのに・・・私はひどく動揺した。
えっと、こんな時はなんて言い返せばいいんだっけ?
早く返さないと、優君も不安になるよね。
「あ、あのっ」
「私も優君が好きです。よろしくお願いします。」
「え?」
優君が何か言おうとしていたけど、私はそれを遮って返事をした。
優君も、オッケーされると思っていなかったのか、困惑した顔をしている。
だんだんと私の頬に熱が集まってきた。私は顔を下に向ける。
やばい、優君の顔が恥ずかしくて見れない・・・
ガラララ・・・
教室のドアが突然開いた。
誰が入ってきたんだろう。音で二人組が入ってきたことは分かる。でも、優君の告白で疲れ切っていた私は、確認することができなかった。
「芽依、やったね!」
「えっ?」
上を見上げると、にこにこした親友の顔が見える。隣には、凛の彼氏がいた。
「優もやったな!」
「えっ?なんで大智がここに、」
私は嫌な予感がして凛に尋ねた。
「凛?もしかして聞いてたの?」
「大智、もしかして聞いていたのか」
優君も同じような内容を大智君に聞いている。
「「うん!もちろん!本当に、優も芽依もおめでとう!」」
二人は口をそろえて言った。
私が優君のほうを見ると、優君も私のほうを見ていた。
目と目が合って、二人で笑いあう。
・・・
帰り道、私は優君と二人で帰ることになった。優君は照れくさそうに私のほうを見て、手を差し出してくる。
私は、そのことが嬉しくて、優君の手をギュっと握った。
そしてそのまま、二人は肩を並べて、校門を出た。
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