ちょっとだけ意地悪な金の斧と銀の斧
とある木こりが斧を泉へ落としてしまいました。
──ボチャーン!
「しまった!」
──ブクブクブク……
「──!!」
落ち込む木こりを驚かせたのは、泉から現れたメランコリックな女神でした。
「……貴方が落としたのは、この【金の斧】ですか? こちらの【銀の斧】ですか? それとも、この【普通の斧】ですか?」
「……金の斧です」
木こりは咄嗟に欲に目が眩みウソをついてしまいました。
「……貴方はウソつきですね。罰としてこの斧は没収致します」
──ブクブクブク……
メランコリック女神は泉へと消え、残された木こりは斧を失い途方に暮れました…………が、ピンと何かを閃きました。
木こりは落ちていた木の枝に、ペンで何やら書き始めました。
──ポチャーン……
それを泉へと投げると、やがて沈み、泉の中からメランコリック女神が現れました。
「……貴方が落としたのは、この【金の隣の客はよく柿食う客だ】ですか? この【銀の隣の客はよくきゃき食う客だ】ですか? それとも、この【普通の隣のきゃきゅわ、よくきゃききゅうきゃくだ】……ですか!?」
大人しい顔をみるみる赤く染め上げ、女神が語尾を少し荒げました。女神が差し出した枝には木こりが書いた早口言葉が書かれていたのです。
木こりはそれを見て笑いを堪えるのに必死です。
「……金のやつです」
木こりはまたウソをつきました。女神は一呼吸、間を開けてから話しました。
「……貴方はウソつきですね。罰としてこの枝は全て没収致します」
──ブクブクブク……
女神が再び消えた後、木こりは傍にあった手頃な木の枝を手に取りペンで何やら書き始めました。
──ポチャーン……
それを泉へと投げると、やがて沈み、泉の中からメランコリック女神が現れました。
「……貴方が落としたのは、この【金のカエルぴょこぴょこみぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこむぴょこぴょこ】ですか? この【銀のカエルぴょこぴょこみぴょこぽこ、合わせてぴょこぴょこむぽこぽこ】ですか? それとも、この【普通のカエルぴょこぴょこみぴょこぴょこ、合わせてぽこぽこむぽこぽこ】……ですかぁ!?」
大人しい顔をみるみる赤く染め上げ、女神が語尾を荒げました。
木こりはそれを見てお腹を押さえて笑いを堪えています。
「……金のやつです金のやつです」
木こりはまたまたウソをつきました。女神は一呼吸、間を開けてから話しました。
「……貴方はウソつきですね。罰としてこの枝は全て没収致します」
──ブクブクブク……
女神が消えた後、木こりは傍にあった手頃な木の枝を手に取り、ペンで次の早口言葉を書き始めました。
──ポチャーン……
それを泉へと投げると、やがて沈み、泉の中からおでこに怒りマークを作ったメランコリック女神が現れました。
「……貴方が落としたのは、この【金の東京特許許可局】ですか? この【銀のトーキョー特許きょきゃ局】ですか? それとも、この【普通の隣のトトーキョー特許キョキャキャキュ】……ですかぁぁ!?」
大人しい顔をみるみる赤く染め上げ、女神が語尾をそれなりに荒げました。
木こりはそれを見て地面を叩いて笑いました。
「……金のやつですよ金のやつです、あーダメ!
お腹痛い!!」
木こりはまたまたまたウソをつきました。女神は顔中に怒りマークを作り、間髪入れず話しました。
「バーカ! バーカ! バーーーーーーーカ!!」
──ブクブクブク……
女神が再び消えた後、木こりは傍にあった手頃な木の枝を手に取りペンで何やら書き始めました。
──ポチャーン……
それを泉へと投げると、やがて沈み、泉の中から耳まで真っ赤に染まり、顔を押さえたメランコリック女神が現れました。
しかし、そこにはもう木こりは居ませんでした。
「バーカ!! お前なんか二度と来るなぁ!!」
女神は木の枝を木こりの居た方角へと投げました。
木の枝には『怒った顔が可愛いのでまた明日来ます。』と書かれていました。