表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/177

#94 【Minecraft】観光【黒猫燦/あるてま】

「てことでマイクラやりまーす」


:いぇーい

:マイクラきちゃー

:マジカマジカ

:昨日の今日じゃん


 善は急げってことで翌日にはマイクラの枠を取った。

 あの後マネージャーに頼んだらすぐにマイクラ専用Discordサーバーに招待するよう手筈を整えてくれて、その後マルチーサーバーの入り方も懇切丁寧に教えてくれた。

 最終的に23時ぐらいまで通話をしてたんだけど、マネージャーさんの勤務時間って一体……、いや止めておこう。この話題を深堀りするとなんか色々ヤバい気がする。


「んで実際マイクラってどうなん。熱いの?」


:どうなんってどうなん

:アチーチアチチよ

:きりんさんの動物園見に行こう!

:べんとー様の採掘場行ってください


「おーおー、マイクラキッズわらわらじゃん。まだログインもしてないんだが? 今からそんな調子で最後まで持つか?」


:草

:キッズも見てますと

:触れるな触れるな

:うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお

:こういうのは推しの建築にリアクション終わったら離脱するぞい


 企業勢のマイクラ配信、特に初回はどこもかしこも荒れている印象が強い。

 何故ならマルチゲーというものは箱バフが発生しやすく、自分の推しの建築を見てほしいリスナーが遠路遥々やってきてチャット欄で怒涛のアピール()を始めるからだ。他にもライバー同士がゲーム上で出会うことで生まれるエピソードを求めてやってくる箱推しだったり、純粋にマイクラという大人気ゲームに釣られてやってくるリスナーとか、色んな要因が重なった結果、初回配信(特に観光)は荒れに荒れてしまう傾向にある。

 まあ、ウチのチャット欄は常に荒れてるからこんなの今更なんだけどね!!!


「取り敢えずログインします! 鳩はチャンネル登録高評価Twitterのフォローよろしくおねがいします!! あとスパチャとメンバー登録もよろしくおねがいします! 赤色だと絶対に行きます!」


:はい低評価

:黒猫さぁ・・

:低評価増えて同接も落ちて草

:何だコイツ…(ドン引き)


 ま、まあ、い、今更、今更だからこの程度じゃへこたれない……。


「あれ、ログインできないんだけど」


 マルチサーバーの選択画面から「あるてま」をクリックしてみるけどなんかエラーを吐いてログインさせてくれない。

 昨日テストプレイしたときはちゃんとログインできたんだけどな……。


:ゲームにも嫌われてますと

:⚠黒猫燦がサーバーから締め出されてるぞ⚠

:まあよくあるべ

:とりあえず勉強しとかね?

:勉強しろ


「う、勉強は、ま、まあそのうち……。あ、入れた。はい勉強しませーん。残念でしたマイクラしまーす。うぇええ」


 何度も試したら普通にログインできた。タイミングが悪かっただけかな?


:うっざ

:※後日全部自分に返ってきます

:荒らしキッズに泣かされろ

:⚠おい!黒猫燦が勉強せずにマイクラやってるぞ!⚠


「常連が荒らしコメントっぽくコメントするなよ!?」


 そんなやり取りをしている間にマップの読み込みも完了してマイクラの大地に降り立った。

 初期地点は既に開発されきっているので簡素な小屋の中から始まる。いわゆるリスポーン用の豆腐ハウスってやつだ。


:マイクラへようこそ

:とりあえずどこいく?

:なんか壊しとく?

:誰かいるから挨拶しよ


「えーっと、今ログインしてるのはAiba(アイバ)_Kyosuke(キョスケ)BENToooo(ベントオオオオ)GAO(ガオ)_GOD(ゴッド)_SWORD(ソード)あとBeako(ベアコ)_altm(エーエルティーエム)さんね」


:ベントー様生存確認

:よかったベントー様まだあるてま所属してた

:滅亡したハルキオン王国をマイクラで復興しようとしてるんだよね…

:勝手に滅ぼすな


 最近は配信は疎かTwitterの更新もサボっているベントー様はどうやらマイクラの精霊になってしまったらしい。

 そのくせ自枠で配信をしないせいで、他のライバー(づて)に生存確認するしかないんだから困ったものだ。


:舐められたらダメだしいっちょ挨拶ぶちかまそう

:ここでマイクラ鯖の格付けが行われるからな


「えー、なんて言おっかな」


 あーでもない、こーでもない、とチャットを打ち込んでは消してを繰り返す。


:チャット何回も消すのわかるってばよ

:LINEとかTwitterでも返事返すの遅いタイプじゃん

:そのくせ普通のツイートだけは早い


「う、うっさい。えーっと、これでいいや」


【チャット】

 Sun_Blackcat joined the game

 [world]<Sun_Blackcat>konbanwa~


:うわ

:えぐ

:おもんな


「挨拶に面白さ求めなくてもいいんだって。変にやっても滑るだけだし!」


 ネタに振り切って何も反応貰えないときとか、めっちゃ居たたまれない気持ちになること必至だ。

 特にこの中の誰か一人でも配信をしていれば、向こうのリスナーにチャットの内容も筒抜けになるし下手な火傷は負わないに限る。


【チャット】

 [world]<GAO_GOD_SWORD>紅蓮の炎に抱かれるがいい

 <GAO_GOD_SWORD> は 炎に巻かれた

 [world]<Aiba_KyosukeD>gaoooooooooo!!!!!!


「はぁ!?!?!?!?!?」


:草

:ww

:紅蓮の炎に巻かれろ!

:ヤバい人いるって

:体張りすぎやろ…


「え、マイクラってもしかしてやばいとこ?」


:そうでもない

:やばいとこではないけどやばいやつはいる

:今枠見てきたら平然と作業に戻ってて狂気を感じた

:草


「えぇ……」


 ちょっとプレイするのやめよっかな。

 ちなみに未だに初期地点から一歩も動いていない。視点をちょっとぐるっと一周動かしただけである。


「おとなしく観光して大丈夫かな。急に我王死んだりしない?」


:ないない

:よく爆発してるよ

:近づかなければ害はない

:チャットに我王の死亡ログがひたすら溜まるのか…


「と、とりあえず気を取り直して表出よう」


 キーボードのWキーを押し込んで前進する。


「うわ、動いた」


:そら動きますわ

:初めて歩いた赤ちゃん見てる気分

:歩けてえらい

:それはもう馬鹿にしてんのよ


「えーっと、クリックして扉を開ける、と」


 ガチャッと音を立てて豆腐ハウスの扉が開く。

 中からは外の様子が全く分からないから、こういうときはじめの一歩を踏み出すのってワクワクする。

 まだ見ぬ光景に胸を踊らせながら飛び込んできたのは、


「邪魔ッ!!!」


:wwww

:ベア子ww

:後輩、扉の前で黒猫ブロックしてます


 いつの間にか扉の前に来ていた神々廻ベアトリクスのアバターがわたしの行く手を阻んでいた。

 なんでお前がいるんだよ!!!


「普通さぁ! 初期地点から出たらなんか先輩とか同期の建築が広がっててわーすごーいとか言いながらジャンプしてはしゃぐもんじゃないの!? 扉開けてファーストコンタクトがベア子だった私の気持ち考えたことあるか!?」


:正直おもろい

:お辞儀しながら左右に揺れてるベア子可愛いやん

:配信に映りたがるリスナーかな?


【チャット】

 [world]<Beako_altm>senpai~~~


:かわいいじゃん

:おててふりふりしてそう

:黒猫キッズ

:マイクラ始めるからってウキウキで来たんやろなぁ


「くぅ、慕われてると思うとなんかキレるにキレれない……!」


 もやもやした気持ちでいると、ベア子の手元からポポポポポと何かが投げられた。


「あ、ステーキだ。ちょ、多い多い。って、装備はいらないって!」


:手厚い介護で草

:マイクラ世界に転生したら最強装備で観光した件

:ベア子、自分のお下がり脱ぎ捨てました


「さすがにね、装備はお返しします。てか後輩のお下がりは良くないでしょ……」


:⚠黒猫燦、後輩から装備を強奪⚠


「奪ってないからぁ!?」


 食料だけはありがたく頂戴して装備は返却する。

 ベア子はぴょんぴょん、とその場でジャンプすると特に何も言わずに空を飛んで消えていった。どうやら付いてくる気はないようだ。


「さて、やっと落ち着いたわけだけど。そろそろ観光していい?」


:どうぞ

:他のメンバーは来なさそうだしね

:我王燃やしに行こう

:ベントー様の地下帝国見て

:シャネルカと咲夜様の旅館見に行かね?


 なんかベア子が乱入してきたせいで扉を開けた先の光景に感動とか、そういう流れではなくなってしまったけど取り敢えず観光を再開しよう。

 初期地点から出て最初に見えたのは巨大なビルだった。


「なにこれ……」


:鯵本社

:AoftheG本社ビル

:事務所


「えー、なんか景観壊し過ぎじゃない? 周りファンタジー系の町並みなのに中央にどでかいビルって……。作った人センスなさすぎ」


:それ先輩たちの合作やぞ

:⚠黒猫が先輩に喧嘩売ってるぞ⚠

:まずいですよ!


「いやぁ素晴らしい建築センスですね! 初期地点から出たらまず本社って、私たちが企業所属のVTuberって事を自覚させてくれる親切設計! えーおぶざじー最高(さいっこ)


:熱い手のひら返し

:黒猫「作った人センスなさすぎ」

:切り抜きお願いします


 危ない危ない、もう少しで炎上するとこだった。

 マイクラには色んなライバーが作ったものがそこかしこにあるから発言には特に気をつけないといけない。

 迂闊な発言をすると本当に面倒な粘着が一生ついてくるからね。


「い、一応本社覗いとく?」


:お好きにどうぞ

:なにもないけどね

:内装はないそうです

:黒猫が初期ハウスの扉閉めてない!

:扉閉めてください

:地下帝国


「はいはい、行くから落ち着けお前ら。旅館も地下帝国も動物園も逃げないって」


:黒猫もなんか作る?

:ゆいくろマイクラして

:建築できるの?

:ぐんぐん進んでるけど道分かってんのかこれ

:そろそろ夜だけど大丈夫?


 目的地もなく適当に進んでいく。

 こういうのは「まずどこどこ行ったほうが良いよ」、という指示厨が湧いても言うことを聞かずに訳も分からないルートで探索するに限る。

 そうするとこの配信者は俺の操縦を受け付けないんだな、と気づいて段々と指示厨も一人また一人と消えていくわけだ。

 ただ難点がひとつ。

 マジで適当に進んでるせいで迷子になることかな!


「どこ、ここ」


 初期地点あたりにあったファンタジー風の街からだいぶ離れて、まだ未開の森の中を突き進んで気がつけば海沿いに出てしまった。

 指示厨を振り落とす勢いで縦横無尽に駆け回ったせいで元の道もよくわからない。

 うーん、迷子じゃね?


:知ってた

:指示厨を無視しすぎた末路

:逆張りで一切何も言うこと聞かないとこうなる手本

:せめて本社内にあるマップは見とくべきだった

:まあ指示厨が悪いよ指示厨が

:この子適度に指示してあげないと失敗ばっかりするんです…


「だ、大丈夫大丈夫。まだステーキはあるし、ほら」


 たくさん貰った食料は食べ切れないほどあった。

 だからスタミナだってなくならないし、スタミナがある限りダメージの心配もない。


:でもゾンビの声聞こえるよ

:蜘蛛もな

:海の近くは離れたほうが良いよ


「わ、わ、ちょ、ゾンビ多くね!? なんかめっちゃ近寄ってくるんだけど! ばかかよ!」


 わらわらと森の中から湧いてくるゾンビを回避して走り回る。

 すると海の中から変な敵も湧いてくるし、蜘蛛もやってくるし、何なら矢も飛んできた。


「た、助けてー! 相葉先輩ー!!」


:⚠京介くん、黒猫さんを助けてあげて⚠

:⚠我王様、黒猫さんが助け求めてる!⚠

:⚠ベア子黒猫が!⚠

:⚠ベントーさまぁー⚠

:※どこにも鳩は飛んでません

:※ベントー様もベア子も枠が無いです


「配信主のチャンネルで鳩ごっこするなぁ!」


:それって鳩してこい…ってこと!?

:言ってることやば

:運営に言いつけてやろ

:この人鳩の誘導してます!よくないと思います!

:本気にする人出てきそうだな


「あ、あ、死んだぁ!!!!」


 懸命に逃げ回るがしかし無情にもスケルトンの矢がわたしを貫く。

 その場に所持品をぶち撒け、死亡ログが画面一杯を支配した。


「う、うぅ、ひどい……」


:どんまい

:適当に走り回ったらしゃーない

:それじゃあうちの黒猫がおばかな子みたいじゃないですか!!!

:自業自得乙

:とりあえず食料回収しに行く?


 リスポーン地点を設定していなかったから初期地点に戻される。

 さっきぶりの豆腐ハウスから消沈した面持ちで扉を開いて外に出る。

 はぁ、おとなしく指示厨に従うか……。


「あ」


:ベア子きちゃー

:死亡読み初期地点先回りベア子

:ベア子ステーキ投げつけてます

:あったけぇ

:なあ、取り敢えず防具もらっとかね?


【チャット】

 <GAO_GOD_SWORD> は 運動エネルギーを体験した

 [world]<Aiba_Kyosuke>gaoooooo!!!!!!

 <GAO_GOD_SWORD> は 溶岩遊泳を試みた

 [world]<Aiba_Kyosuke>gaooooooooooooooo!!!!!!!!!

 <Sun_Blackcat> は スケルトン に射抜かれた

 [world]<Beako_altm>いっしょにまわりますか?


「べ、ベア子……」


:優しい後輩持ったな

:案内してもらお

:ベア子有能黒猫無能

:ベア子視点ほしいわw


 そういうわけでベア子に案内してもらった。

 終わり際、お土産にダイヤを1ストック渡されたけどこの子いくら何でも貢ぎすぎでしょ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ