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#89 【雑談】あるてまフェスお疲れ様の会【黒猫燦/あるてま】

「はい」


:¥10,000 はい

:¥2,525 どーも

:¥9,625 こんばんにゃー

:なんか言え


 あるてまフェスが終わっても翌日は普通に学校があったので金曜日は配信を休み、代わりに土曜日の今日は雑談配信をすることにした。

 今までの配信ではフェスが控えているせいで話せない内容がいっぱいあったけど、今日から気を使わずに喋れると思うとすごい気持ちが楽だった。


「ちょっと聞いてくださいよ。昨日って金曜日じゃないですか、つまり学校だったわけですよ。フェスで全身めっちゃ痛いのに頑張って登校したんだけどえらくない? 普通休日にやるべきだよね?」


:うんうん

:¥500 学校いけてえらい

:↑不登校みたいだな

:それが普通定期

:¥10,000 俺も地方からフェス参加したけどちゃんと仕事いったぞ。何なら休んだ分今日は休日出勤だ

:休日にやれはそれはそう


「いやまあ、一期生のデビュー日にフェスやってお披露目ってしたかったのは分かるけど、金曜ならまだしも木曜日はつらいよねー。平日だから参加できなかったって人もちらほらいたみたいだし」


 Twitterには聞いてもないのにわざわざメンションを付けて隙あらば自分語りをするファンってのはちらほら存在する。

 今回で言えば平日だから参加できなくて残念だから慰めてとか、平日強行した鯵本社爆破してくれとか、フェス行かないけど誕生日だから取り敢えず祝えとか、そういう奴。

 自発的にメンションを付けてツイートするんじゃなくて、エゴサ用のタグや関連ツイートにリプライを送ってほしいと思うのは配信者のエゴだろうか。だって通知欄が毎日追えないぐらい多くなるし……。

 まあ、そういう人たちがたくさんいたおかげで、あるてまフェスが平日に開催されたことに関して不満を持っている人がそこそこいたのは把握している。


「てかさてかさ、他のライバーにはそういう運営に対する不満とかあんま送らないくせに、なんで私だけやけにそういうメンション多いの? もしかしてあるてまの目安箱かなんかだと思われてる?」


:だって他の子にやったら迷惑になるし…

:ライバーに不満を言っても仕方ない。だから代わりに黒猫に送ってる。

:¥500 黒猫さんに言えば運営に直談判して改善されるとか噂聞いた

:初期の頃になんでもツイートしてこいって言ったからだよ

:¥250 黒猫があるてまアンチのボスだから


「えぇ……、私のイメージってどうなってんの……。ま、まあ、他の人に迷惑かけてないなら別にいいけど」


 急に飛んでくるセクハラツイートに比べればまだマシだから許せる。


「次からイベントは休日にしてもらうとして……で、参加した人たちはどーだった? 楽しかった?」


:よかた

:楽しかったよ

:黒猫さんが遅刻した以外は良かった

:サプライズ3Dよかった

:¥610 あるてまがここまで大きくなって感動した。ちな今年からの新参


「うっ、遅刻はー、その、電車が悪いよ電車が」


 あれさえ無ければ間に合ったというのに。


:電車はしゃーない

:次からは運営の送迎用意して

:間に合うように行動してもろて

:¥200 ギリギリで生きていたい


「はいはいはい、私が悪ぅございましたー。反省してまーす」


:は?

:は?

:本性現したわね

:¥5,000 運営さーん!こいつ反省してませーん!

:まーた炎上


「いや! 本当に反省してるって! ただミスは誰にでもあるし次同じことをしないのが肝心なんだよ! つまりいつまでもクヨクヨせずに切り替えていこう!」


:それはそう

:たしかに大事

:¥200 まあそれミスした側が言う言葉じゃないんですけどね


 うぅ、わたしがなにしたってんだよぉ……。遅刻か。


「トークイベントに来てくれた人はね、ありがとーって感じです。あんまり喋れなかったけどなんか楽しかったです」


:なんか

:¥10,000 ゆいくろはガチ?

:喋れて嬉しかった

:黒猫が実在してて驚いた

:¥3,000 延長戦もお疲れさまでした。少ないですけどどうぞ


「みんなスーパーチャットありがと。でさ、トークイベント気づいてる人は気づいてると思うんだけど、私の枠だけ遅刻した分一時間延長したんだよね。勝手に」


 落ち着いた今だから振り返れるけど、本当にあのときはよくもまあ延長しようと思ったよね。

 無断でスタッフさん動かしたから慌ただしくしてたけど、以前のわたしなら絶対にそんなことやろうと思えなかったと思う。

 まあ、一年前のわたしならそもそも人と喋ることすら難しかったんですけど。


:勝手にやったの!?

:怒られた?

:¥1,200 すぐ別のイベント出てたけどちゃんと休んだ?

:やるじゃん

:スタッフ涙目


「スタッフさんとはね、直接喋ってないから何も伝えられてないんだよね。もしこの配信見てくれてたら黒猫燦はありがとうございましたって感謝してます。いやほんと、助かりました……。あるてまフェスはそういう名前も顔も知らないたくさんの人たちの支えによって無事終わったわけですよ」


:良いこと言うね

:¥500 スタッフさんありがとう

:縁の下の力持ち大事

:¥5,500 漏れそうなときにトイレに案内してくれたスタッフさんのこと一生忘れません


「で、トークイベントの後にはあれだね、三期生となんかやったね」


:炎上回避講座な

:イベントで炎上回避講座を流すとかいう炎上案件

:正直ヒヤヒヤした

:考えたやつの頭やべーよ


 うっ。


「ま、まあね、他にも候補はあったんだけど出来そうなのが限られてて……。ほら、女の子六人でおっさん口説くイベントとか地獄絵図でしょ」


:やば

:逆に見たい

:事案ですか?

:¥10,000 もしもしポリスメン


 ヤだよ、わたしはそんなイベント見たくない。


「てか聞いてよ、なんか私ベア子に避けられてるっぽいんだよね」


:ほーん

:近づくと燃え移るからじゃね

:賢い後輩持ったな

:懸命な判断だろ

:¥200 どんまい


 いつも思うんだけどなんでわたしってこういう話をする度にイジられるんだろう。

 誰も慰めたり同情したりとかしてくれないんだが?


:遠慮してんじゃね

:具体的にぷりーず

:あるてま不仲話第1話


「えっとね、ベア子ってなんか事あるごとに近づいてくるんだよ。お菓子持って来たりとか隣とか対面に座ろうとしたり」


:避けられてないじゃん

:むしろべったり

:¥1,200 は? てぇてぇか?


「いやいや最後まで聞いてよ。私もさ、最初は仲良くしてくれるのかなーって思って何度か話しかけようとしたんだよ。でもこっちから接触しようとしたら逃げられたり目を逸らされたりとかさ、避けられてるというか距離感じるんだよね」


 こっちが勇気を出して話しかけてるのに逃げられると傷つくんだが。


:それ避けられてる?

:恥ずかしがってるだけじゃね?

:もっと距離詰めろアプローチが足りねぇ

:コミュ障VSコミュ障


「えー、避けられてるでしょ。しらんけど」


 まあわたしも人と話すのが得意じゃないから、距離があるのに自分から詰めるとかムリムリ。


「その点、九天溢はガンガン凄い勢いで詰めるよね。なんかもう、壁が迫ってくる感じ。圧が凄い」


:たしかに

:コラボも良くしてるし

:距離感バグってるやつしかいねえ!

:九天ちゃんは好き嫌い分かれるよね。遠慮がないから俺は好きだけど


 歯に衣着せぬ物言いが多いから確かに好みが分かれそうなところはある。特にオタクはハッキリものを言うタイプが苦手だし。

 でもVTuberは自分を全面に押し出すぐらい押しの強いほうが色々とお得だから、彼女にはあのまま突っ走って欲しいと思う。


「で、まあ、結とラジオの公開収録したわけだけど、特に語ることもないし次行こ次」


:は?

:語れよ

:ゆいくろはガチ?

:つまり語るまでもない、ってコト!?

:ゆいくろはガチ


「ゆいくろは営業です営業」


:嘘乙

:メンバー抜けてチャンネル解除しました

:営業営業ね最近流行ってるよね

:営業を営業しててぇてぇってつまりゆいくろはガチってこと!?


「お前らほんと何でも話繋げようとするな!? 別に話す内容ないってだけだから! いつもどおりだよいつもどおり!」


 結の話をするとゆいくろで延々とチャットが埋まってしまう。

 そういう一色コメントはあまりわたしの歓迎するところではないから、ササッと流すのが一番だ。


「まあ最後にライブがありましたよねと」


:噛んだやつね

:どまです

:昔に比べて上手になったね

:もっと歌え

:歌枠しろ


「歌枠はしませーん。歌ってみたも出しませーん」


:は?

:は?

:は?


「は? とか言ってもやらないものはやらないから! イベントで歌えば充分でしょ!」


 日常的に歌うと疲れるし。


「そんなわけで今年に入ってからフェスの準備が色々忙しかったわけよ。ライブのためにボイトレも行ってたし体力づくりにトレーニングしたりとか。おかげでどうにかフェスは乗り切れたし、一段落ってとこかなー」


:おつかれ

:一周年記念は?

:デビュー日なんかする?

:しばらくゆっくりすんべ


「あー、一周年ね。一周年か……。なんかしなきゃダメかな、メンドイんだけど……」


:やれ

:一周年だぞ一周年

:ライブしろライブ

:無事一年がんばれてえらい


「まあ、なんかします。私がやらなくても同期がどうせなんかするだろうし。その辺は乞うご期待って感じ?」


:期待

:遅刻すんなよ

:同期てぇてぇ


 せっかくフェスが終わって少しはゆっくり出来るかな、と思っても結局企業所属の悲しいところで色々と案件が控えていたり一周年記念の準備があったりと、忙しいことに代わりはない。

 そろそろ纏まった休みとか欲しいんだけどなぁ。


「てことで今日の本題。まつきりめっちゃ良くなかった? 3D神過ぎたんだが」


:よかった

:てぇてぇだったわ

:みんな匂わせしてたおかげでめっちゃ期待してた。期待通りだった

:ついに3Dと思うと胸が熱いよ

:黒猫さんも3D予定ある?


「あれ見ると3Dってめっちゃ羨ましくなるよねー、私も早くなりたい! でも大体の人は察してるかもしれないけど一期生がまだ全然3D化してないから当分先なんですよねー……」


:あー

:実装まつきりだけだもんな

:流石に黒猫さんでも先輩より先に3Dはないか


「新衣装でもそうなんだけどさ、3Dの場合身体を用意するのってすっごい時間が掛かるんだよね。それにまだまだその辺の技術も発展途上らしくて、お金があるからって簡単にポンポン作れるわけでもないみたい。だから今回用意できたのも辛うじてまつきりの二人だけ、って裏話があったりなかったり」


 今やVTuberと言えばLive2Dモデルが主流になっているけど、『VTuber』という単語が一般オタクに認知され始めた最初期は3Dモデルが業界の主流だった。

 それが何故3Dが憧れの的になってLive2Dが一般的になったかと言うと、3Dモデルに比べてLive2Dモデルは作るための費用や時間がそこまで掛からない、というのが大きな理由の一つとして上げられている。

 まつきり3Dの話だって風のうわさによるとわたしがデビューした頃には既に計画があったらしく、新衣装感覚で3Dになりたいなぁーって思っても2,3ヶ月後にハイ3Dお披露目! ってわけにはいかないのだ。


「まあ、仲良く順番待ちだね。みんな3Dになりたいし」


:そだね

:むしろ後発組のほうが技術進歩してるから有利まである

:誕生日に3D間に合えばよかよか

:動き回る黒猫さんか…想像できねぇ

:すぐ転びそう

:そもそも動かないぞ


「お前らやっぱわたしの評価散々じゃないか?」


:そんなことないよー

:妥当だよー

:気のせいだよー

:ばーか

:そんなことあるよー


「誰かバカって言った今!? バカは言いすぎだろ!? バカ!」


:ごめんって

:やーいバカ

:でもバカだもん…

:擁護したいけど否定できない

:クヨクヨせずに切り替えてこー笑笑笑




 ・

 ・

 ・




 まつきりの3Dレッスンを見学した話やフェスが終わってからみんなとご飯に行った話とか、その後もいろんなことを喋り続けて開始から二時間を過ぎた辺りで今日の配信を終了した。……うん、ちゃんと枠は閉じてる。


 うーん、と大きく天井に向かって伸びをすることで凝り固まった身体を解す。

 二時間ずっとモニターを見続けていると流石に身体の節々が痛くなる。特に、雑談配信はずっとチャットとにらめっこして全然身体を動かさないから余計に。

 よく漫画とかで机の上に胸を乗せると楽になるって言うから、わたしも今度から乗せて配信しよっかな。……いや、モニター見づらいわ。


「ふわ……っ、おふろはいってねよ」


 あくびを一つして、お風呂場へ向かう。

 配信の直前に一回入っているから今日で三回目の入浴である。ちなみに一回目はお昼に起きてから入った。お昼、夕、夜の三連コンボだ。筋肉痛ともこれでおさらばである。

 流石に3時間ぐらいしか経っていないのにまたお風呂に入るのは入り過ぎな気もするけど、お風呂は気持ち良いので何回入っても飽きない。あと重力から解放されるし。


 脱衣所で部屋着を脱ぎながら片手間にスマホをチェックする。

 最近のスマホって防水だからお風呂に持ち込んでも壊れないの便利だよね。だからついつい長風呂しちゃって、のぼせることがよくある。

 でも流石に今からスマホを弄りながら長風呂すると目が冴えてしまいそうなので、今日はスマホくんはおとなしくバスタオルの上でお留守番だ。


 Discordやメールボックスに大事な連絡が来ていないかだけチェックして、早くお風呂に入ろう。


「むぐっ」


 スマホを眺めながら片手でシャツを脱ごうとしたら、頭と腕と胸が引っかかってしまった。やっぱり脱ぎながらスマホを弄るのは難易度が高かったよ……。

 特に重要そうな連絡も来ていないし、そろそろ身体が冷えてきたからスマホとバイバイしようと思ったら一件だけ気になるタイトルのメールが目についた。


【VTuberグループHackLIVEスカウトのお誘い】


「はっくらいぶ、って企業だっけ」


 最近いろんなVTuberが続々とデビューしていて、界隈でも注目されている新グループの一つだったはずだ。

 普段はお仕事の連絡ぐらいしか来ないメールアドレスだから、有名グループの名前とスカウトという文字がやけに目を惹いた。

 簡単に目を通してみると、まあ件名の通りあるてまからウチに移籍しないか、というお誘いだった。

 VTuberの多くは元有名配信者、というのは割と有名な話だけど、中にはVTuberが元VTuberという話もこの界隈では珍しいものではない。

 そういったケースの大体は個人で活動しているVTuberをスカウトして企業に転生、つまり新しい名前と姿でデビューさせる──当然、個人からそのまま企業所属になるVTuberも少なからず存在する──のだが、メールには移籍という言葉が使われているけど企業所属のVTuberをわざわざスカウトするということは、十中八九転生前提の話だろう。


 最近よく名前を聞く企業だから興味本位でメールを開いたけど、正直見るほどでもなかったなって気分だ。

 色んなVTuberがデビューして人気が出てるってことは、こういう風に競合他社とか関係なくスカウトを仕掛けまくっているのかもしれない。まあ、全部想像だけど。


「へくしっ」


 うぅ、ずっと全裸だったから流石に寒くなってきた。

 メールはポイッとゴミ箱に捨てて……、いや、その前にマネージャーさんに一応報告しておくか。勝手判断は危険って散々学んできたし。えらいなわたし!

 ともかく、面倒事は後回しにしてお風呂で温まろ~。

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[一言] メール捨てないなら代わりに脱いだ服をくれ!(変態思考的なあれ)
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