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#72 【Xmas】あるてまクリスマスパーティ!~夜の部~【あるてま】①

 相も変わらずシャネルカ先輩がわーきゃーと騒ぐミーティングとは名ばかりの女子会を終えて。

 長かったあるてまクリスマス配信もわたしたちフラップイヤーが司会を務める時間になった。

 スタジオ入り直前までは緊張で吐き気が止まらなかったというのに、いざマイクの前に立つと不思議と落ち着くことができた。


 あるてまの二期生としてデビューして早いものでもう半年以上が経っている。

 配信モードに意識が自然と切り替わるようになったということは、遂にわたしもVtuberとしての自覚が生まれてきたということだろうか。


:お

:休憩終わりか

:やっと夜の部始まる


 配信の開始、第一声。

 待ちに待ったリスナーに語りかけるこの一言が一番大事で、一説によるとここで離脱率が大きく変わるらしい。

 わたしは気合を入れてすぅーっと大きく息を吸って、 


「オタクどもー、長かったクリスマス配信もようやく終わりの時間が近づいてきたぞ! 彼女や友人と過ごさずに一人寂しく朝から晩まで液晶に齧りついて、今日は楽しかったかー!?」


:いきなり喧嘩売られて泣いちゃった

:なんだこいつ

:クレムーのメール入れたわ

:事実だけに言い返せねぇ

:誰かこいつ消せ

:ここ公式チャンネルなんよね

:黒猫リスナー以外も居るの忘れてね???


「あ」


 感情のあらん限りを込めた言葉はしかし、クリスマスを寂しく過ごすオタク君たちにダイレクトヒットしてしまった。

 たとえ本当でも言って良いことと悪いことがあった!


:あ、って

:完全に失言じゃねぇか

:※本日のMCです

:企業の自覚


「う……、き、気を取り直して! この時間からはあるてま二期生黒猫燦と!」

「一期生の神夜姫咲夜と」

「シャネルカがお送りするのです!!!」


:きちゃー

:長かったクリスマスも終わりかぁ

:お昼の部で京介君が親指を立てながら溶鉱炉に沈む姿は涙無しには見れなかった

:↑そのあと2025年から京介くんがタイムマシンに乗って来たんだよね…

:十六夜が悪いよ十六夜が

:この3人が司会って大丈夫か…?


 爆速で流れるコメントを横目に、今日の進行スケジュールを確認する。


「えーとなになに、まずオープニングトークでそれからド偏見クイズ、プレゼントコーナーに個人Vtuberに凸企画……」


:あ

:それ台本じゃないですか?

:言っていいやつ????

:楽しみが台無し

:ネタバレやめてください

:独り言が大きすぎる


「や、やば……。え、リスナーは何も聞いてないよね!」


:あ、はい

:ナニモキイテマセン

:気を取り直していこう

:こいつに司会頼んだの誰

:後ろにマネさん立たせて

:物理的に口塞ごう


「ファイトなのですよ、黒猫さん!」

「無事に聖夜を終えられることを祈っておる」


 いや静観せずに助けろよ!

 三人で司会なのになんで保護者席みたいなポジションで応援してるんだこの人たち!?

 視線を投げるとグッと二人からサムズアップされる。

 ぐ……、打ち合わせで経験値を積む目的も兼ねて黒猫燦をメインに司会進行を行うみたいなこと言ってたけど、まさか本当に後方保護者面されるなんて……!

 いいさ、やってやる、伊達にわたしもVtuberしてない!


「はい! てことでね、楽しい楽しいクリスマスもあと数時間で終わるわけですが! まだ終わらないよ! さっき言ったみたいにまだまだ企画は盛りだくさんだから、最後まで楽しめ!」


:いぇーい

:猫の上澄み

:上っ面公式顔

:猫被り系ライバー

:切り抜きで見た黒猫燦ってもっと、こう…

:いつまで化けの皮保つかな


「お前らほんと散々言うな!?」


 それから簡単な告知を挟みながら、最初のコーナーが幕を開ける。


「第一回【あるてまド偏見クイズ】どんどんぱふぱふー」

 

:キタ!ド偏見クイズ!

:初企画なのに一回聞いたことある気がする企画だ!

:ネタバレですか!?


「えー、ド偏見クイズとは。私たちフラップイヤーが独断と偏見100%であるてまライバーがお題のクイズに答えるコーナーです。今日はクリスマスということで、クリスマスに関連する問題が出るとかなんとか」

「ちなみに妾たちは司会なのに問題も未だに知らされておらなんだ」

「あ、マネージャーさんが問題が書かれた紙を黒猫さんに手渡しているのです」

「なになに、【第一問、ヴェンデット・ハルキオンがクリスマスの夜に意中の相手に渡しそうなプレゼントはなに?】って、つまりこれについて私たちで回答すればいいってこと?」


:ベントー様の意中の相手!?

:半額弁当でしょ

:意中の相手が半額弁当なのか、意中の相手に半額弁当を送るのか…

:君に恋してる(半額弁当)


「いや、どう考えても半額弁当でしょ」

「意外と装飾品の類かもしれんぞ?」

「ハルキオンさんは意外とロマンチストなところがあるので夜景の可能性もあるのですよ!」


 ベントー様の配信は主に雑談がメインで、週に二回半額弁当を食べながら行われている。

 たまに他ライバーの企画に参加して、半額弁当を片手にゲームをする光景が見られるがあるてまの中では箱庭にわに次いで配信頻度が低いほうだろう。

 

「そもそも意中の相手イズ誰」

「実は既に結婚してる説を推して見るのです」

「その話を掘り下げると炎上しかねんぞ……」

「皆さん安心してください! 咲夜さんは独身ですよ!」

「ちょっと表出ろ」


:南無

:彼女は良いうさぎだったよ…

:シャネルカのおかげで安心して見れるよなぁ!

:頼む姫様そろそろ結婚してください


「どうしよう、マネージャーさんしかこの部屋いないんだけど……」


 あの二人、本当に外出たんだけど。


:www

:マwジwかww

:放送事故じゃないですか

:マネさん止めなかったんか…

:だ、誰かゲスト来てくれー!

:マネージャーさん喋らせようぜ

:ここが腕の見せ所だ


「え、えぇ……。いや、一人でド偏見クイズして何が面白いんだよ!」


:いけるいける

:がんばってb

:自由な企業だなぁ


「あー、うー、え、えっと……、はい! そういうわけで回答者が二人脱落したド偏見クイズですけど! 私の回答は半額弁当を一緒に家で食べる! でいくよ! なんかほら、ちょっと隙間風入るアパートのちゃぶ台で半額弁当二人で食べてそう! 半額弁当二つ買ったから普段なら定価の値段やないかーい、みたいな!」


:お、おう

:なんでやねーん

:なんか泣けてきた

:彼女はいつもこんな配信をしているのかい?


「あ、答えの紙渡されたよ。なになに、『ネックレス』ってド定番じゃん!!! しかももうちょっとなんか注釈とかつけろよ!! ネックレスって単語だけかよ!? なんか生々しいわ!」


:草

:w

:敢えてのね

:この調子で二問目いくのか…


 なかなか戻ってこない二人にいよいよわたしが放送事故の危機を覚えていると、ガチャリとスタジオの扉が開く音がした。


「先輩! やっと帰って──」

「一日遅れのハッピーバースデー!」

「お誕生日おめでとう、じゃ」


 振り返るとそこにはクラッカーを構えてニコニコしたシャネルカ先輩と咲夜先輩がいた。


「え、は?」


 パンパンッとクラッカーが炸裂する音に頭の中が真っ白になる。

 状況を把握しようと必死に頭を回転させるけど何がなんだか。

 なにこれ。


「というわけで! 昨日お誕生日だった黒猫さんをお祝いしようのコーナー!」

「え、いやいや、ド偏見クイズは」

「後でいいじゃろ」

「えぇ!?」


:ドッキリ?

:たんおめ

:そう言えば誕生日じゃん

:マネさん黙ってたのこれが理由?

:生放送でメインが抜けるなんて事故なかったんや!

:あったけぇな

:ハラハラドキドキのサプライズ


「本当はおっきなケーキを用意しようと思ったんですけど、さっき皆でミーティング中にケーキを食べたから自重したのですよね」

「あるまの気遣いが裏目に出るとはのぅ……。まあその分、誕生日にふさわしい品は用意したのじゃ」

「イエス! とどのつまりプレゼントです!」

「プレゼント!?」


 ど、どうしよう。

 顔のニヤニヤが止まらない。

 え、いや、さっきもきりん先輩にお祝いをされたばっかりだけど、それでも配信中にこうしてサプライズでお祝いされるのはなんかもう、言葉に出来ないぐらい嬉しい。


「妾からはこれじゃ」

「あ、マフラー」

「これから更に寒くなるからの。しっかり防寒対策はするんじゃぞ」

「シャネルカからは音の鳴るハリセンを……」

「ハリセン!?」

「近くのドン・◯ホーテで売ってたのです」


 いや、ド◯キあるけど!

 ちょっとした感動返してよ!

 咲夜先輩からマフラー貰ってワクワクしながらシャネルカ先輩のプレゼント開いたら、めっちゃいい音の鳴るハリセンとか落差がすごい!

 え、これでツッコミ入れろっていうお達しですか!?


「あ、お散歩したときに見つけた四つ葉のクローバーか川辺で見つけた綺麗な石のほうが良かったですか!?」

「男子小学生の宝物入れにありそうな物しかないな!?」


:流石シャネルカだ

:でもでもでも~?

:ちゃんと他にも用意してるでしょ

:ウチのシャネルカを舐めるなよ?


「と、いうわけでド偏見クイズの続きに戻りましょうか!」

「え、本命は!?」

「?」

「いや、そんなめっちゃピュアな顔で首傾げないで!」

「すまん、しゃねるかはこんな子なんじゃ……」


 ま、まあ、どんなプレゼントだったとしてもそこに貴賤はない。

 寧ろ貰えるだけありがたいんだから、変に催促したり期待するほうが失礼というものだろう。

 うん、音の鳴るハリセン……。

 あとで事務所の隅にでも置いとこう。

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