#56 【お泊り】なぁリスナー、わたしの理性いつまで持つかな【黒猫燦/世良祭】②
:遅くね?
:お風呂を覗きに行った祭ちゃん、そして待たされるリスナー
:下手すりゃ放送事故なのに許せちまうな!
:※覗きにはいってません
:はよ戻ってきて
:¥10,000 いない今だから何でも言える。黒猫、愛してるぞ
:¥200 普段意地悪ばっかりするけどホントは好きだよ
:¥2,500 主の居ぬ間にスパチャ投げ
:¥300 面白いことやってんね
:黒猫さん早く戻ってこい!
:リスナーの財布が尽きるのが先か、黒猫が戻ってくるのが先か
こんな状況でゆっくりと湯船に浸かることも出来るわけもなく、さっと全身を洗い流してお風呂を終わらせる。
祭先輩に関しては寝間着が駄目になってしまったので、急遽お母さんのを借りることにした。……わたしの寝間着はサイズが合わないから貸すに貸せなかったのだ。
で、まあ、そんなドタバタした状況でようやくパソコンの前に戻ったのはアレから10分後ぐらいのことだった。
「あい、おまたせ。再開するどー」
椅子に座ってミュートを解除する。
下手に謝ってもコイツラは付け上がるだけだから軽く流すぐらいが丁度いい。
そして離席中の流れを把握しようと、チャットを簡単に遡ろうとして、
:¥220 好きだぞ
:¥2,200 いつも配信ありがとう
:¥400 頑張っててえらい
:あ、戻ってきた
:スパチャやめやめ!
:¥4,000 普段は言えないこともいない今なら言える。初配信から追ってるけど最近の黒猫さんは後輩とか先輩相手にも物怖じしなくなったし自分から話しかけられるようになってて凄いと思う。最初はこんなコミュ障がVtuberやっても1ヶ月で止めるとか思ってたけど今は毎日黒猫さんの配信とか呟きを待ってる自分がいる。本当にありがとう、これからも黒猫燦を推していくから無理のない範囲で頑張ってください。PS:最近はコラボが多くて大変だと思うのでたまには休んでください。身体大事に
:やっちまいましたね
:ドンマイ
:あああああああ!!!!!!!!!!やらかした!!!!!!
「え、なにこれ……」
とんでもない量のスパチャが流れていた。
履歴を遡ると誰もいないし動かない画面なのに、なんかネタだったり真剣な内容だったり思い思いの文章で金額様々のスパチャが投げられている。
ホント何があった!?
「黒猫さんすごい」
「いやいや、何もしてないんですけど!? え、お前ら正気か!?」
「あ、黒猫さんはおっぱいから洗うみたい」
「今それ言います!?!?」
:助かる
:洗う胸もないのに?
:虚しいなぁ…
:虚乳猫
ツッコミが追いつかない!
それから暫く。ぜぇ、はぁ、と肩で息をしながらどうにかスパチャラッシュと祭先輩の爆弾発言は一旦の終息を迎えた。
配信開始してそろそろ一時間が経とうという頃だが、やったことと言えばお風呂に入ってドタバタしていただけなんだけど、これ本当に大丈夫か?
「……配信終わっていい?」
「まだ何もしてない」
「いや、もう私はドタバタして疲れたんですけど……」
「夜は静かに?」
「うーんふて寝したい」
:それで本題よ
:黒猫さんは騒がしいなぁ
:今日のスパチャ凄い額いってそうね
:デートの話お願いします
「あ、デートねデート。何から話そっか」
「カラオケに行った。ショッピングに行った。ご飯食べた。終わり」
「んー、もうちょっと話し広げましょうか!」
「黒猫さんが歌うの上手くなってた」
:¥200 明日カラオケ配信してもええんやで
:初コラボ思い出すねぇ
:相変わらず祭ちゃん雑!
歌ってみたはVtuberでも人気のコンテンツだし、企業系Vtuberはオリジナルソングやライブとか何かと歌う機会が多い。
だからいざという時に恥をかかないように今でも少しずつではあるが自主トレをしたりして頑張っている。
最近だとクラスメイトとカラオケに行く機会も増えたし、単純な歌唱力だけじゃなくて人に聞かれるという緊張面でもだいぶ成長している、と勝手に思っている。
「前回はリスナーも聞いてたけど今回はふたりだけのカラオケだったからさ。なんていうか、祭先輩の歌を独り占めできてめっちゃ良きに溢れた」
「通話で良いならいつでも歌うけど」
「Vtuberやっててよかった……」
:ただのオタクじゃねーか!
:まあ企業の2期生以降って先輩のファン多いしね
「で、2時間ぐらいかな。歌った後は服とか見に行ったよ」
「もっと歌いたかった……」
「私ももっと聞きたかった……。でもカラオケで1日潰すのはそれはそれでもったいないですし、ね?」
「あ、黒猫さんの下着選んだ」
「ちょっ!?」
:ほう
:詳しく
:カラオケしてショッピングとか完全にデートじゃん…
:普通は順番逆な気がするけどそれもまつねこっぽい
「黒猫さんは際どい黒ばかり見る。紐とかスケスケとか……、だからフリフリのピンクを選んであげた」
「あのあのあの、私の下着をそんなにバラさないで!? プライバシーも何もないんだけど!?」
「買ったのはさっき洗濯して、明日使うって約束した」
「ねぇえ!?!?!?」
「あと今穿いてるのは白」
この先輩はホントもうなんていうか、止まることを知らないな!
チャットで聞かれたこと全部答えたし! そのクセ自分に関する質問はスルーしてるし、ホントいい先輩だよっ!!!
「でも黒猫さんのサイズでフリフリのピンクを探すのは大変だった」
:そらぺったんこだからな
:むしろスポブラとかお子様パンツじゃないと…
:¥200 止められても赤裸々に語る先輩の鏡
「恥ずかしがりながら試着する黒猫さんは可愛かった」
「あの、ホント、もうそろそろ下着談義はやめましょう私が死ぬ」
「でも皆聞きたがってる」
「他のこと喋りましょ! ね!」
「黒猫さんが転けてソフトクリーム零した話?」
「思い出しても泣きそうになるからやめて」
べしゃって地面に広がるソフトクリームってどうしてあんなに悲しくなるんだろうね……。
「夕飯は少し早めにレストランに行ってパスタ食べたよパスタ。なんかクリーム系で、粉チーズかかってて、その、麺が美味しくて、なんかおいしいやつ」
「お魚おいしかった」
:あーあ黒猫さん食レポ案件消えた
:なんかなんか
:誰か語彙力あげてぇえ
:デートのハプニングとかあった?
「ハプニングっていえば……、よくナンパされたね」
合流前のアレだけじゃなくて、ショッピング中は何かと暇そうな男どもに話しかけられることが多かった。
だいたいの連中は祭先輩をデレデレと見ていたが、それでも中にはわたしのことを変な目で見るやつもいて、けど祭先輩はその全てをバッサバッサと言葉の刃で一刀両断の元切り捨てていた。
格好いい……祭先輩しゅき……。
「黒猫さんは私が守る」
「きゅん」
:※ナンパは祭先輩にされています
:黒猫さんと祭ちゃんが並んでたら、そら、なぁ?
:元気出せよ黒猫
「お前ら私のこと舐め過ぎでは???」
「黒猫さん可愛いよ?」
「ンンッ」
「ショッピング中に手を繋ごうとヤキモキしてるところも可愛かった」
「気づいてんですか!?!?」
「先輩だから」
:女の子同士はお買い物で手をつなぐのは普通なんですか???
:そら女の子同士だから常識よ
:¥300 めっちゃ祭ちゃんの手凝視してそう
いや、いやいや、だって、別に手ぐらい握るじゃん? 女の子同士だから普通じゃん??
いや、ちょっと、だからチャットで童貞とか言うのやめろよ!!
:¥2,200 このあと一緒に寝るけど大丈夫か?
「……はっ!?」