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何処か懐かしくも、考えられない日常

パチパチと軽い音がする。それは、畳の上にあるおはじきがぶつかり合う音だ。狐のお面を付け、半纏を着た少女がこちらに背を向けたままおはじきをぶつけ続ける。ぶつけるおはじきの周りを指でなぞり、親指と人差し指で丸を作って、ぶつけるおはじきがぶつかるおはじきに当たるように狙いを付けて人差し指に掛けた力を解放する。

            パチッ

当たった。


と、そんな今では考えられないような古風な遊びをしている少女にじゃらじゃらと音を響かせながら近付く男と女の姿があった。無論、カエデとアッシュである。

何故、こんな夕暮れの和室の中で一人で遊ぶ少女を見ているかと言えば、ここがボス 九十九の前(つくものまえ) のフィールドであり、この少女こそが


「初っぱなおはじきかよ、おいラリーミスったらフォロー頼むぞマジで。」


「オッケーオッケー、カエデさんに任せときんしゃい。あ、でも連続で来られたらマジ無理だから、その時はアッシュ置いて逃げるからね。」


「薄情ものー、死ぬときは一緒って誓いあったなかじゃねぇかよー。」


「別れってものはね、何時だって突然来るの。前触れがあるのなんて、数える程しか無いんだから」


悟ったことを言っているが内容が今の自分に思いっきり刺さっていて、返答に困ってしまい、どうでもいいと態度に表そうとして鎖に繋がれた巨大なトゲ付きの鉄球 モーニングスターを構える。

狐のお面を付けた少女にあと一歩というところまで近付くと、こちらにやっと気付いたのか少女が振り向いた。


「ずっと一人で遊ぶの飽きちゃったの。ねぇ、一緒に遊んで?」


狐のお面の少女がそう、話しかけるとお面の目の部分が赤く光を放ち、その姿がどんどん大きく…いや、自分たちの目線が下がり初めていき、やがて畳のおはじきが丁度目線と重なるぐらいまで下がった。


だが、変化はこれだけに終わらない。夕暮れの太陽の日差しが無くなり、畳だけの空間に蛍光灯のような白い光が空に上がる。見上げんばかりだった少女がいたおはじきの近くには、赤い半纏を着た白く大きな狐がこちらを見下ろしている。


と、今までただのオブジェとしてあったおはじきが宙に舞い上がり2つに別れ、狐とアッシュとカエデの方に降り注ぐ。


「来るぞ、当たればカエデのHPだと一回で3カエデがお陀仏だからな!ちゃんと避けろよ!」

「そっちこそ、私のロケット花火に巻き込まれてダメージ喰らったって知らないんだからね!」


と、互いに声を掛けつつアッシュはトゲ突きの鉄球とは反対の鎖に繋がれた鎌を前方へ投げ、地面に当たるが否や鎖を力任せに引く。そうすれば、身体も鎌の方角へ引っ張られ初めて踏ん張った足から力を抜けば前方へ一気に飛んだ。


一方でカエデもアイテムウィンドウを表示し、沢山並んだアイテムの中から【ロケット花火】を選択し取り出す。そして、出て来た自分の身体より一回り大きな【ロケット花火】を地面に突き刺し方向調整。横目でアッシュが腕力だけで射出されたのを見てから素早く【ロケット花火】を起動して、グリップのついた窪みに捕まる。

すると、一瞬の間の後に激しく揺れ大きな爆音を掻き鳴らしながら、白い狐の近くへ突っ込んだ。


「あ、ファーストアタック失敗。本体行っちゃったよ。」

「Heyheyheyノーコン野郎、バッターにぶつけるのは止めてやれよ。おはじきの方狙わなきゃ。」

「野郎じゃないですー、アタシ女の子ですー。」


と、遠くから人力ロケットマンことアッシュがこちらを煽る声を聞きながら空から落ちた大量のおはじきと、此方から一番遠くのおはじきに陣取り飛んできたロケット花火を、尻尾で弾き落とした白い狐を見る。


「さぁ、おいで。一緒に遊んであげる。」

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