九十九神社と願い事
本文が短いのが気になる
「はい、やって来ました九十九神社~♪ 飛竜便から降り立った私たちを迎えてくれたのは狛犬のこまちゃんとシーサーです。アプデ後数日も経っていないのに、もう既にイタズラでシーサー化しています。あ、でも今日のは結構狛犬の面影残ってますねこれ、きっと彫刻スキル初めたてで練習台にされたんでしょう。可哀想なので壊してリスポンさせてあげましょう。
さあ、アッシュさん…やっておしまい」
「リポーターみたくしたいなら、もうちょっと周りの描写を入れろよ、石階段を上る度に火が灯る灯籠とか提灯とか、火が灯らない奴にはアイテムだったりモンスターが化けてたりとか、他色々あるだろ。あと、俺はああいう努力の結晶みたいなのは好きだぞ」
「ちょっとちょっとー、細かい男は嫌われるぞー。描写って言ったって、階段登れば肝試し出来そうな古い神社があるだけじゃん。」
と飛竜便から降りてそうそう阿呆なやり取りをしてしまったが、九十九神社に到着である。
「で、どうすんだ?道中カットすんのか?」
「う~ん、私たち二人だけだしマップも埋まってるしボス優先でいいかな。 あ、アッシュが埋まってないならアタシはいいよ」
とさっさと階段を上がり始めたカエデの隣に駈け足で追い付きつつ、ボス戦に向けての確認をする。
「いんや、俺の方も終わってる。じゃ、このまま直行か。なぁ、本当に遠距離禁止?通常攻撃だけでも良くね?」
「あーもう、男が一度決まったことにガタガタ言わないの! 二人だけって言っても、火力は申し分無いんだし平気だよへーき。」
最後の抵抗で考えを改めさせようと思ったが、敢えなく失敗。九十九神社の賽銭箱の前に着いてしまった。
「じゃらじゃらー…………………よし!はい、次アッシュだよ」
「いや、待て九十九ゴールド払うだけなのに何手を合わせて願ってんだよ、ここ設定的には物に対する感謝だか神様だとかって場所だから、絶対叶えて貰えないぞ」
「良いのよ、どーせアタシ神様なんて信じてないし雰囲気を楽しむのよ!ふ ん い き! さあ!アッシュもせっかくだから何か祈ってみればいいじゃん!別に聞かないから何願っても…あ、エッチな願い事でいいじゃん、どーせ出会いのない干からびた人生しか送ってないんだし、祈るだけなら無料だよ!」
「余計なお世話だ。 ったく、はいはいやります、やりますよ。」
と、カエデにせっつかれるままに九十九ゴールドを投入して適当に、だけど少しだけ真剣に願ってみた。
(なあ、神様。居るのなら答えてくれ、このゲームが終わるまでに俺はどうしたいのか、こいつ…カエデとはどうなっていくのか)
答えなんて期待してはいけない。でも、いつまでも先伸ばしに出来ない事情が出来てしまったことで、少しずつ俺たちの関係も変わっていく音が俺にははっきりと聞こえている。