少し短いプロローグ
20XX年、VR技術の研究が進み日本で初めて現実と大差の無い完璧な仮想現実空間(以下VR)が完成した。この空間の中では、現実世界での現象は勿論のこと、その先の未来の領域迄完全に予測出来てしまうものだった。次の年には、東京都を覆うようにVR化に成功し、この翌年にはVR空間は日本全土にまで広がり、そこから10年の時を経てVR空間は世界を覆った。
更に、この間も技術は進歩した。VR空間は使用用途によって作れるようになり、土台となる初めに作られたVRの上にどんどん層の様に積み重ねて行く様を見て、とある研究者はこう言ったと言う、「まるでもう一つ地球があるかのようだ」と。
さて、所変わって2127年の夏真っ盛りの商店街の中、様々な看板が置いてある場所に、如何にも異世界に通じていそうな赤い穴がある。中を覗けば色々な映像が混ざりあっているのか、人と悪魔が合体したようなものが見えた。これを触ればきっと俺の知らない何処かに…
「んなもんあるわけないだろ、阿呆らし」
と、自分で自分にツッコミを入れつつ 異世界の穴 ではなくバーチャル空間の中でテクスチャ同士がぶつかり合うことによって出来たバグにペタリ、と【バグバスター24】とロゴの入った作業着服を着た青年が除去プログラムシールを貼る。
「最初はこのバグも、格好よかったけど見慣れたら飽きるわ。つか、今日多くね?早く帰ってTMの続きやりてー。」
真っ黒で耳が隠れる位の髪、前髪はおでこが僅かに見える程度で、肌は病的な迄に白い。手に持ったチェックボードに書かれたこのエリアの地図と、使用したプログラムを睨み付けるように、書き連ねるこの青年の名は、阿倍野 勇、これから始まる物語に関わっていく人物であr…
ピロリロリン♪
「何だ?お知らせ?…お、噂をすればTMからじゃん……。は?3ヶ月後の五周年イベントが終わったら、サービス終了だとぉ!?」
バグ除去の為に一時的に閉鎖されたバーチャル空間の一角で、青年の悲鳴が響いた
…一つ訂正しよう、この物語は阿倍野 勇 にとっては始まりではなく、彼が生きるもう一つの世界の終わりの物語である