青春→始まり。
6/16(火)
ハロー、ハロー、ハロー。今日から日記をつけることにしたんだ。最近頭痛が酷くてね、ふとした拍子に記憶を失くしてもこの日記を見れば思い出せるってわけさ。
もっとも、酷いのは頭痛だけじゃないんだ。幻覚や幻聴もあって、そのせいで僕がおかしくなってしまったら…まあ、どうしようもないね。そうならないように、耐えてみせるさ。
さて、今日は吉野さんと一緒にお弁当を食べたよ。ああ、吉野さんは同じクラスの女の子だ。忘れた時のために、書いておかないとね。放課後はすぐ部活に向かったよ。テニス部だ。吉野さんは合唱部だけどね。で、これは重要なことなんだけど。僕はテニス部で一人の男子生徒から苛めを受けているんだよ。ストレスの捌け口にされているわけだね。面倒なことに、そいつは外面が良くて人望があるから僕のような日陰者が何を言ったってどうにもならないんだ。それに、傷が見えるような場所を殴ったりは絶対にしない。まあ、よくある話なんだけどね。部活の後は、吉野さんと一緒に帰ったよ。
とりあえず、今日はこんなところかな。明日からも忘れないようにしないと。
*
私には好きな人がいる。同じクラスの高木充くんだ。高木くんはテニス部で、人懐こい笑顔が魅力的な男の子。今まで好きになった人もそれなりにかっこよかったけど、彼を見てしまったらもうその人たちのことなんか考えられない。
昼休み、高木くんと一緒にお弁当を食べた。彼のお弁当箱の中身を見て、やっぱり男の子なんだって思っちゃった。高木くんはお弁当を自分で作っているらしい。すごいなあ…。私はお母さんに作ってもらってるのに。
放課後になると、高木くんは部活に向かう。私はなんで合唱部なんかに入ったのかと後悔してしまう。テニス部に入れば、高木くんと一緒に部活ができたのに…。でも、部活の後は彼と一緒に帰った。ちょっと疲れてる感じだったけど、テニス部も大変なのかな?
6/17(水)
ハロー、日記帳。
今日は吉野さんとお弁当のおかずを交換したよ。吉野さんのは卵焼きで、渡したのは唐揚げだ。吉野さんは美味しそうに食べていたよ。その後、午後の授業で難しい問題に答えて吉野さんから熱っぽい視線を受けていたね。
放課後、部活ではボールが肩に当たって怪我をしたよ。大きなものではなかったけど、肩が腫れて友達に心配されていた。
その後、今日は怪我をした肩をラケットで何度も殴られたね。たぶん、骨は折れてるんじゃないかな?肩は物理的に壊されそうだし、頭は頭痛で割れるように痛いしで大変だったな。肩を抑えて歩いていたら、吉野さんに心配されていたよ。
今日はここまでだ。肩が痛くてね、正直もうペンを持つのも辛いよ。
*
高木くんとお弁当のおかずを交換した。私があげた卵焼きは私が頑張って作ってみたもの。おいしいと言って笑いかけてくれる高木くんは、やっぱりかっこよかった。彼にもらった唐揚げは、私にはちょっと大きかった。でも、高木くんのものというだけでとっても美味しかった。
午後の授業で、高木くんはちょっと意地悪な問題にも難なく正解していた。すごいなぁ…。今度勉強を教えてもらおうかな?
放課後、高木くんは肩を抑えて歩いていた。部活で怪我をしたらしい。彼は大丈夫だと笑っていたけど…。痛そうだったし、やっぱり心配。何かできることはないかな…?そうだ、高木くんにお弁当を作ってあげよう。あの肩じゃ、自分で作ることは難しそうだし。うん、ちょっと頑張ってみようかな。
6/18(木)
ボンソワール、日記帳。
今日は吉野さんがお弁当を作ってきたね。肩を痛めて自分で作れなかったから、ありがたかったと思うよ。中身は、いかにも女の子のお弁当というかわいらしいものだったね。ウインナーがタコの形をしていたのが印象的だったよ。吉野さんは、これから毎日お弁当を作ってくれるらしい。朝長く寝ることができるね。
放課後、肩の怪我のせいで部活を休んだよ。吉野さんも理由をつけて合唱部を休んだようで、今日も一緒に帰ったね。おかげで、今日は暴行を受けなかったね。復帰した時に何をされるかはわからないけど。
ああ、まだ肩が痛む。それに、この日記をつけ始めた頃からかな?頭痛が日増しに激しくなっていくんだ。幻覚や幻聴も増えているしね。
早いところゆっくり休みたいけど、先にこっちを片付けなくちゃね。
*
作ったお弁当を高木くんに渡すと、驚かれたけどすぐに笑顔でお礼を言ってくれた。肩を怪我しているのに食べられるか不安だったけど、そこまで酷い怪我じゃないんだって。でも、やっぱりまだ痛そうだったけど…。お弁当はおいしいと言ってくれた。これから毎日作ってもいいか聞いてみたら、助かるって。眩しい笑顔でそう言ってくれた。頑張らないと!
放課後、高木くんは怪我が治るまで部活を休むことにしたらしい。私も、適当に理由をつけて部活を休んだ。やっぱり、怪我してるんだから誰かがそばにいてあげなくちゃね。
今日、高木くんはちょっと疲れてたみたい。怪我のせいだけじゃないようにも見えるけど…。私が支えてあげられるといいな。今度、高木くんを遊びに誘ってみようかな?
6/19(金)
頭痛が酷い。昨日より激しくなっている、それがはっきりとわかる。このままだと、僕はあまり保たないかもしれない。早めに決着をつけないと。
さて、グーテンアーベント日記帳。
今日も吉野さんの作ったお弁当を食べたよ。今日はハンバーグが入っていたね。そして、明日遊びに誘われた。まあ、これは行かなきゃね。僕は楽しめそうにないけど。
放課後、今日も部活を休んだ。吉野さんもだね。他愛もない話をしながら、二人で電車に揺られていたよ。
あと、これは今気付いたんだけど。なぜかは知らないけど、この日記をつけている間は頭痛が和らぐし、幻覚も見ないんだ。まあ、和らいでも頭痛はあるし、幻聴も聞こえるんだけどね。これのせいでまともに寝れてないし、最近は日記をつけている間が一番の安らぎかな。肩は痛むけどね。
*
今日も高木くんにお弁当を作った。私の自信作のハンバーグを、彼は美味しそうに食べてくれた。
今日も部活を休んだ。二人で電車に乗っている時、好きな芸能人の話なんかをした。二人とも同じ歌手が好きで、明日一緒に新曲のCDを買いに行くことにした。
休日を一緒に過ごせることになってドキドキする。やっぱり私は高木くんが好きなんだって、改めて思う。これからもずっと高木くんと過ごしていけたら、どんなに素敵なことだろう。明日、楽しんでくれるといいなぁ…。
6/20(土) 朝5:25
頭が痛い。うるさい、喚くな。お前は誰だ?僕は誰だ?僕は
思い出した。
ブエナスディアス、日記帳。
そうだね、今日は朝なんだ。ちゃんと夜にも書くつもりだけど、もしかするとできないかもしれないからね。
ところで、愛ってなんだと思う?うん、まあ、突然だよね。でも受け止めてくれ、日記帳。今日出掛ける前に、どうしても書いておかなくちゃいけないんだ。
僕はね、日記帳。愛っていうのは、つまり肯定だと思うんだ。君がどう思っているかはわからないけど。自分を受け入れて、理解してくれる。それが愛だと、僕は思うよ。
じゃあ、僕はそろそろ行くよ。いい加減、決着をつけなきゃね。僕がちゃんと帰ってこられるように、待っていてくれるかい?
行ってきます。愛してるぜ、日記帳。
6 20 土 N 8
やったもう
あた まいたくない
みえないきこえない
ぼくもう
すくわ
にっき
*
昨日は楽しかったなぁ…。そういえば、駅のホームで誰かが電車に轢かれたとニュースでやっていた。ちょうど高木くんと別れた駅だけど…。まさか、そんなことないよね。
6/21(日)
おはよう、日記帳。もう昼だけど。
久しぶりによく眠れたよ。身体中がすっきりしている。
幻覚も幻聴も、頭痛ももうない。世界が明るい。僕は、ちゃんとできたんだな。
そういえば、朝のニュースで見たけど。まだ死体の身元は特定されてないし、誰かが突き落としたってこともわかってないみたいだ。案外、どうにかなるもんだね。
高木が死んで、やっと僕の高校生活が始まるんだ。日記帳、君と一緒にね。吉野さんは可哀想だと思うけど、まあ僕には関係ないか。
そんなことより、日記帳。今日は一緒にどこかへ行かないか?昨日と違って、今日はちゃんと僕の用事だ。思えば、自分の自由に一日過ごすなんていつぶりだろう。
おっといけない、また話がそれちゃったね。とにかく行こうぜ、空がこんなにも綺麗なんだ。ピクニックとかどうかな?過ぎたことは忘れて、今を楽しく生きていこう。
人生はまだ始まったばかりなんだから、さ。




