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魔王と竜王  作者: ナウ
一章・アンデッド戦争
9/84

【ルーアクシウム防衛戦】

それは夜明け前、まだ辺りが闇に包まれている頃に訪れた。


カーーン!! カーーン!! カーーン!!


ルーアクシウムの里中に鳴り響く敵襲来の鐘の音。


里中の者も城郭にいる者達も一斉に起きる。


アルンも飛び起きた。

横では妻のミモネも起きる。


「・・とうとう来たわね」


「そうだね・・・」


二人は短い会話をしながら素早く着替える。


アルンが着替え終わらない内にミモネは着替え終わり必要な物が入った荷物を手に取った。


エルフの女王の指示で、有事の際に備えて必要な荷物は纏めいつでも持って出られるように準備はしている。


「アルン、気をつけて」


着替え終わったアルンの首に腕を回し軽めのキスをするミモネ。


「ミモネもね」


少しの間見つめ合った二人だが、体を離しミモネは玄関に早足で向かい家から出て行った。


女子供は魔王軍が攻めてきた場合、城に避難するように指示が出されている。

ルーアクシウムの城ではルービアンカからの避難してきた女性達が仮住まいとして住んでいるが、魔王軍侵攻時はルーアクシウムの子供や女性も城に避難し場合によっては掘りに架かる跳ね橋を上げ籠城戦に突入する事になる。


ルーアクシウムは城壁型である。

里に侵入しようとする敵を防ぎ、敵が侵入したきた場合は城下の里を戦場にして戦わなければならない。

女性達が籠もる城に決して近づかせてはならないのだ。



アルンは詰め所に行き点呼を受け武具を貰う

弓と矢と矢を入れる矢筒とショートソードを受け取り、皮鎧を着て指定されている配置場所に行く。

事前に何度も訓練を受けているので特に問題もなくスムーズに配置場所に着いた。

違いがあるとすれば訓練か実戦かの違いか。


とりあえずアルンの仕事は里を取り囲む壁の胸壁で狭間から眼下の敵を弓で射ることだ。


「・・・・・」


いまだ夜明けではなく闇が支配している中、遠くから多くの赤い火の色が見える。


「あれが魔王軍か・・・」


まだまだ遠い。

多分このルーアクシウムの門に辿り着くにはまだ小一時間は

かかるだろう。


ふぅー・・・と息を吐く。


「まだまだ遠いが結構な数だな、あれは・・・」


隣で同じように見ていたエルフが声を出す。


「火が必要・・・て事はスケルトンじゃないな

スケルトンの進軍に火は必要ないしな

ま、骸骨たちも中には含まれているかも知れないが」


その言葉を聞いてアルンは呟いているエルフに話しかけた。


「スケルトンじゃないんですか?」


「・・・かも知れないというだけだ

スケルトンであっても別の理由で松明を使っているのかも知れないしな」


「・・・もしかしてルービアンカの方ですか?」


「ああ、情けない話だが」


「・・・いえ、かなりの激戦だったと聞いています

相当な人数が戦死なさったとか」


「落とされたら意味はないさ・・・

だからここは守り通さなければならないんだ、何としてでもな」


「ですね・・・私はアルンです、あなたは?」


「俺はガルボだ、昨日この里に来たばかりなんだが・・・運がないな

いや、運がいいのか

魔王軍にやり返せるチャンスがこんなに早く来るとはね」


にやっと笑いガルボはまた遠くを見た。


「あれ?」


アルンはそんなガルボの足元に布を巻きつけたかなり長い板のような物が立てかけてある事に気づく。


何だろうか?・・と思いながらも魔王軍の動きの方が気になって仕方が無く、それどころではないから気にしない事にした。


やがて空はやや明るくなり始め、魔王軍が眼前まで迫る頃には空は完全に明るくなっていた。





「こりゃ凄いな、何だアイツら・・・」


眼下に広がる光景は息を飲む程の威圧感があった。

ルーアクシウムから少し離れて魔王軍が布陣。

ワグーのスケルトン軍団3000骨

ドルチェが雇った傭兵部隊3000人

リシープの軍に組み込まれたデュラハン300騎

バルフィアの半吸血鬼の僕達300体

ゴドウィンの戦闘用フレッシュゴーレム100体

ナーガイアのレイス部隊1300霊

総勢8000の軍がルーアクシウムの目と鼻の先にいる。

勿論これは現在エルフ界に来ている魔王軍の総数ではない。

本軍とも言える部隊はルービアンカに待機している。


スケルトンすら見た事がないアルンは骸骨の姿を見ただけで恐怖した。


「デカいのがいるな、あれは巨人って奴か?」


ガルボの目に留まったのは巨大な図体の戦闘用フレッシュゴーレムだ。

筋肉隆々の身長5メートルある一つ目の怪物である。


「・・・勝てるでしょうか?」


想像を絶する魔物達にアルンは弱音を吐く。


「・・・どうかな?

伝説の首なし騎士とやらも集団でいるみたいだしな」


「死を予言する死神・・・ですよね?」


「ああ、ただ一つ言える事は奴らだって無敵じゃないって事だ」


その時備えの号令が響き渡り、矢を弦につがえる。



魔王軍からの降服勧告はあった。

女たちを全て渡せば命は助けてやるとか何とか。

ルーアクシウムの里の長は一笑に付し勧告書を突っ返した。

降服する必要性などそもそもない。

ルーエルシオンから来るエルフ本軍が到着すれば魔王軍は殲滅されるのだから。

そうは言うモノの実際の所、エルフ本軍が来るまで持ちこたえなくてはならない。

問題はそこである。


「降伏勧告云々なんて・・・奴らも焦っているって事だな」


ガルボの言葉にアルンが聞く


「ですか?」


「ああ、戦闘になれば長期戦も視野に入ってくるからな

だから降伏しろなんて言ってくる」


「ああ・・・ですね」


「まぁ、エルフが降伏なんて有り得ないけどな」


「勝てますよね?」


「当然だ!!」


あたり一面にラッパの音が響き渡り構えの合図が飛ぶ

弓兵隊は一斉に弦を引き構える。


ヴオォォォォォォォォーーーーーーー!!


大地を震わすような咆哮が轟き魔王軍の一陣が一斉に動き出す。


「うるさいな、さっさときやがれ」


狙いを定めながらガルボは呟きハッとなる。

元々悪いのは自覚しているが、最近俺口が更に悪くなっているんじゃないか?・・・と思う。


そうこう考えている間に敵は門近くまで突進してきた。

主にスケルトンと人間みたいな奴らだ。


「放て!!」


号令と共に一斉に矢を放つ。

放たれた数百本の矢は魔王軍の兵士達を貫く。


「・・・やはりスケルトンには効果が薄いな」


人間タイプの兵は矢を受けて倒れるがスケルトンには大して効いていない。

頭部を完全に破壊されたスケルトンだけが倒れたが、他のスケルトンは歩みを止めない。


二射目、三射目の矢を撃つ。

ガルボの矢は人間兵に当たり、アルンの矢は骸骨の頭部に命中する。


「やるな!!」


「馴れてきました、意外と楽です!!」


ガルボの言葉にアルンが答える。


「骸骨どもの先頭がもうじき門に着くな・・・ん?」


ガルボは妙な違和感を感じ目を下から上に上げる。

上空の空の一角が黒い。


「何だあれは・・・」


その黒いモノは変な動きでこちらに近づいてくる。


「・・・・・・」


ガルボは目をこらす。


その黒いモノはルーアクシウムの上空に差し掛かり急下降してきた。


「鳥だ!!、上から来たぞ!!」


ガルボの大声に弓兵は一斉に上を見て弓を構える。


迫ってくるのは巨大なカラスである。

一羽や二羽ではない。

何百羽というカラスが空中から襲いかかってきた。


ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン

数十本の矢が放たれカラスに命中する。

しかしカラスの勢いは止まらない。


更に矢を放ち矢を受けたカラスは別の場所に次々と落ちていくが、それでも勢いは止まらず突っ込んでくる。


「!!」


弓を盾にエルフ達は咄嗟に身構えた。


と。


ドババババッッッッ!!


大ガラスのクチバシと爪が弓兵隊を襲う。


弓兵は再び弓を構えるが四方八方から襲いかかる大ガラスに対応できない。


「アルン、剣だ、剣で戦え!!」


倒れた所を大ガラスにのしかかられ必死にカラスの首根っこを掴んでクチバシの攻撃を防いでいたアルンにガルボが叫ぴ、アルンを襲っていたカラスに蹴りを入れる。


カラスはたまらずアルンから離れた。


急いで起き上がったアルンはショートソードを抜きカラスの脇腹を刺す。


ギョエエエーーーーカァーーーー!!


一声鳴きカラスは苦しみのたうつ。

アルンは剣を構えカラスにトドメの一撃を入れた。


「はぁ・・はぁ・・やっ・・やった・・

が・・・ガルボさんは!?」


アルンがガルボの方を見ると例の長い板で大ガラスをぶっ叩いている所であった。


ドガンッ!!


カァキェェェ-----!!


叩かれた大カラスは地面に叩きつけられ血を出してのた打ち回る。


しゅるしゅるしゅるる・・


急いで巻きつけてある布を解いていくガルボ。


しゅるしゅるしゅるしゅる・・・


厚めに巻いてあった布が解かれていく。

その解かれた布から中の一部が見えだした。


「剣?」


一部からでもそれが剣である事が分かる。


しゅるしゅるしゅるるるる・・・・


やがて全ての布が床に落ち柄に手をかけたガルボはスラアァァァッと鞘から剣を抜き放った。


「長い・・・」


ガルボの持っている剣を見てアルンは目を見張る。


刀身は長い。

1メートル以上ある。

間違いなく大剣に位置する部類の剣だろう。


「カラスは後頭部を狙ってくるぞ、後ろにも気をつけろ」


「はい!!」


ガルボの言葉にアルンは答えガルボに質問する。


「あの・・ガルボさん、その剣・・・」


「ん? ああ・・・両手剣(クレイモア)って言うらしい

ルーネメシスにあった名剣をちょっと拝借してきた」


そういうと襲いかかる大ガラスを一刀の下に斬り倒した。

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