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魔王と竜王  作者: ナウ
一章・アンデッド戦争
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【ハーフエルフシティ】

「あの湖にいたごぶりんってまだいるの?」


シルティアがノートンに聞く。


「・・いや

あの後、大人たちが見に行ったけどもういなかったらしい」


「そうなんだ」


言いながらシルティアはノートンの手に触れ手の甲を優しく撫でる。

二人で居るときは当たり前にシルティアがしてくる事で、最初の時に驚いたノートンが聞くと「触れていると安心するから」という返事が帰ってきた。

手を撫でられる事に最初は戸惑っていたノートンだが、馴れてくるとそれが当たり前になってきて触れられていないと不安を感じるようになってきている。

最近では腕をさすったり、胸をペタペタ触ったりもしてくる。


「うん、洞窟は奥深くまで続いていて

多分どこかと繋がっているんじゃないかってね」


「私達が行ったのは洞窟のホンの入り口だったよね」


「だな、結局探索を諦めて引き返してきたらしいんだけど

父さんは・・・

あ、父さんも一緒に探索に参加して行ったんだけど帰り道に崖から落ちて足を骨折したんだ」


「まぁ・・・」


「その怪我が元で足を悪くしてね

元々温泉好きで各地の温泉巡りをしていたんだけどそれが出来なくなった」


「お父様、お可哀想・・・」


「まぁ、最近は温泉の里であるこのルーネメシスに引っ越してきて温泉を楽しんでいるけどね」


ルーネメシスに来たノートンとシルティアはノートンの父親が住む家に向かった。

ルービアンカ陥落後、ルーネメシスに足が向いたのはノートンの父が住んでいるからという事情があってである。



「しっかし驚いたな、お前が嫁さんを連れてくるとは」


「ぶっ」


ルービアンカ陥落の様子や魔王軍についてひとしきり聞いた父アリントンはシルティアを見ながら冗談混じりに言った。

その言葉にノートンは飲んでいたお茶を吹き出す。


「いや、父さん違うから」


「ん?、違うのか?」


アリントンはニヤニヤしながら言う。


「え?、違うの?」


シルティアもニコニコしながら話に乗って言う。


何なんだ一体・・・と思いながら、シルティアが首から掛けているキラキラ光るカードを見やる。

首から紐で下げているプラスチック製の入れ物に入ったカード。

通行許可証と滞在許可証が一体になったカードだ。

カードの名前欄には【シルティア】という自筆のサインも入っている。


ルーネメシスの里に入る際に里の入出管理している管理者達から身分証明書の提示を求められた。

いつもは必要ないのだが、魔王軍の侵攻に伴いスパイを警戒して里に入ってくる者には厳しく目を光らすようにしているらしい。

あと、ルービアンカで生き残った者を記録する目的もあるようだ。


ノートンもガルボも・・・エルフ族は生まれた時に身分証明書が発行され身に付けているのが普通であり、里に入る際も問題はなかったが、シルティアは当然引っ掛かった。


不法侵入者として取り調べを受けたシルティアは、管理者達と色々話をして自分が竜族であると打ち明けると何人か後ろにいたエルフ達が小声でボソボソと話をした。


「シルティアさん・・・でしたね?」


「はい、そうです」


「・・・・暫くお待ちください」


見張りのエルフ以外が部屋から出て行き暫くして入ってきたエルフにカードを渡された。


森住(ウッド)エルフのエリアならば自由に出入りができる通行許可証と同じく滞在する事を許可する証明書である。


不思議に思いシルティアは管理者に事情を聞いた。


「女王様よりシルティアと名乗る竜族の女性が現れれば発行せよと言われております」


・・・・との返事で納得する。

メリーカさんの心遣いは嬉しいものだ。


「でも、私が来ている事はバレてたのね・・・」


・・・そうした経緯があるカードを見ながらノートンはシルティアに言う。


「ウッドエルフのエリア・・・という事はシティには入れないんだな」


「シティって何?」


シルティアが聞き返す。


「ああ・・・俺たちは通称森に住まう民と呼ばれ分類は「ウッドエルフ」なんだけど、エルフと異種との混血は「ハーフエルフ」と呼ばれていてエルフ界でルーシティと呼ばれる都市をそれぞれの種族毎に建設しているんだ」


「そうなんだ」


「うん」


「ハーフエルフって、具体的にどんなエルフさん達なの?」


ノートンとアリントンは互いに顔を見合わせ何やら複雑な顔をしたがノートンが口を開いた。


「ハーフエルフのシティは大きく分けて4つ

まずシティの中でも最大規模なのはルーヒューマンシティ

エルフと人間との混血だな」


「て事はエルフと人間の混血(ハーフ)が一番多いんだ」


「うん、次がルーリトルシティ

エルフと小人(リトル)との混血だな」


「リトルってな~に?」


「精霊界に小人がいたらしい、遥か昔にね

今は絶滅していないけど、その血を今に受け継いでいるのがリトルエルフなんだ」


「リトルエルフってもしかして小さいエルフなの?」


「だね、ウッドエルフの子供ぐらいの身長しかない

多分140~150cmぐらいか

小人はもっと小さかったらしいけど、エルフの血が優って今の身長ぐらいになったみたいだ」


「ふ~ん、リトルちゃん達見てみたいかも」


「可愛いって評判だけどね男女とも

次はルーアクアシティ

アクアエルフは人魚とエルフの混血だ」


「もしかして泳ぐのが得意?」


「だね、水の中を自由自在に動き回る・・・て感じかな

あとルーアクアシティは水上と水中に分かれていて水の都と呼ばれてもの凄く綺麗なんだ、あれは感動した」


「あれ?、行った事あるんだ?」


「うん、子供の頃にね

最後はルーフェアリーシティ」


「あ、フェアリーとの混血?」


「いや、実は相手の種族はよく分かっていないんだ

精霊界にフェアリーと呼ばれる手のひらに乗る羽の生えた種族にちなんで付けられた名前だけどね」


「羽があるの?」


「身長はウッドエルフよりやや低いだけだけど

最大の特徴は極彩色の羽を持つ事だね

あれで華麗に空を舞う姿は天使や天女とまで呼ぶ者もいる」


「へ~、空飛ぶエルフさん達は凄いね

もしかしてウッドエルフさん達が一番地味なんじゃ・・」


「うぐ・・・

いやいや、元はウッドエルフから始まってるから」


ノートンが言葉に詰まっている横でアリントンが口を開く


「面白いのは各ハーフエルフの起源話はどれもが男のエルフと異種の女性の恋愛から始まっている事だ

そしてどれもが女性からの誘いから始まっている事

フェアリーエルフの伝承でもエルフの青年と空から来た乙女の話が伝わっているしな」


「そうなんですか!?」


「ああ、逆に聞かないのはエルフの女性と異種との恋愛話だな

まぁ、そういう民族性なんだろう」


「そうなんですか

でも色んなエルフさんがいて良いですねぇ」


「もっともシティが出来たのは最近だけどね」


お茶を飲んでいたノートンが言う。


「そうなんだ、その前は?」


「フェアリーエルフもリトルエルフも精霊界の土着の民としてウッドエルフ界は関与していなかったし村が点在するだけで一体感は無かった

アクアエルフは当時シーエルフと呼ばれていて

人魚界と離れ海辺の民として精霊界の片隅で細々と暮らしていた

ヒューマンエルフは人間界で差別や迫害を受けていたと聞いた

当時のエルフ界は異種との混血達はエルフ界への入国を禁じていたためハーフエルフ達はそれ以外の場所で暮らしていたんだ

緩和になったのは先々代の女王の時代

エルフ界の一角を解放しそれぞれに土地を与えたんだ

もちろん女王の気まぐれではなくて、色々なエルフが色々な活動や訴えを行った結果なんだけど」


「詳しいのね、ノートン」


「ん・・・まあね

それでも規制はかなりあった

ハーフエルフはウッドエルフのエリアに入ってはならないとか、何かあってもウッドエルフ界は関与しないとか」


「ふむふむ」


「そういった規制を更に緩和されたのは先代の女王なんだ

許可証があればシティからウッドエルフエリアにも入れるようになったし、女王の庇護下にハーフエルフも加わり色々と恩恵にも預かれるようになった」


「それは良かったわね」


「今の女王様は流れを汲んでエルフとハーフエルフの恋愛も自由にしようと動いておられる

・・・まぁ、流石に抵抗するエルフが多くて実現していないけどね」


「抵抗あるんだ?」


「あるなぁ、やはり大人達が圧倒的に多い

そして女性達もね」


「ほほぉ」


「ま、その話はこれで終わり」


ノートンは父アリントンの顔を見た。

アリントンも頷く。


「あ・・・これは聞いていいのかどうか分からないけれど」


「ん?、何?」


「ダークエルフって聞いた事あるんだけれど

その人たちはエルフ界にいるのかな~て」


「ああ、いるよ

ただし彼らは女王様の傘下にはいない

エルフ界の僻地の土地に国を作っているんだ」



ダークエルフはエルフと魔族との混血である。

起源はやはりエルフの青年とデーモン族の女性との恋愛話・・・もとい略奪愛から始まったとされる。

彼らは僻地を新天地とし同じようにエルフと魔族の混血として生まれた人々を引きつけ、やがて一つの国を形成していく。

『ルーダークエピア』

それがその国の名前でありエルフ界とは歴史的に幾度となく争ってきた敵の国だ。



「う~ん、なるほど面白かったです

参考になりました」


ペコリと頭を下げるセルティア。


「ふむ、可愛らしい娘さんだな

やはりお前の嫁に欲しいな」


アリントンがニヤリとしてノートンに言う。

ノートンは何も言わず苦笑いした。

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