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魔王と竜王  作者: ナウ
一章・アンデッド戦争
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【魔王と最後の軍団長】

魔界。

エルフが住む精霊界でも人間が住む人間界とも違う世界である。

この魔界には様々な種類の生物がいる。

その中に魔族と呼ばれる存在がいて、その王は魔界の半分近くを支配していた。

その存在を魔族も精霊も人間もこう呼んだ。

魔王と。



「魔王様、お二人を連れて参りました」


「うむ」


玉座に座った魔王はジーナと警備兵に連れてこられた二人の少年を見た。

その少年達は人間の国の一つであるエウンジークの王子達である。


長男ヘンリー 14歳

次男ノルマー 13歳


数年前、エウンジークは魔王の攻撃を受け滅びた。

王はその時の戦いで戦死。

王妃は自害した。


だが息子たちの姿はなく、王が事前に少数の兵を付けて王子達をエウンジークから脱出させていた。

魔王は数年かけて王子達を探し出し捕まえ、この魔王の城に連れてきたのだ。


「うふふ、可愛らしいわね」


そう言うジーナに長男ヘンリーは睨む。


「あらあら、恐い怖い」


魔王はジーナのやり取りを見ながら2人に話しかける。


「よく来た

お前たちを魔界まで連れてきたのは話があるからだ

本来ならば王の直系の者は首を刎ねて終わりなのだがな」


魔王の言葉にヘンリーは言い返す。


「ならば首を刎ねればいいだろ!」


「ん・・まぁ、待て

エウンジークの戦いでお前たちの父であるエウンジーク王の戦いぶりが余りに素晴らしかったと評判でな

正に勇猛果敢、大軍を相手に怯む事なく戦い我が魔王の兵を多く薙ぎ倒したと聞く

敵ながら天晴れだったと

多勢に無勢で王は倒れたが、その息子たちが気になったので

探していたのだ」


ヘンリーとノルマーはよく分からないまま魔王の言葉を聞いていた。


「つまり・・だ

単刀直入に言えば、私の部下にならぬか?・・という事だ

父親が勇猛だとて子供が勇猛とは限らん

・・・が、その血を引いているならば可能性はあるだろう」


「部下・・・!?、お前の部下になれと言うのか!?」


ヘンリーが突っかかる。


「そうだ、私は勇敢な部下が欲しくてな」


魔王の言葉にヘンリーはノルマーの顔を見る。

ノルマーは首を横に振った。

それはヘンリーも同じことだ。


「断る!!、俺達はお前の部下にはならない」


「ほう、ならなければあるのは死だぞ」


「構わない、お前の部下になるぐらいなら死んだ方がマシだ!!」


ヘンリーは魔王を睨みつける。


「ほほぅ・・では、そちらの弟の方はどうだ?」


魔王はノルマーの方を見て問う。


「ぼ・・・僕も同じだ!!

あ・・・アナタの仲間になんてならない!!」


魔王は「ほぅ」と感心する。


「流石は評判高いエウンジーク王・・・その息子たちだ

気骨がある、それ故に惜しい

だが、本人達の意志をねじ曲げるのも何だ」


魔王は顎に指を当て目を細める。


「ならば望み通り明日の朝に処刑してやろう、それでもよいな?」


ヘンリーとノルマーは頷く。


「ふふふ、ふははは・・良い良い

では明日の朝に処刑を執り行うように手配せよ」


「はい、畏まりました」


魔王の言葉にジーナが答える。


「最後に・・・だ、本当に私の部下になる気はないのだな?」


「ない、俺たちはエウンジークの王子だ!!」


「分かった・・・、連れていけ」


魔王の言葉に兵士達が王子を連れて魔王の間から出て行った。


「・・・・・・」


魔王は少し考えジーナに尋ねる。


「ミーシュとディルーは城に居るか?」


「え~と、はい

居るはずですけれども?」


「やつらを王子たちに充ててやれ」


「・・・え!?、宜しいんですか?」


ジーナは目をパチクリさせる。


ミーシュとディルー

去年から魔王のハーレム入りをし城に登城している。

美しくあるのは当然だが、その最大の武器は若さである。


「流石にやつらより若い女はいないからな」


「それでも王子ちゃんたちにしてみれば年上の女ですわね」


「あの世への土産話によかろう」


「・・・畏まりました」


言いながらジーナは別件を思い出す。


「それはそうと魔王様」


「ん?、何だ」


「オークが騒いでいますわ、労働分の報酬を寄越せ~と」


「ちっ、役に立たんゴミどもが・・・」


「エルフ界にリシープが赴いてますから、まだオークは活躍するかも知れません・・ゾンビとして」


ジーナの言葉に魔王は暫く考え口を開く。


「ダークデントにいる人間の女達を与えよ」


ダークデントとは旧エウンジークの地でエウンジーク崩壊後、人間界侵攻の一大拠点として魔王軍の要塞都市を建造した場所である。

エウンジークにいた女達は根こそぎ魔界に連れていき売り飛ばしたため、エウンジークの地に女達はいなくなった。

当然、ダークデントの魔族達から強い不満が出た。

変わりにアウランズという同じく滅ぼした国の女達をダークデントに移動させる事になったのだ。


「比較的美しくない女達をオークに引き渡せ、それで豚共は納得するだろう」


「畏まりました、ついでにアリスを生んだ女も渡しておいてよいでしょうか?

一応、アウランズの王妃ですから」


「あいつか・・精神に異常をきたした奴などいらん、一緒に引き渡せ」


「はい、それでは失礼致します」


ジーナと警備兵が退出し魔王の間には魔王だけとなった。

玉座にもたれながら魔王は指をこめかみに置く。


エルフ界ではルービアンカを陥落させた。

しかし、エルフの女達は既に逃げ出した後だという。

報告しにきた部下を怒鳴りつつ魔王に湧いた感情はまったく別の感情だった。


「やるな!!、エルフの女王め!!」


そう思ったのだ。


「しかし、戦争は始まったばかりだ

エルフの女王がどう出るか・・・楽しみだ」


そして・・・エルフはエルフでももう一つのエルフ。


「私の味方になるか、それとも敵になるか・・・」


魔王はもう一つのエルフがどうでるかを考えた。







「エルザ!!」


エルザと呼ばれたもう女は男に近づく


バシィッ

近寄ってきたエルザの頬を男は叩いた。


バシィッ バシィッ バシィッ


男の名はゴドウィン。

死体人形使師フレッシュゴーレムマスターであり、遅れてきた最後の軍団長である。


魔王軍の会議の事で苛立っているゴドウィンは力いっぱいエルザの顔を叩いた。

会議にてワグーとゴドウィンの間で意見が分かれ口論になったが最終的にはゴドウィンが折れる形になった。

ゴドウィンの苛立ちの原因はここにある。


叩かれている女は痛がる表情を全く見せず無表情のままよろけながら男に叩かれ続けている。

エルザの年の頃は30歳前半ぐらい。

側に控えているアンナという少女と親子ぐらいの年齢差だ。


いや、事実上エルザとアンナは血のつながった母娘の関係にあった・・生前は。

今は死体となって男の奴隷に成り下がっているが、生きている時は王族として生きていた。

エルザは王であった父の娘として若き頃は王女と呼ばれ、弟が王位を継いだ後は王の姉として王姉殿下と呼ばれていた。

そして由緒ある家の男と結婚し産んだ娘がアンナである。


エウンジークと呼ばれた国の話。

数年前エウンジークは魔王の攻撃に合い滅びの道を辿った。

敵に捕らわれ辱めを受ける事を恐れた王妃ドレッティは落城時に自害して果てた。

本来なら魔王の下に送られる筈だったドレッティだが、死んだとなれば誰も感心は持たない。

ただ一人、このゴドウィンを除いては。


フレッシュゴーレムの研究者であるゴドウィンもエウンジーク攻略において戦闘用フレッシュゴーレムを従えエウンジーク軍と戦い城に攻め込んだ一人である。

そこで見たモノは自害して果てていた王妃ドレッティと王姉エルザの姿である。

死んでいるとはいえその美しさにゴドウィンは感嘆した。


二人とも30代前半ぐらい。

若さによる可愛さや色気とは違う大人の色気のある女達。

二人が死んだ事をその時の魔王軍を指揮していた指揮官に報告し、簡単な検分のあと遺体埋葬を申し出たゴドウィンはドレッティとエルザの死体を仮宿に持ち帰った。

この二人をフレッシュゴーレム化させる事にしたからだ。


フレッシュゴーレムには大別して二つある。

死体を様々に繋ぎ合わせて合成させ動力源である【核】を組み込み動かす方法。

死体にそのまま【核】を埋め込み動かす方法。


【核】といってもただ死体を動かすだけのモノもあれば、簡単な命令を実行させるモノも複雑な命令を実行させるモノも様々である。

ゴドウィンが二人に埋め込んだ【核】は簡単な命令を実行できるモノである。

ただ腐敗を完全に止め、生前と変わらない肉体を維持できる極めて強力なモノだが。


ゾンビも死体が動く事に違いはないが、違いは【核】を埋め込まれた者は腐敗が止まるという事だ。

死後間もなくの死体なら腐敗や硬直が始まる前の状態に戻る

しかしそれは【核】の性能による。

腐敗を少しばかり抑えるだけの抵性能なものから腐敗を完全に防止する高性能なものまで様々だ。


抵性能は比較的安価で手に入るが・・・といってもそれでも一般の魔族では手が出ない金額だが高性能の【核】は作るのに時間が掛かりすぎるし、買うとなると一国の国を買い取るぐらいの金額が必要になる。


ゴドウィンの場合は研究用にマスターから貰っていた一個と、長年かけて自作した一個をエルザとドレッティに組み込んだ。


自作の方は成功するかどうか不安だったが成功しエルザもドレッティも生前の体を持つ腐敗する事のない肉奴隷として蘇った。

肉体は蘇った二人だが魂はそこになく、ただ主人(マスター)の命令を忠実に聞くだけの人形(ゴーレム)であった。


エウンジーク国の二人の王子を捕まえたという一報が伝えられたのはついこの間の事。

それより少し前、王子達を探していた魔族はアンナという娘を違う場所で見つけた。

エルザの娘を探していたゴドウィンは大金を払いアンナを買い取る。

魔王の目的は王子達にありアンナではないのですんなり買えた。


エルザ達を屋敷に連れ帰ったアンナに見せたが、騒がれたため怒ったゴドウィンはアンナを意図せず殺害してしまった。

せっかく大金を出して手に入れたのだから、同じくフレッシュゴーレムとして復活させた。

ただ、その分の【核】を手に入れるのに苦労したが。


ゴドウィンは飽きてエルザを叩くのを止めた。


女を叩くとスカッとする

征服欲を満足させかつストレスも発散する。


ドレスを着て座るドレッティの頭を撫でながらゴドウィンは、この間捕まったというドレッティの子供二人に今のこの女の姿見せてやりたいと思った。

美しい自分のコレクションたる奴隷ゴーレムを。

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