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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・前半
43/84

【部下の処分】

イート国崩壊後、30歳以上の人間は収容所に送られた。

収容所は魔獣の餌としての人間を収容する為に造られた建物で、複数の建物に分かれている。

収容所の近辺には魔獣の収容施設も建てられ、魔獣使士モンスターマスターや一般スタッフ達が魔獣の調教や管理を行い、人間収容所と日々連絡交換を行っていた。


当初人間収容所は男女別に分けて収容するというざっくりとした分け方であったが、収容所統括管理者であるドゴルギンによって男女別だけでなく年代別にも分けられた。


その目的は幾つかある。


一つは高い年齢の順に餌として処理させていくため、最初から分けておいた方が事務的な処理が面倒でなくて済むから。

二つ目は女を確保するためだ。

収容されている者に若い女は居ないが、31~35歳の女達はまだ若い容姿を保っている者達も多い。

どうせ魔獣の餌として死ぬ連中なのだから遠慮はいらないと統括管理ドゴルギンは31~35歳までの女達を新しく建設した第5収容所に収監した。

三つ目は男を拷問したり殴る蹴るの暴行をして遊ぶのに使うためだ。


しかし、ドゴルギンや収容所の各所長達のそうした勝手な判断による宴も終わりの時がきた。




「久し振りだな、ドゴルギン」


ある日、総合管理事務所の建物にやって来た来訪者にドゴルギンは腰を抜かした。


「ガルアーク将軍!!」


それは人間界侵攻の現魔王軍を束ねる将軍ガルアークである。


「いらっしゃると分かっていれば、お迎え致しましたものを!!」


「・・・いや、それには及ばん」


そう言うと、ずいっと事務所内に入ってきたガルアーク。

その後には部下の暗黒騎士達も入ってくる。


その威容に圧倒されながらもドゴルギンはガルアークを客室用の部屋に案内しようとするが、ガルアークに手で制された。


「今日来たのはお前に少し訪ねたい事があるからだ」


「あ、はい

何でございましょうか?」


「収容所・・・とりわけ第5収容所で中々に面白い遊びをしているようだな」


その言葉にドゴルギンはギクリとしたが平静さを装い答えた。


「遊び・・と申されますと・・それは一体・・?」


ガルアークはギロリとドゴルギンを睨みつける。


「ひ!?」


睨みつけられたドゴルギンは目を逸らし冷や汗をかいた。


「ふむ?、とぼけるか?」


「い・・いえいえ、本当に何の事がはさっぱりと・・」


「魔獣の餌用の女達を性的に使っていよう?

裏は取れている、誤魔化しても無駄た」


くぃっとガルアーク将軍は暗黒騎士に上顎で指示を出す。

それを見た暗黒騎士は入り口に待機している暗黒騎士に指示を出した。


ややあって事務所の入り口から暗黒騎士達に引っ立てられた各収容所の所長達が手首に手錠をはめられ入ってくる。


「・・・・・」


それを見てドゴルギンは観念した。


「申し訳ございません!!」


地に頭を擦り付けドゴルギンは土下座する。


「誠に申し訳ございません!!、つい出来心で!!

申し訳ございません!!、何とぞ!!何とぞ!!」


そう必死で喚くドゴルギンにガルアークは静かに喋る。


「申し開きは今来ておられる総督にされるのだな」


「・・・・!」


その将軍の言葉にドゴルギンは凍りついた。


「・・総督が・・ここに?」


強張った面持ちで顔をゆっくりと上げるドゴルギン顔は顔面蒼白になっていた。


コツン・・コツン・・コツン・・


外の石畳をハイヒールで打ちつける音が聞こえてくる。

やがてそれは事務所の前まで来た。

ややあって室内に入ってきた人物を見た事務所のスタッフは息を飲んだ。


「どうでした?、ガルアーク将軍」


入ってきたターリィナに聞かれガルアークは答える。


「はい、ドゴルギンは知らないと申しております」


「・・・!!」


驚愕の表情を浮かべドゴルギンは再び地に頭を付け答えた。


「いえ!!、将軍にも申し上げましたが餌達を使っておりました

申し訳ございません!!、出来心でつい・・・本当に申し訳ございませんでした!!」


必死のドゴルギンを余所にターリィナは近くにあった空いている椅子に腰掛けた。


「将軍もどうぞ?」


言われたガルアークだったがそれは断った。


「さて?」


ターリィナは土下座しているドゴルギンに声をかける。


「顔を上げなさい」


「は!!」


ターリィナの言葉にドゴルギンはゆっくりと顔を上げる。

その視界にはまだ若い女の姿が入ってきた。

しかし女は女でもドゴルギンが此処で好き勝手に使用している下賤な人間の女共とは訳が違う

容姿も血筋も権力も比較にすらならないその女。


「で、第5施設内で女達を使っていた事は認めるのですね?」


「・・・は、はい」


この際、下手に誤魔化さずひたすら謝った方が得策だと踏んだドゴルギンは素直に認めた。


「ふむ?、残念ですね

勝手にそのような事をされては困りますね」


「・・は・・申し訳ございません」


そう言いながらドゴルギンはターリィナの全身を見た。


極めて良質なスタイルと美形の顔立ち。

そしてえもいわれぬ色気が全身から漂っている。

ターリィナと将軍が何か話をしている。

しかし、ドゴルギンの耳はその話を拾っていなかった。

ただボンヤリとターリィナを眺めながらドゴルギンはターリィナの美しさに見とれていた。


ドゴルギンからすればターリィナはまだガキだ

そして偉そうな女だ

しかし容姿も雰囲気も最高だ

何より魔王ゼルギネスの娘であり、魔界の王女としての毛並みの良さと気品を持ち合わせている

以前何度か顔を合わせているが、これ程間近で見たのは初めてだ。

何より最後に見たのは統括管理者の任命時の時だったが、その時よりも更に美しさが増している。



「で、私が聞きたいのは」


そのターリィナの言葉に「はっ」我に帰るドゴルギン。


「は・・・」


「それらによって子を成してしまった女達を証拠隠滅のために魔獣の餌として与えたのは事実ですか?」


「・・いえ・・それは・・」


「それは・・・何です?」


ドゴルギンはそれを認める訳にはいかなかった。

ただでさえ勝手に女を自分達の欲望の為に使用していた事実がバレたのだ。

しかも胎児もろとも処分しているなどと・・しかし・・。


「はい・・事実です・・申し訳ございません」


既にそれがターリィナの口から出ている以上、所長達が口を割っている事は明白。

ここは素直に認めてターリィナの心証を・・。


シュッ・・・


その瞬間、氷の刃がドゴルギンの首を跳ねた。


ドン・・・ゴロゴロ


首は床に転がり首が無くなった胴体も音を立てて倒れる。


「素直に言えば降格処分ぐらいで済むと思いましたか?」


指先から冷水を滴らせながらターリィナは冷笑する。


「ガルアーク将軍、所長達全員を魔界本国に送還させなさい

処分は本国に任せます

あと新しい統括管理者と所長の件は変わらず将軍にお任せ致しますが、今後この様な事にならない人事でお願いします」


「は!!」


ガルアークもまた冷や汗が出ていた。

今回の人事は忙しくて適当だったとはいえ、選んだのが他ならぬガルアークだったからだ。


「宜しくお願い致します」


ぺこりと頭を下げ踵を返して出口から外に出るターリィナ。

左右に整然と並ぶ暗黒騎士達の真ん中を歩く。

そして近くに待機して立っていた銀髪の魔法使いのに話しかけた。


「予定の通りに管理を処刑しました」


「ご苦労様でした」


ターリィナの言葉に銀髪の魔法使いは頭を下げ、待機させている馬車キャリッジに向かって誘導する。


「極めて不快です」


「ご心中察するに余りあります

しかし本当に良かったのですか?」


「・・・何がです?」


銀髪の魔法使いの言葉にターリィナは首を横にしながら聞いた。


「他の一般スタッフ達も今回の事に多数関わっていた様ですが、その者達にお咎めなしというのは・・・」


それを聞いてターリィナはクスリと笑う。


「全てを罰するのはキリがないのですよ

ならば上の者に責任を取らすのが一番良いでしょう」


「は・・しかし、今回管理も所長達も愚かでしたね」


「・・・・・」


その言葉にターリィナは特に何も言わず馬車に乗り込み座席に腰を下ろした。



今回、ドゴルギンが間違った事は一点だけである。

「報告」

その一点。


女達を使うのも男を暴行して楽しむのもターリィナに取っては特に問題はなかった。

問題なのはその報告を怠った事だ

結局、その報告を怠ったために証拠隠滅で胎児を殺す事に繋がった事にターリィナは激怒した。

一応年齢で区分けしたとはいえ、人間の女に魔族の子を生ませるのが目的なのだから30歳以上の女が孕んだ場合も繁殖施設行きに当然なる。

言わば本来の目的を忘れ自己保身に走った事がドゴルギン達の失敗だったのだ。


もっとも30歳以上で明確に餌用として分けた以上、勝手に使った事をターリィナに知られれば何らかの咎があると恐怖したドゴルギン達の思考も分からなくはない。

しかしその隠蔽が死に繋がったのだからドゴルギンは確かに愚かと言わざるを得ない。


しかし死を持って償わせるのは些か重いとも言えなくもない。

実はドゴルギンを殺したのはもう一つ理由がある。

今回の収容所の件はターリィナもガルアーク将軍も気づいていなかった。

だが、ある時要塞に届けられた手紙によって初めて気づいたのだ。

その情報元は・・・。


「赤い戦士」


ターリィナはぎっと奥歯を噛む。


「率いている者達を管理出来ていない無能」


そう赤い戦士に言われ鼻で笑われている気がした。

それが苛立ちになりプライドを傷つけられたターリィナは犠牲を欲したとも言える。

しかし無能達を処分してみた所で自分の中にある苛立ちは収まる事はない。


「思うようにいかないものね・・・」


そう思う。


何にせよ、やはり赤い戦士には負けている・・・とターリィナは暗鬱な気持ちになるのだ。

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