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魔王と竜王  作者: ナウ
一章・アンデッド戦争
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【ルービアンカ攻防戦】

パサパサパサ!!


ワグーの目の前には大量の女の下着が積み上げられた。

それを見ながら呆れた顔でそれを持ってきた骸骨どもを見るワグー。


ワグーはスケルトン軍団の軍団長にして今回の対エルフ魔王軍の第二の軍団長である。

弟子のスケルトン使い200名とスケルトン軍10000を率いて今回の戦争に参加した。


初戦、他の軍団長が揃っていない中スケルトン軍団1000を動かしルービアンカの里に至る森の道でエルフ守備隊と衝突。

スケルトン部隊の200体程がエルフにやられたがエルフ側も結構な犠牲が出たようだ。


一度撤退しスケルトン部隊を再編し直し5000の軍で二回目の攻撃を開始。


エルフ守備隊を蹴散らしルービアンカの里に雪崩れ込んだ骸骨軍団はエルフ隊と激戦を展開。

一進一退の攻防は4日続いたが、ワグーは骸骨動物型スケルトンビーストタイプ2000匹を投入しエルフ隊の半数以上を殺した。

残ったエルフ達は敗走し、ルービアンカは魔王軍の手に落ちた。


しかしだからと言って浮かれてばかりもいられない。

確かにルービアンカの里は陥落させた・・・。

だが、肝心の女達が見当たらない。

どうやら女子供は早々と隣のルーミシュールの里へ避難したらしい。


それでも誰か残っていないかとスケルトンどもに探させると

骸骨どもが持ってきたのはエルフの女達が使っていた下着類であった。


「使えん骨どもだ!!」


ワグーは弟子達に当たり散らす。


「何だというか!!、早すぎるわ!!、エルフどもの動きが!!」


本来ならば逃げ遅れた女達を捕まえて檻の中に放り込んでいる頃である。


「それが1人もいやがらないとは!!

クソッタレの女どもめ!!

そう女はクソッタレだ、今も昔も!!」


そう罵り、下着を蹴飛ばす。


ワグーの人生において女は常に敵だった。

容姿が醜いワグーは若い頃から魔族の女達に忌み嫌われた。

もちろん恋愛などできる訳もなく不満は女達への憎しみによって増幅し、女たちが不幸になる事を願い祈る事を楽しみとする毎日である。


ワグー唯一の力であり骸骨使士スケルトンマスターとして華々しく活躍する筈だった今回の戦い・・・。

確かに活躍はした。

エルフの男どもを殺すという点においては。

しかし本来の目的は果たせていない。

そう、またしても女だ。

女が計画の邪魔をする。


「今回もまた女か!!

許さん!!、絶対に許さん!! 許さんぞ糞女ども!!」


怒りを露わにするワグーの周囲に闇の煙が渦を巻いて立ち上上がった。


ズズズ・・・


その渦は一カ所に集まりスケルトンの形を成す。


「こ・・・これは!!」


ワグーが唸る。


煙は骸骨の容姿を表し実体化した。


「ナーガイア殿!!」


その容貌こそスケルトンと大差ないがそれは法衣を纏い闇のオーラを周囲に迸らす。

その存在は通常のスケルトン兵とは全く違う存在である。


リッチ、そう呼ばれる存在。


最上位の魔法使いだった者が不死と更なる魔力を求め禁呪法を用いて到達した最強の姿だ。


ナーガイアは対エルフ魔王軍第一の軍団長にして全軍の司令官である。

ぽっかり空いた目の部分をワグーに向けナーガイアは地の底から響く声で言葉を発した。


「良クヤッタ、ルービアンカハ落チタ

ダガ、本来ノ目的ハ果タサレテオラヌ」


ナーガイアの言葉にワグーは頷く。


「女ですな、奴らはルーミシュールに逃げたと思われます」


ワグーはナーガイアの言葉に焦りを感じつつ答える。


「フム、魔王ハエルフノ女ヲ所望シテイル

シカモタダノ女ハ当然トシテ上位ノ女モダ」


「上位の女?」


「ソウ、ハイエルフダ」


「ハイエルフですか!!

しかしあれは・・・聖都ルーエルシオンに行かなければいないですぞ!」


「心配スルナ、モウスグ第四・第五・第六ノ軍団ガ到着スル

魔王軍全テガ揃イ次第ルーエルシオンヘ進撃スル

エルフノ財宝ヲ我等ガ手ニスルノダ」


「財宝を奪い男を皆殺しにし、女は奴隷ですな」


「ソウダ」


「実に面白いですな

あの高慢ちきなエルフの女どもの奴隷姿を想像するのは」


そう言ったワグーに横から声が飛ぶ。


「ふふ・・おやおや、ワグー殿は品がありませんね」


「ぬ!!」


ワグーとナーガイアの会話に割って入ってきたその男は髪を掻き上げた。


「誰カト思エバ、バルフェア伯爵カ・・・」


魔王軍第三の軍団長にしてヴァンパイア族の若き当主であるバルフェア伯爵はマントを翻し、靴音を響かせワグーとナーガイアに近づく。


足音は2つ。

バルフェアの横後ろには可愛らしい女の子が付き従っている。


「ルービアンカにいた女達は三方に別れました

ルーミシュール・ルーネメシス・ルーアクシウムの三方に」


バルフェアはナーガイアに今しがた話題になっていた女達の行方を報告した。


「ムウ・・・」


「ほほう、バルフェア殿の軍の諜報活動は素晴らしいですな

カラスと蝙蝠の軍団は」


ワグーの言葉に傍にいた少女の眉がピクリと上がる。


「ははは、主力にはなりませんが中々役には立つモノたちです」


「ルーアクシウムカ、私ノ知識デハ確カエルフガ作ッタ要塞ノ筈・・アレノ攻略ハ容易デハナイゾ」


「はい

遥か昔に起こった戦争で使われた要塞のようですが、補修されながらも今日まで要塞としての機能は失われておらず、攻略は困難を極めると思われます」


「・・・マア良イ

ルービアンカハ落チタ、今夜ハコレデ良イワ

ダガ警戒ヲ怠ルナ

エルフドモハ奪還ニ乗リ出シテ来ルダロウカラナ」


「分かっております、我がスケルトン軍団に抜かりはありません」


ワグーの言葉に頷きナーガイアは消え去った。


「では我々はD地区の方におりますので何かあればご連絡下さい」


そう言うとバルフェアと少女もその場から立ち去る。


「・・・・」


三人がいなくなった後、ワグーは弟子達に指示を与え床に散らばっている下着を両手一杯に持った。


「ワシは疲れた寝る、後は任せたぞ」


「は、はい・・・マスター、お任せ下さい

あ・・・あの、その下着は・・・」


「ん?、これか?

こんな所に散らばしておけんだろ

取りあえずワシが管理しておく」


「は・・・はぁ・・・」


「何だ、その顔は

よいかくれぐれもエルフの急襲には気をつけろ

でないと、矢が額に飛んできて串刺しだぞ!!」


「は・・・はい!!マスター!!」


占領した里の防衛を弟子に任せてワグーは自室にした部屋の扉を閉めた。




D地区に向かう道を歩きながらバルフェア伯爵は少女に声をかける。


「そう怒るな」


伯爵の言葉に少女は微妙な面持ちで答えた。


「お兄様、あのワグーという方は好きになれませんわ

私たちの隊を見下げたあの目と態度は嫌いです」


「ははは、ああいう者もいるという事だ

使いようがあるからナーガイア殿も黙っているのだろう」


「でも許せません」


「ふふ、機嫌を直せ」


少女の耳元に軽く息を吐きかけるバルフェア。


「あ・・・」


少女は体がぞくぞくし力が無くなる。


「お・・・お兄様・・・ダメ・・・」


「さぁ、早く帰らねば朝日が登る

行くぞ、義弟よ」


「はい、お兄様!!」


二人の兄弟は浮き、闇夜の空に舞った。







ルーネメシスの里には温泉がある。


シルティアは温泉に浸かりながらボケーとしていた。

一緒に入りたかったがノートンは恥ずかしいのか一緒には入ってくれなかった。


「んーー、ノートンの裸・・・」


・・・・・


・・・・・


「いけない、いけない」


慌てて変な妄想を消すシルティア。

最近は発情期が入っているせいで変な妄想が膨らんでしまう。

暖かいお湯に浸かりながら目を閉じシルティアはルービアンカからの道中を思い返した。



ルービアンカの森林道で再会したノートンとシルティアはガルボと共にルービアンカの里に撤退した。


そのまま生き残った部隊や里の防衛隊達と共に里内部に侵入してきたスケルトン部隊と交戦し、一時的には押し返した。

だが、スケルトン動物型が現れ戦況は一変する。

動物の姿をした四足歩行のスケルトンの動きは俊敏でかつ噛みつく力も強く凶暴でエルフ側は大苦戦した。

次々と仲間は倒され混戦の中ではぐれたガルボもまた敵に倒されたようだ。

ノートンも殺されかけたが、シルティアが助けルービアンカを脱出した。


脱出したノートンとシルティアは隣の里であるルーネメシスを目指し一路歩く。

歩ている最中、ノートンは泣いた。

ガルボを助けられず仲間を沢山失い、ルービアンカも失ったからだ。


そんなノートンをシルティアは励まし何とかルーネメシスまで辿り着いた。

そこには同じくルービアンカから逃げてきた女性たちがいたり、傷だらけになった兵士達が手当てを受けていた 。


そして何と死んだと思っていたガルボも生きていた。

ガルボもノートンやシルティアは死んだと思っていたらしく、ノートン達の顔を見てびっくりしていた。


手当てを受けながらガルボはこう切り出す。


「やられそうになった時に巨大な生物に助けられた

あれはルービアンカの森林で見た奴だと思う」


「森林って・・まさか」


「そうだ・・信じられるか?、ドラゴンだぞ!!

夢でも見たのかと思ってるだろ?

だが俺が生きているのが何よりの証拠だ!!

俺はドラゴンに助けられたんだ!!」


ノートンとシルティアに早口で熱く語るガルボ。


「とにかく生きていて良かった」


ノートンは嬉しさの余り涙を流しガルボに抱きついた。

そしてシルティアを見る。


シルティアはそんなノートンの姿に安心した表情で微笑んだ。

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