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少し進むとひらけた場所に出た。だがよく目を凝らして見ると奥にトンネルが続いている。だがしかし、パトカーではそこまで行くことができないことは容易にわかる。
これ以上進んでしまうとパトカーは生い茂った草に足を取られ帰ることもままならなくなる。
トンネルにはすぐに向かわず周辺を探索する。懐中電灯を胸ポケットに入れて。
「ここは神社か?」
「そう見たいね。よくある感じじゃない?」
「だが相当古いな。多分村の人もここには大分きていないんだろう。」
「そうね鳥居に蔦が絡まってることだしね。」
「それにしてもこの鳥居随分赤くないか?」
「まるで血みたい。」
「不謹慎だぞ。」
二人は鳥居をくぐり奥へ奥へと進む。
苔の生えた灯篭、雑草の生い茂った賽銭箱、ボロボロの襖。
どれもここが古びた神社ということを表すもので動画を面白半分で撮る若者の探索のようなものになってしまっている。
中に入る。
中には二つのものがあった。
少し作りのおかしい市松人形、それと小さな箱。
箱には消えかかっているがかろうじて読める文字があった。
『供物用』
と書かれている。
「うぇ…この人形少し感触が気持ち悪い。」
熟れすぎた果実を握るような音がした。
「この箱しまっているが別に何もないだろうしな。」
「わかんないわよ?開けてみましょうよ。」
男性警察官が持っていた小さな箱を無理やり奪った。
「あっおい勝手に…」
女性警察官は小さな箱を開けた。
その瞬間異様な腐乱臭が鼻をくすぐった。
強烈な吐き気を誘う。
かろうじて耐えることができたが。中身を見て絶句した。
「なに…これ。」
「これは…ひどいな、『腐った指』と『腐った目』か…」
男性警察官は努めて冷静に言った。だがその声には相当な焦りが感じられる。
『見たな…知ったな…理解したな…』
どこからともなく声が聞こえてきた。その声は録音されたようにノイズかかっていた。
声の主を探すため男性警察官は辺りを見回す。
箱の中にテープレコーダーが入っていた。これは決して『呪い』ではなく殺人だと男性警察官は理解した。
「これは事件だな、さっさと上に報告しよう。」
男性警察官は肩につけていた無線機を手に取った。
「…バケ…」
「どうした?」
「バケモノ…バケモノ…う、う、うぁぁぁぁあ!!!」
突然女性警察官は走り出した。
男性警察官の方を向いて怯えているようだった。
男性警察官は上への報告を諦め彼女を追いかけて走り出した。
(彼はどこに?なんで?ずっとそばにいたはず?なのになんで?なんで?なんで?)
女性警察官はパトカーの方とは逆のトンネルに走っていく。
「お、おい!?戻れ、戻ってこい!?」
「くるなぁぁあ!!バケモノ!!」
「…ッチィ」
なお止まらず走り続ける女性警察官。男性警察官は懐中電灯をつけ追いかける。
「はぁ…はぁ…はぁ…まだ追いかけてくる。こうなったら。」
10分は経っているであろう。全速力で走っていたため息切れをしていた。
腰にかけていた拳銃に手を伸ばす。
「やっと、止まったのか。なにが見え…」
トンネルに重い銃声が響く。
もちろん打ったのは女性警察官。
当たったのは男性警察官の胸。しっかりと心臓辺りにあたっていた。
「…」
男性警察官は膝から崩れ落ちた。血が止まることなく流れる。
擦り傷のような赤黒いものではない。真っ赤な鮮血だった。
(あれ?美味しそう。)
女性警察官は徐に男性警察官だったものに近づく。
(そういえばお腹減った…)
女性警察官は男性警察官の腕を取り食べ始めた。
生々しい音が小さく響く。
それでも構わず女性警察官は黙々と男性警察官の中を貪る。
鈍い音が響いた。
鈍器のようなもので殴られた音だ。
「ぅ…うう…」
「いつのまに…こんなところで寝てたの?」
いつのまにか倒れていた女性警察官は懐中電灯で辺りを照らした。
目の前にはところどころ肉がなくなった男性警察官の死骸があった。
「キャャァァ!?…」
女性警察官は悲鳴をあげた。
走り出して逃げ出そうとするのだが腰が抜けて動かないようだ。
できるのは這いつくばってそこから遠ざかること。
倒れていたためもうすでに方向感覚はなくなってしまっていた。
どこから入ってきたのか…それがわからなかったのだ。
そのため女性警察官はきた方向と逆の方向に進んでいった。
いつしか立ち上がれるようになっていた。
「どうして…」
どのくらい走ったのだろうか…そう思えるくらい永遠とトンネルが続く。
外からの光などなく、ただ懐中電灯の弱い光が頼りとなっていた。
なにかが見える。
目の前に黒い物体が朧げに見えた。
「う…そ…」
吐き気を催す匂い…この匂いは神社の小さい箱の中身よりかはまだ新しい腐乱臭だ。
黒い物体に懐中電灯を向ける。
「………」
女性警察官は絶句した。
それは先程見た彼の…男性警察官の死体だった。
死体だったと言ってもそれはかろうじてわかるものであまり時間が経ってないはずであるのに腐敗し体内のガスで膨張していた。
「…………」
女性警察官はまた走り出した。
今度は元きた方向に…
「…………」
それでもなお彼の死体を見つける。
今度は膨張したガスに耐えきれず皮膚が破れ…体内からドロドロと粘りっこい血が流れていた。
けれど彼女は足を止めず。
「…………」
走れば走るほど彼の死骸を見るペースが速くなる。
脂肪がとろけ出した死体。
腐敗し溶解した死体。
青黒くなった死体。
虫が集って少しずつ質量の減っていく死体。
次第の部分が散乱した死体。もう彼の面影は完全にない。
そして。
骨だけになった彼の死体。
もう女性警察官自体死体を見てもなにも感じなくなっていた。
けれどながら足は止まらず歩を進め続ける。
トンネルにひとつの光が女性警察官の目に差し込む。
それは淡く脆いものであってもひとつの希望となって彼女の進む足は速くなった。
だがしかし、そこにあったのは絶望で逃げ出すことのできないことを彼女は悟った。
「……」
目の前に映るのは裸で抱き合う自分と男性警察官。
お腹の大きくなった自分。
自分と男性警察官に似た辺りを元気に走る何か。
自分を食べる自分。
自分を食べる男性警察官。
男性警察官を食べる男性警察官。
男性警察官を食べる自分。
もはや混沌であった。
「なんなのよ…なんなのよ…」
「これがこの村の真実ですよ、お客様。」
後ろから何人かの足音とともに誰からも答えがもらえないだろうと思っていた問いに対しての回答が返ってきた。
女性警察官は何も言わずに振り向きざまに拳銃を打った。
それは見事命中し一人の人間が倒れる鈍い音がした。
けれどそれは新たな絶望を生む。
倒れ、眉間から血を流しながらなお生きて立ち上がり女性警察官の方に向かってくる。
「この村はあなたの肉で祭囃子を奏でる。いわば捧げものです。そのためたくさんのスペアが必要。」
「そう、なればこそあなたたちを歓迎しこちらに誘導した。」
「あなたはあの箱を開けたことでこの村に魅せられた。」
(な……なんで…手が…)
「あなたたちを招くたびに誰が生贄になるのか変わる。」
「前回は男の方だ。」
「その前も男だ。」
「その前は女だ。その前もその前も。」
(手が動かない。)
「ワレワレ、イキルタメ。カミ、ササゲル。ヒト、イノチ…アナタノイノチイノチイノチイノチイノチイノチイノチイノチ……」
「あなたがここにきて食べた肉はあなた自身の肉。あなたが殺した彼の肉はもうあなたの腹のなか。」
「何度も何度もこれを繰り返している。その中であなたたちも学習する。だんだん貴方達は来なくなった。」
「だからこそ別の手段で読んだ。」
(動いて!?こいつらを撃たなきゃ!!!生きたい。)
「ごめんなさいねぇ……こちらも生きる為なのぉ。」
ジリジリと女性警察官に近づく。
「私たちも貴方の美味しそうな肉を食べたいのよ。」
村人の手には鉈や鍬、斧に包丁。
「いや…いや…ユルシテ …ユルシテ……なにも知らない。なにもわからない。ユルシテユルシテユルシテユルシテユルシテユルシテユルシテユルシテユルシテユルシテユルシテ!!!どうして……ユルシテ…くれないの。」
「はぁ…美味しかった。」
「そうかい……それなら良かったよ。」
「やっぱり辺境な地には珍しくて美味しいものが多いわね。」
「そう言ってもらうと探した甲斐があったよ。」
男性警察官と女性警察官によく似た…いや、全く同じ…おそらくプライベートでデートであろう二人が宿屋に泊まっていた。
「どうぞここを家だと思ってごゆっくりしてください。」
「すみません女将さん。…ここら辺に観光スポットはあります?」
「そうでございますね。…それなら、古い神社がいいでしょう。あそこは風情があって良いですよ。」
「へぇ面白そう。どうやっていくの?」
「よく目立つトンネルの先にございます。」
「ありがとうございます。そこに行ってみることにします。」
「どうぞ楽しんでください。」
女将は不敵に笑った。
これにて終了。
いつかアフターを書くかも知れませんがそれはどうなるかわかりません。
その時はどうぞよろしくお願いします。




