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三話目

 今日は真衣とお出かけだ。

服を買って、カラオケに行く予定だ。

そろそろ私の家に真衣が来てくれるはず。


「綾香ー」


「よし、行こうか」


 並んで歩き出す。

真衣が腕を組んできたけど、最近暑いからほどいた。

訴えるような視線をスルーして、ショッピングモールへ向かう。


 目的のお店に着いた。

広めの店内に客は三人程度しかいなかった。

しかし、私にとってはお店の混み具合はさほど問題ではない。

すいているに越したことはないけど。


「あ、これいいなあ」


「いいね、私そのデザイン好き」


「お客様」


 そら来た。

学校とは違って後ろから飛びついてくる人はいないけど、前から寄ってくる人はいる。

店員だ。

親切心でも利益のためでも、私にとっては良くない。

全く知らない人の分、より近づかれたくない。


「お客様、今日はどのようなものをお探しですか?」


「あ、大丈夫です」


 早めに制する。

見たところそんなに押しが強い人じゃ無さそうだから、これで戻ってくれるだろう。


「まあそう仰らずに。あ、こちらお客様に似合いそうですよ」


 甘かった。

この店はあまりグイグイくる人はいないと思ってたけど。

私と店員の間にすっと入った真衣を見ながら言った。


「あの、試着室はどこですか」


「あちらです」


 何度も来たことはあるから場所は知ってるけど、無言で立ち去るのも悪いと思ったから聞いた。

最初に気になっていた服を持ち、移動した。

案内された試着室に真衣と入る。


「別に外で待っててもいいんだよ」


「近づいてくる人から綾香を守らないと」


「はあ」


 試着室に入ってきたら近づく以前の問題だろう。

まあ今更真衣に下着を見られたところで、恥ずかしいとは思わないけど。

脱いだ服は真衣に持たせて、試着した。

鏡を見る。


「どうかな」


「綾香は何着ても可愛いよ!」


「そういうのいいから」


「うーん、デザインは好みだけどもうちょっと明るい色がいいかな」


「そっか」


 自分の服に着替えて違う色を探すと、明るい水色があった。

店員に目をやりながら、手に取る。

とりあえずこれだけでいいかな。


「真衣は?」


「私もこれにしようかな」


「色も同じだけどいいの?」


「うん! そういえば私たちペアルックってないよね」


「まあ姉妹とかじゃない限りあんまりないんじゃないの」


「じゃあこれを機に増やしていこう!」


 別に増やさなくてもいいけど、少しくらいはあってもいいかな。

真衣とおそろいの服を持って、一緒にレジに向かった。


 昼食はフードコートで適当に食べたあと、適当なお店を見て回る。

手持ちから服代とカラオケ代を引くとあまり残ってないけど、真衣と見て回るだけでも楽しい。

あるお店で可愛いブレスレットを見つけたから、真衣と一つずつ、おそろいで買うことにした。

安っぽい、実際に安いものだが、にこにこしながら腕を見る真衣を見て、私も思わず微笑んだ。


 あまり時間をとるとカラオケで歌えなくなるから、一時間くらいでモールを出た。

カラオケ店に行き、受付をして部屋に入る。

飲食物持ち込み可なので、飲み物とお菓子を少し買ってきた。


「まず何から歌う?」


「まあこれかな」


 一番歌いなれてる曲を入れた。

すぐに始まったから、マイクを持って立ち上がる。


「いえーい!」


「うるさい」


 真衣がタンバリンをしゃんしゃん鳴らしだした。

まあ割りとアップテンポな曲だから、そんなに場違いではないからいいけど。


 一曲歌い終え、のどを潤した。


「ひゅー! 良かったよー!」


「ありがと」


 私の番は終わったとソファに座ったけど、真衣はそのまま話しかけてきた。


「そういえば、私たち二人でカラオケって初めてじゃない?」


「うーん、そうかも」


 そもそもあまりカラオケには行かない。

中学生の頃は子供だけで行くことはなかったし、高校生になってからは佳那と沙希も一緒にいた。

そうか、二人きりって初めてだったのか。


「変なことしないでね!」


「こんなところでするわけないでしょ」


「それでね、二人で来たらしたいことがあったの」


 真衣はとあるデュエット曲を入れた。

これは真衣と何回か歌ったことがあるし、私も好きな曲だ。

一緒に歌おうとマイクを持つと、取り上げられた。


「はい、歌うよ!」


「ちょ、ちょっと」


 真衣に引き寄せられた。

どうやら、一つのマイクでデュエットしたいみたいだ。


「二人っきりだから一緒に歌ってくれるよね!」


「う、うん……」


 前にもせがまれたことがあるが、あの二人がいたから断ったんだっけ。

マイクに顔を近づけると、真衣も近くなる。

普段なら真衣とこれくらいの距離はなんてことないけど、今かなり恥ずかしい。

なぜだろう。


「ちょっと近すぎじゃない?」


「いやいやこれくらいじゃないと」


 近いというか、もはや頬ずりされている。

長めの前奏が終わったから歌いだしたけど、声が上ずってしまった。

なんとか修正しようとしたけど、時々音が外れてしまう。

そのまま歌い終えた。


「前はもっと上手かったのに」


「だって……」


「よし、もう一回歌うよ!」


「え……」


 のどがかれるまで二人で歌った。

結局、私のマイクは最初以外使わなかった。

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