二話目
「今日のホームルームで修学旅行の班決めをします。五人で一班とします。みなさん考えておいてください。余った時間で見学ルートも決めてもらいます。連絡は以上です」
というのを朝言って、今はホームルーム。
「沙希、一緒に行こう」
「うん、いいよー」
私の少ない友人のうちの一人、落合沙希を班に誘う。
沙希は高校からの友達で、必要以上に近づこうとしないから助かる。
「これで私と真衣と、沙希と……」
「綾香ああああああ」
誰かが後ろから私に向かってくる。
真衣かな……?
はっ!! この気配は!!
ひらりと身をかわすと、誰かは沙希に突っ込んでいき、そのまま倒れこんだ。
「佳那ちゃん、危ないよー」
「もうちょっとだったんだけどな!」
三井佳那も高校からの友達だ。沙希とは逆に、私に積極的に近づいてくる。
ただ近づいてくるならまだしも、全力で飛びかかってくるから怖くてしょうがない。
真衣も飛びかかってくることもあるけど、もっと優しくきてくれる。
「綾香ああああああ」
こんな風に。
「綾香に触れていいのは私だけだからね!」
「くそう、いつか触ってやるぞ!あ、あたしも入れて」
「これで四人か。じゃあ室長の力を見せてあげよう」
このクラスは39人。五人ずつだと、四人の班が一つ出てくる。この四人を私たちにしてしまうのだ。
まあ室長だからと言ってこんなことは横暴だ。
でも幸運なことに全員五人ずつ分かれたから、私たちが四人班になることができた。
真衣を背中につけたまま、修学旅行用のプリントに班員の名前を書いていく。
「あれ、綾香ちゃん班長でいいの?」
「まあ室長やってるしこれくらいなんともないよ」
本当は班長なんかやりたくない。
点呼とかとらなきゃいけないし。
でも、わざわざなったのには理由がある。
「じゃあ行き先決めよう! あたし金閣寺行きたい!」
「どこがいいかなー」
「ちょっと待った!!」
三人を制する。
きょとんとしているのにおかまいなく続ける。
「この班は東大寺や清水寺のような人が多いところには行きません! もっと静かなお寺で、日本の侘びさびを感じられるような修学旅行にします! これは班長命令だ!」
「なっ! そのために班長になったのか!」
その通り、いまさら気がついても遅い。
これで私の理想の修学旅行が
「でも東大寺と清水寺は全員で行くみたいだよー」
なかった。
「ほ、ほら私がいるから大丈夫だよ」
「真衣……」
結局佳奈が行きたいところに行くことになった。
そして修学旅行当日、清水寺。
「音羽の滝だって、行こう!」
「結構並んでるねー」
「わざわざあそこに飲みに行かなくても水しぶきが空気中に拡散して離れた私たちにまでご利益を運んで」
「私が連れて行くよ」
「真衣、離して、あああ…………」
人ごみを避けながら見学して、ようやく宿に着いた。
夕食は豪華なもので、普段の生活ではお目にかからないようなものばかりだった。
お風呂はなるべく人が少ない時間に真衣と入った。
佳奈がいろいろ危ないので沙希に引き止めておいてもらった。
その後はトランプなどで遊んだ。
そして消灯時間になった。
「夜トーーーク!」
「わー!」
「佳奈、もっと静かにしなよ」
私、真衣、沙希、佳奈の順で布団を並べていたが、佳奈が沙希を超えてこっちに来た。
「あたしずっと気になってたんだけどさ、綾香と真衣ってどこまでいってるの?」
「どこまでって……」
「あ、私も気になるー。A? B? もしかしてCとかだったりー?」
「えっとねー」
真衣が考え始めた。
まさか沙希まで乗ってくるとは思ってなかった。
真衣はなんと答えるのか。
まかせて大丈夫かな。
「Zかな!!」
「私たちそんなにいってないよ!」
それはもう殺し合いで興奮するとかそのレベルだろう。
そして私は口が滑ったみたいで、佳奈が目を輝かせた。
「じゃあどこまでいったの!?」
「ご想像にお任せします」
「そっか……Lくらいかな!」
それはもう……なんだろう。
なんて微妙な。
「あ、じゃあ私からも質問ー」
「なに?」
「綾香ちゃんはー、将来真衣ちゃんがいなくなっちゃったらどうするの?」
「将来……」
「そうだぞ! だから将来のために今のうちにあたしと触れ合っ」
「それはさておき」
それはさておき、どうするんだろう。
このままずっと真衣だけといるんだろうか。
とりあえず大学は同じところに行けたらいいね、という話はしたことあるけど、その先は考えたこともなかったなあ。
「大丈夫だよ! 私は綾香を離さないから」
ちょっと考え始めたら、真衣が抱きついてきた。
真衣の体は暖かくて、安心できる。
「そうだね。でも寝るときは離してね」
「はーい」
真衣の体がすっと離れた。
将来のことは考えないでおこう。
もし私が真衣以外に近づかなきゃいけなくなったら、その時はその時だ。
とりあえず、今は真衣だけ。
この後嫌いな先生や明日の予定で盛り上がった。
しばらくして日付も変わりそうになったので、寝ることにした。
佳奈はもう寝ている。
結構寝息を立てていてうるさい。
沙希はどうだろう、目は閉じているみたいだけど。
真衣はまだ眠れないみたいだ。
「明日も早いしもう寝ようよ」
「うーん。何か数えたら寝られるかな」
「羊とか?」
「よし、綾香の毛数える。まずは髪の毛から」
真衣は私の布団に入ってきて、髪の毛を触り始めた。
私は天パだけど大丈夫なのか。
真衣が数えるたびに髪の毛が少し引っ張られて、私が眠れなくなった。
髪の毛って何本くらいあったっけ……。
終わったらどこの毛を数えるつもりなのか。
そのうち引っ張られなくなったので、真衣を見ると寝ていた。
今度は私が真衣の髪を触りながら眠りについた。