第1話 出会い
第1話です。
よろしくお願い致します。
第1話 出会い
俺の名前は吉崎颯斗。
顔は多少かっこいい方で、身長もそこそこ高い。
髪は銀色で学校では不良と恐れられている。別に不良ではないのだけれど。
そんな俺はここ、鶴美町立藤が丘学園でリア充生活を送ろうとする。
しかし、友達や彼女の作り方がわからず孤立してしまう。いわゆるぼっちというやつだ。でも今日でそのぼっち生活ともおさらば。
その理由は2つある。
1つ目は高校2年に進級するからである。1つ目の理由ではおさらばする理由はわからないか。
2つ目は、学校の一大イベントと言っても過言ではない、クラス替えがあるからだ。(個人的な考え)
そんな馬鹿げたことを家の玄関先で考えているのだが、現実は甘くない。
クラス替えをしたからといってリア充になれるとは限らないのだ。
また退屈な日常が始まる。
俺は大きなため息を吐きながら玄関を開け家を出る。
『おにーちゃん待ってよー!一緒に行こうって昨日の夜言ったじゃんかー!もー!』
玄関を閉めたのに大きな声が聞こえてくる。
妹の真衣だ。
渋々ドアを開け、露骨に嫌な顔を真衣に見せる。
『いや、だってお前の学校遠いし…』
『お兄ちゃんが自転車で連れてってくれるって言ったじゃん!あたし嬉しかったから覚えてんの!』
なんだよこの可愛い妹は。したっけ?そんな約束。全く覚えてない。
『それより玲は?まだ寝てんの?』
俺には2人妹がいる。この騒がしくて可愛い妹と、寝坊助で可愛い妹。
両方生まれたての赤ちゃんや飼いたての動物のように可愛い。
『あっ!起こしてくる!』
『今何時だと思ってんの……』
時計を見たらもう8時過ぎだ。
玲の小学校までは大体10分で着くが玲は歩くの超絶遅いので20分はかかる。
真衣を送らないといけないので俺が学校に着くのはギリギリだ。
さらにダムから流れる滝のように大きな音のため息をついてしまう。
しかし、妹の元気な姿を見ているとつい笑顔がこぼれてしまう。妹って生きてるだけで素晴らしい。
だがまたこの憂鬱な1年...いや、止そう。1日が始まるかと思ってしまうと気が気ではなくなる。
ドタドタドタ、と真衣が2階から降りてきて急いで靴を履き俺と向かい合い笑顔で、
『お待たせ!』
近いよー妹でもそれはドキドキしちゃうからお兄ちゃん。
『玲は?』
『起きなかった!』
『…………まあ、いっか』
いつものことだ。玲も玲でなにか考えがあって寝坊しているのだろう。
お兄ちゃんそう信じたい。
*
俺の家から高校までほんの数十分で着くことができる。妹の真衣の中学は自転車で10分くらいだ。徒歩だと15分くらい。
俺の行っている高校は余り知っている顔がいない。なぜなら、藤が丘学園高等学校は有名で、他県からも学生が行きたいと思うような学校だからだ。設備もしっかりとしていて校舎もきれい。校長や理事長もそれなりに有名な人らしい。
なにより先輩がほんとうに良い。その先輩でパンフレットなんかにも載っている明日川奈々子さん。この先輩目当てで学校受験するようなのもいた。そいつら全員落ちたんだろうけどな。
1年も前の話だけれど、そんな学校に猛勉強して俺は通った。
誰に説明しているかも分からずそんなことを心の中で話していたが、ふいに妹が話しかけてきた。
『てか、なんで2人乗りしないの?』
真衣には自転車の後ろに乗って貰い、俺はそれを押していく形である。絶対に2人乗りしない。
『ダメに決まってんだろ危ないし。もし2人乗りしてだぞ?転けて真衣が怪我したらお兄ちゃん嫌なんだからね!』
『お、お兄ちゃん…』
妹がなぜか引き気味だ。さらに蔑んだ目でこっちを見てくる。
『お兄ちゃんってほんとシスコンだよね』
『妹を心の底から愛していると言って欲しいね』
胸を張って答えた。しかしまだ納得がいかないのか、蔑んだ目は変わらない。
これが妹のジト目というやつか。そんなことできるようになったとは成長したな真衣。
『まあいっか。あっ椎ちゃんだ!じゃーねーおにーちゃん!また放課後ね!』
勢いよく自転車から飛び降り、大きく手を振ってくる彼女に対して小さく手をふり返す。
あら放課後もこないといけないのね……お兄ちゃん大変。
『じゃーなー頑張れよ』
『そうだ!おにーーちゃーん!』
学校へ向かおうとしたら真衣がどこかの声優のような可愛い大きな声で呼んでくる。
めちゃくちゃ嬉しいが気だる気に振り返る。
『友達できるといいねー!』
周りの中学生に思いっきり鼻で笑われてしまった。
………ちょっバカなに言い出すかと思ったらこの妹は…恥ずかしいからやめろよほんと。
また大きなため息を吐き、微笑んで小さく手を振る。真衣は満足気な顔で手を振ってきて、椎ちゃんらしき人物と学校へと消えていく。
椎ちゃん笑わないで。
ふぅ。あと10分か……
急いで向かわないと。
おもいっきり自転車を漕ぐ。これだと5分もかからず着いてしまう勢いかもしれない。
*
朝から大変だったがようやく学校へ着いた。
ほんとに5分で着いちゃったけれど遅刻ギリギリ。
急いで新校舎の前の自転車置き場に自転車を置き、クラス名簿の貼ってある掲示板のある所へ歩いて行く。
さすがにもう学生はいない。
『俺は何組だ?これだけ多いとわかんないな。まあ、よ行だし下の方だろ』そう独り言をぶつぶついいながらまるで秋葉原を徘徊するオタクのように(実際していた)自分の名前を探す。
んーーーーー。んー?
掲示板を、見ていくが吉崎颯斗という名前が見当たらない。
『へ?あれ?無いんだけど名前』
もう一度1組から15組もある掲示板を見ていく。15組っておい。何人いるの生徒。周りの学校大丈夫なのかよ。
と、心配性な俺が今ピンチなのは俺だけではないということに気づく。
そんなことを考えながら探すが、名前は見当たらない。
あと5分で8時半である。
早く見つけねば。
っていうかなんでないの?ぼっちだったから先生たちにも忘れられた?やっぱり先生たちもそういうとこあるよね。
偏見は良くないので先生方に謝ります。ごめんなさい。
と、悲壮感に満ち溢れたことを思っていると、そこで誰かに肩をつんつんされる。
だが、後ろも振り向かない。ここは無視だ。仕方がない。
もう一度つんつんされた。無視。
なんどもつんつんしてくる。つんつんつんつんうっとうしいな。
またしてきた。さすがに急いでる分イライラしてきた。
『時間なっ……』
『吉崎颯斗』
俺の声はかき消され、少女が確認してくる。
『あなたが、吉崎颯斗』
美しい声が俺の名を呼ぶ。
振り返ると、髪は桜色でショートヘア。風で良い感じになびいていて綺麗な少女が立っていた。
俺は、この少女を知っている。
この子は、【雪城まひろ】
先ほど無礼な態度をとってしまったことを後悔するほどに、学校一の美貌を持った少女だ。
そのような少女が声をかけてきたと少し嬉しがる。
初めて学校で女の子に喋りかけられた。
『な、なに?』
と、聞いてみたが声が裏返る。
妹で耐性ついてると思ったのに。
『……新しいクラス。教えてあげる』
くすりと笑われた気がしたが気にせしない。また声が裏返る。
『新しい、クラスって?なんなの?』
少女は告げる。
『…ついてきて』
多少ぎこちない返しに答えてはくれなかったが、裏返りすぎてキモいやつだと思われてしまったのだろうか。笑ってくれたのでそんなことはないだろうな。
まあしかし、ずっと名前を探しているわけにもいかないし、先生に聞きに行ったとしても『誰こいつ?生徒?』みたいな反応されても困るし周りの痛い目もきになるので、この少女を信じてついていくことにした。なんで俺銀髪なのに誰にも知られてないんだよ。おかしいこの学校。
だが、ここからだ。俺の退屈だった日常が充実する日常に変わり、時に残酷で理不尽で、また、後悔することになるのだが、このときの俺はまだ知らない。
ありがとうございます。
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辛口でも構いませんのでよろしくお願いします。