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side一美


 ピピ、ピピ、ピピ……。

「…うにゃ?」

 カチャッ。

 右手が、的確に目覚ましを捉える。

 …あれ?夕べ、目覚ましなんかセットしたっけ?

 たしか、今日は日曜だからってセットしなかったはずなんだけど…。

 そんなことを考えながら、ムックリとベッドから身体を起こす。

「お、起きよった」

「グッモーニン」

「おあよ…」

 声がする方に向いて挨拶して……固まった。

「な、な、な、な、な……」

「もう六時半やよ?」

「起きろ~、いちみ~、生きてるか~」

 な、何であんた達がここにいるのよ~っ!

「いっちゃんを起こしにきたんよ?」

「出掛けるんでしょ?運動公園に」

 そりゃあ、その予定だけど……って、どうやって家に入ったのよ!

「普通に玄関から」

「鍵は?」

「昨日たまたま街でお母はんに会うてな、『鍵を例の所に置いておくから、娘をよろしく』って」

「父さんは?」

「さっき、慌てて出て行ったよ?会社のシステムがどうたらこうたらで」

 また、休日出勤?って、それはいいとして。

「現地集合じゃあなかったの?」

「イベントを盛り上げるための、ちょっとした演出?」

 バラエティー番組ぢゃないんだから、そんな演出いらないわよ。

「まぁ、それよりも」

「朝食出来とるよ。食べるやろ?」

 突発イベントで、食欲なくなったかも…。

「あかんあかん。食べなあかんよ」

「折角用意したのが無駄になっちゃうよ」

 …そうだね。頂くとしますか。じゃ、着替えないと…。

「は~い、脱ぎ脱ぎしましょうね~」

「替えの下着はどこやったかな」

「下から二番目に派手めのヤツがあるよ?」

「勝負下着、ってやつやな?ほんならそれでいこか」

 あ、あ、あ、あんたら~~~っ!

「一人で出来るから、出て行け~~~っ!」

「勝負下着は?」

「そんなの必要ないっ!」

「つまらんのう…」

 なんでやねん!



「なぁ、いっちゃん。まだ怒ってるん?」

「いい加減機嫌直しなって。いちみらしくないぞ?」

 朝食を摂取後、私達三人は運動公園へ向かっていた。

「……誰がこうさせたのよ?」

 久しぶりに、怒りゲージが溜まっていた。

 朝のひとときが台無しになった、その一点で私は怒っていた。

「こりゃあ、しばらく収まらないなぁ」

「この通り、堪忍や。ちょう、悪ノリし過ぎた」

 菜々美は反省しているようだし、許しても良いかな。

 問題は……。

「朝起こしに来ただけなのに、何で怒るかなぁ」

 かっつぃ~~ん!

 怒りゲージピーク!

「ほほ~う?あ・れ・で・起こしに来ただけぇ…」

「朝ご飯も作ったよね?」

「私はその後のことについて、怒ってるんだけどぉ?」

「…何かあったっけ?」

 ブチブチッ!

「いっぺん、逝ってこいやぁ~~~~っ!」

 ブゥワキッ!

 私の鋭いアッパーが炸裂!

「あたしが悪うございましたぁ~~~~っ……」

 キラリン…

 春菜は星になった。

「いっちゃんの本気、久しぶりに見たわぁ~」

 何、菜々美も味わいたい?

「いやいやいやいやいや、滅相もない」

 そう、残念ね。

「…うぅ、いっちゃんイジワルやわぁ」

 それもこれも、この二人に朝を任せた母さんが悪いんだから!

 帰ったら、覚えておきなさいよぉ~~?


 ブルルッ!

「…ん?師長、どうかされました?」

「いや、何か悪寒が…ね」

「風邪じゃないですよね?気をつけて下さいよ」

「有り難う」

 な~んかイヤな予感…まさか、一美怒ってる?


 さて、そうこうしているうちに運動公園に到着。

 近隣の学校と合同で記録会を開催しているようで、結構な人の数がいる。

 情報通の菜々美の話だと、今回は公式な記録会では無いらしいのだが、ここの陸上競技の設備を格安で借りるために近隣の学校に声をかけて、今回の記録会が実現したらしい。結構立派なトラックだもんねぇ、ここ。

 …ていうか、菜々美の情報網、恐るべし。何でそんな裏情報みたいな事まで知ってるのかしら。

「さ~て、幅跳びのフィールドはっと…」

 いつの間にか復活していた春菜が、フィールドを探し始めていた。

「まぁ、大抵はメインスタンドの真下やな」

「そうなの?」

「ある程度まっすぐな直線が必要なとこなんて、限られてるやん」

 そうね。幅跳び、三段跳び、棒高跳びはある程度の距離が必要。必然的に場所は限られる。

「ん~、最前列はさすがに応援組で埋まってるかぁ」

 参加する生徒を応援する両親達でいっぱいだ。熱が入ってるところは違うねぇ~。

「でも、中段ぐらいなら充分座れるよ?そないぎょうさん人がおるわけやなし」

 んじゃ、砂場が見える所で中段を確保しますか。

「ところで、お昼はどうするの?」

 私は何気ない質問をした。

「もうお昼の心配なん?」

「そんなんじゃないっての」

 誰一人(私も含めて)荷物を持っていない。お出掛けのバッグは当たり前としても、中にお弁当が入っているような雰囲気もないじゃない。

「公園の門を出てすぐの所にホカ弁屋があるじゃない。結構おいしいって評判らしいよ?」

「弓道部で割と寄らせてもろてるしな。そこでええかと」

 菜々美のお墨付きなら大丈夫か。

「あたしの評判はぁ?」

「あんた、たまにハズレを持ってくるから信用ならん」

「今日のいちみはドSだぁ」

 人聞きの悪いことを言うな。それを言うなら、自業自得よ。

「お、いよいよ始まるようやよ」

 見ると、インフィールド中央に、各校の選手達が集合していた。

「…いた」

 早々と、藤宮さんを見つけてしまった。

 まだ、向こうは気付いていない。

 何かホッとした気分。

「おぉ、割と後ろ目にいますなぁ。どう見ます?解説の彩恩さん」

「下級生ですから、仕方ないかと」

 アホなことをやってる二人は無視。

 この前の練習の成果を、見せてもらうわよ?



日曜日編、序章…ってとこかな?

朝からイベントラッシュ?w


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