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27-2

前回うpった分の続きです

一美SIDE


 時はあっという間に過ぎ、クリスマスイブ当日。


「みんなおはよ~」

「おはようございます、先輩」

「おはよーさん」

 地元駅で待ち合わせをした私達。今日は、此処から直近の新幹線駅に移動し()()()へ。名児耶からは直通バスで現地入り、の予定。

「春菜は?」

「まだ見えてへん。またやらかすんやないかと心配なんやけど」

 以前あった大遅刻を想像し、気が気でない菜々美。

「まぁ、昨日口酸っぱく言っておいたから大丈夫でしょ。奥の手もあるし」

「あ~、あれかいな……」

 まぁ、使わないに超した事は無いけど。でも、確かに今日は朝早いからちょっと心配だな。

「千夏、おはよう」

「あ、祐華。それにみんな、おはよう」

 あ、祐華ちゃんと夏の時のクラスメイト達が到着。

「今回お誘いいただき、ありがとうございます」

 その中の一人が、私達に挨拶してきた。委員長キャラ、って感じの子だね。

「まぁ、これも何かの縁、ってやつやし、堅苦しくする必要もないえ。賑やかく行こか」

 折角の一泊旅行だしね。2日間遊び倒そう。

「いっちゃんはそれどころやない思うけどな」

「え?」

 菜々美の言葉の意味がわからず、私は首を傾げる。考えてもわからないので、スルーして千夏ちゃんに声をかける。

「良い天気になって良かったね」

「……ソウデスネ」

 あ、あれ、怒っていらっしゃいますか?

「あ、あの~、千夏……さん?」

「ナンデショウカ?セ・ン・パ・イ!」

 何かやらかした?私。記憶ないんすけど。

「千夏ちゃ……」

「ナニカヨウデショウカ!」

 わ~ん、何か知らないけど怒ってる~ぅ!?

「本気で彼女さんが何故怒ってるんか、わからんのかえ?」

「うん」

 わかんないものはわかんないもん。

「はぁ~。彼女さん、いっちゃんとの関係、考え直した方がええんちゃう?」

「偶然ですね。わたしもそう考えてました」

「千夏ちゃ~ん……」

 千夏ちゃんがいつになく黒い。

「暫くは先輩と口を利きません」

 そう言って、彼女はクラスメイトのいる方へ行ってしまった。

「ざまぁないな、大河一美」

 その光景を見ていたのか、祐華ちゃんが近づいてきた。

「今回はいいチャンスだ。これを機に、千夏を返してもらうからな」

 出来るものなら……と反論したいが、現状ではそれも適わない。

「お待たせ~ってあれ、いちみ……どした?」

「第1ラウンド完敗、ってとこやな」

「意味わかんないんだけど」


 その後、電車や新幹線を乗り継いで、今はナラスパへの直行バスの中。私は何とかして移動中に、千夏ちゃんの機嫌を治そうという目的で隣に座ろうとしたが、例の如く祐華ちゃんが立ちはだかり、ならばとジャンケン勝負を挑んだがことごとく負けてしまい、バスの一番後ろの席に一人で落ち込みながら座っていた。

(今日はことごとく裏目に出てる……)

 ぼーっとしながら外の景色を眺める。良い天気に恵まれてるので景色は良いはずなのだが、千夏ちゃんの隣に座れないショックで何も頭に入ってこない。

「いちみ……相当だなぁ」

「自業自得な面も否定出来んけどな」

 前の席で悪友2人が何か喋っているが、気にしない。っていうか、もう帰りたい。

「先輩……」

 千夏ちゃんの視線も感じない訳ではないが、応える元気もなくなっている。

「ちょっと露骨すぎたかな……」

「あれくらい、奴には良い薬だ」

 もう、どうとでもなれ。

「しかし、いちみがこのままというのも興醒めだなぁ」

「そちらさんもつまらんとは……思わへんか?」

「わたし的にはどうでもいいんだが……確かに張り合いがないな」

「というわけでぇ~、こんなん考えてるんだけど」

「ふんふん……なるほど、それも一興だな」

「ちょっと……皆さん大丈夫なんですか?」

「ちょっとした喝入れやね♪」

 な~んか悪巧みを考えているみたいだけど、興味ないので無視。ナラスパまで後何キロとかいう看板が目に入ったと同時に、私は突然目隠しをされた。

「ちょ、何するのっ!?」

「まぁまぁ、イイトコ連れてってあげるから」

 春菜の悪魔の囁き。

「冗談じゃない!あんたがそういう時って、ロクな事が無いんだから」

「先輩、わたしと一緒に来ていただけませんか?」

 なっ、突然の千夏ちゃんからのお誘い。これも、春菜の作戦か……でも、頭ではそうわかっていても悲しいかな、千夏ちゃんのお願いは断れない。

「もちろん、ご一緒させていただきます!」

 即答してしまった。

「良し決まり。藤宮、ちゃんとエスコートしてあげて、一番前に」

「はい……」

 何か完全に乗り気じゃない千夏ちゃん。その傍らで、菜々美と祐華ちゃんが含み笑いしていたのを、私は気づかなかった。

 そうこうしている内にバスは現着し、私は千夏ちゃんに手を引かれて入園。手続きなどは菜々美がやってくれたようだ。

 そして、導かれるままに何かの席へ座らされた。途中からはヘッドホンもされていたので、状況が全くわからない。何処のバラエティ番組だっての。

 そして、座らされた席だけど、足が地についてない。いわゆる足ブラブラ状態。しかもバケットシートよろしく、身体が包まれてる感じ。その時点で、ようやく目隠しなどが外された。

「え……此処どこ?」

「スティールドラゴンっていうコースターですけど」

 私の頭の中が混乱している最中に、保護バーが下ろされた。

『それでは皆さん、マイナスGを体験して来て下さいね。では発車します』

 アナウンスが終了すると同時に、コースターが動き始めた。

「春菜の策略ね」

「大丈夫ですか?先輩。顔色悪いですけど」

「私が絶叫系が得意じゃないのを知ってて嵌めたのね、アンニャロウ」

「え、苦手なんですか?春菜先輩からは大得意だと聞いていたんですけど」

「千夏ちゃんを協力させるための嘘よ」

「でも、もう逃げられませんよね……」

 そんな会話をしながら、コースターは頂点目指してゆっくりと登っていく。

「千夏ちゃん」

「はい」

「ゴメンね……」

 私が千夏ちゃんに謝ろうとした瞬間、コースターが落下し始めた。

「きゃあああああああああああっ!」


 数分後、私は傍らのベンチで轟沈していた。エクトプラズム的な何かを口から放ちながら。



 先程のヒドい悪夢から暫くして。

 私は人気のないベンチに寝かされていた。千夏ちゃんの膝枕というおまけ付きで。

「先輩、気分はどうですか?」

「最高です!」

「ふざけているなら、わたし行きますよ?」

「スミマセンごめんなさい。まだちょっと気持ち悪いです」

 彼女の目の前で醜態を見せた私は、こうして横になっている。口酸っぱい感触はどうにか無くなったけど、いきなり園内最強の絶叫系にどっきりで乗せられたおかげか、体調が戻らない。元々得意じゃない絶叫系だけど、ここまでのダウンは珍しい。

「はぁ、もう千夏ちゃんにはダメダメな私しか見せてない気がする、最近ずっと」

「ですよね。せっかくのデートも二人っきりじゃないですし」

 あ~、今日怒っていたのはそれかぁ。私もホントは二人で来たかったけどね。

「色々ごめんなさい。不甲斐ない彼女で」

「そのおかげで、こうやって膝枕出来てますから、その件は不問にします。私こそごめんなさい。露骨に怒ってしまって」

 全て私が悪いから、仕方ないよね。

「ところで、他のみんなは?」

「絶叫系乗り倒すぞーって。春菜先輩が引っ張っていきましたよ」

「ふぅん、祐華ちゃんも?」

「彼女は私も連れて行くつもりだったみたいですが、菜々美先輩に何か言われて渋々みんなについて行ったみたいです」

 なるほど、ということは二人っきりか。サプライズを発動させるなら、今がチャンス。

「千夏ちゃん、今日の夜付き合ってほしいところがあるんだけど」

「どこですか?」

「誰にも見つからないようにホテルを抜け出して、ナラスパの入園口に来てほしいんだ」

「ホテルのロビー……ではなくて?」

「そこだと見つかってしまうから、特に祐華ちゃんに」

 そう、彼女に見つかってしまっては、サプライズにならない。反って邪魔されてしまう。

「私がこんな状態だから、多分この後も私は貴女と行動を共に出来ないと思う。その辺は織り込み済み。これは貴女に、そして祐華ちゃんにもサプライズを仕掛ける意味があるの」

「祐華にも……ですか?」

 彼女の名前が出てきて、驚く千夏ちゃん。

「そう、ここは彼女を出し抜くチャンスなの。お願い、今までの罪滅ぼしも兼ねてるみたいでイヤかもしれないけど、今夜付き合って」

 このチャンスを逃したら、今回のデートは全て失敗に終わってしまう(既にデートという名目は崩れているけど)。

「何か考えてるんですね?」

「うん。あ、この件は春菜と菜々美は知っているよ。寧ろ協力してもらったから」

「あぁ、それで……」

「ん、何か心当たりでも?」

「以前、春菜先輩が今回の企みに噛んでるとか言ってましたから、この事かと」

 春菜め、そんなことを言っていたのか。

「詳しいことまでは知らないので。甘んじてサプライズを享受します」

「ありがとう」














祐華SIDE


(くっ、そんなことを考えていたのか、泥棒猫は)

 わたしは千夏のことが心配で、みんなについて行くふりをして近くの物陰に隠れていた。泥棒猫と二人っきりになんかさせない!と息巻いて。

「サプライズね……此処で聞いてしまったからには、もう意味をなさないわね。ふふふ、悪いけど泥棒猫の思い通りにはさせないわよ」

 こちらにも考えがあるんだから。

 絶対、千夏を取り返して見せるんだから。



 みんなでナラスパを遊び倒し(約一名を除く)、時間も頃合いになり隣接のホテルへチェックイン。このホテルは、関西弁の先輩が部屋をコネで押さえたとか。お嬢と言われるわたしでも、なかなか出来ない技だ。あの人物、というより彩恩家はなかなかの手練だ。

 そして、夕食バイキングをみんなで堪能し(これも約一名除く)、今は自由行動。ここナラスパはお風呂も有名なので、温泉へ行く人もいるようだ。その中、わたしはホテルのロビーである人物を柱の陰で待っていた。

 程なくして、その人物が現れた。

 案の定、周りをキョロキョロしながら見回している。見つからないようにといわれているからだろうが、かえって怪しくなってるよ、千夏。

 そして、誰もいないとわかるとそそくさとロビーを後にした。それを見届けて、わたしも移動を開始する。


 暫くして、ナラスパの入園口に到着。アウトレットモールが隣接しているせいか、まだまだ賑わいを見せているナラスパ。その中で待ち合わせとは考えたわね、泥棒猫。

 さて、そろそろ千夏に声をかけようかね、と考えた矢先、千夏の携帯が着信を知らせてきた。一言二言会話したら、移動し始めたのでわたしも移動。行き先は……お手洗いだった。まぁ、暗くなってきて冷えてきたし、近くなるよね。

 お手洗いに入ったはいいが、なかなか出て来ない。あら、もしかしてそっち?千夏もバイキング結構食べてたからなぁ。……ちと、わたしも冷えてきたな。まだ出て来ないなら、わたしも用事済ませようかな。

 用事を済ませ、お手洗いから出てきたけど、千夏の姿はまだ無い。いくら何でも長すぎる。女の子の日でもないはずなのに……不審に思い、先程の入園口に向かう。

 ……やっぱりいない。これはおかしい。わたしの尾行がバレてた?慌てて千夏へ電話してみる。

『もしもし、祐華どうしたの?』

「千夏!今何処にいるのっ?」

『どこって……バスの中?』

「はぁ?バスぅ!?」

『これ以上は祐華にも言えない。じゃあね』

 通話が切れた。

「やっぱり、バレていたのか……」

 わたしは悔しさのあまり、その場で地団駄を踏んだ。











一美SIDE


「これで良かったんですか?」

「バッチリ。やっぱりバレていたのか、サプライズ」

 実はサプライズデートに誘ったあと、みんなが集まってきて休憩所へ行こうと誘われたとき、菜々美から忠告を受けていた。

(いっちゃん、待ち合わせはワザと遅れていった方がええで?)

 そう言われたのが気になっていたので、敢えてロビーへ早く行き陰で様子を見ていた。そしたら、千夏ちゃんに続いて、祐華ちゃんもついて行くではないですか。

(菜々美の忠告はこれかぁ)

 その一瞬でサプライズがバレているのを確信した私は、電話で千夏ちゃんをトイレに呼び出し待機させた。その後、祐華ちゃんが寒さでトイレに入るのを確認して再度呼び出し、千夏ちゃんの手を取りバスへ飛び乗った。

「ところで……このバス、どこへ行くんですか?シャトルバスとか書いてありましたけど」

 あの短時間でよくそこまで気がついたね。

「このバスはね、ナラスパと同じ所が経営している『なばなガーデン』へ行くんだ」

「なばなガーデン?」

「そ。この辺では一番有名なんだ、イルミネーションで」

「冬のイルミネーションですか。聞いたことあります」

 此処なばなガーデンのイルミネーションは、この辺りでは一番有名かつ規模が大きいことで知られている。クリスマスの時期はかなり人が集まるらしく、周辺道路は大渋滞が起こるらしい。それだけの人が予想されるので、当然宿も満館御礼になるかもしれないところを、菜々美のコネで何とかしてもらった。春菜が菜々美頼みといったのは、こういうことなのだ。

 私達は、専用シャトルバス(宿泊客限定)で移動してきたので、難なく会場に到着。既に日没は過ぎているので、イルミの点灯開始時間は過ぎている。本当は、点灯の瞬間を見せたかったけど、祐華ちゃんのこともあったので、泣く泣く諦めた。「凄いところですね~」

 早速会場へ入園。出だしから、綺麗に彩られた光のオブジェに出迎えられ、千夏ちゃんが惚けていた。

「まだまだ中はこんなもんじゃないらしいわよ?」

「そうなんですか?楽しみです」

 どちらからともなく手を繋ぎ、腕を組みながら園内を闊歩する。予想以上に人混みが凄いので、離ればなれにならないように、と自分に言い聞かせる。あと暖かいから(これ重要)。

 全国最大規模という謳い文句の水上イルミネーションを見て二人で感動したり、光の回廊でキャッキャウフフしてみたり、電飾で飾った幅120メートルのナイアガラの滝の再現に驚愕したりと、1時間ぐらいかけて園内を散歩した。

「凄い電飾の数々ですね」

「うん、私も驚いた。全国有数は伊達じゃないね」

 二人で感想を言い合う。とりま私達は園内中央付近にあるカフェでお茶をしていた。私は、バイキングを体調不良で食べてないので、此処で軽食を貪っていた。

「流石にお腹空いたよ~」

「夕食は全く食べていないんですよね」

「うん。流石に……」

 別件もあったしね。間に合わなかったのも事実。まぁ、それは今のところナイショ。携帯で時間を確認する。……そろそろか。

「千夏ちゃん、ついてきて」

 お茶を飲み終わったタイミングを見計らって、私はあるところへと誘い出す。

「ここは……?」

『フライング菜花』と看板に書かれた所についた私達。

「あ、貸切を頼んだ彩恩ですけど……」

 近くにいたスタッフに声をかける。

「あぁ、お待ちしておりました!」

 そのスタッフは、慌てた様子で一旦中に入り、再度出てきた。

「では、こちらです」

 中に案内していただけるようだ。

「何が始まるんですか?」

 何が何だかわからない様子の千夏ちゃん。

「先ずはサプライズ第1弾♪」

 言われるがままに、中へと入っていく。当然ながらスタッフ以外はお客さんがいない。

「え、此処貸し切ったんですか!?」

「菜々美の協力のもとね」

 こんな時期だから無理かとは思ったけど……菜々美のコネ、恐るべし。

 暫くして、ゴゴン!という音と共に、施設が動き始めた。

「え……何が起こってるんですか!?」

 混乱しまくりの千夏ちゃん、カワユス♪

「この施設自体が上昇しているのよ」

「えええっ!?」

 この施設、元々はナラスパにあったものらしい。何年か前にこちらに移設して営業している、とのこと。経営母体が一緒だから出来るワザだ。

 暫くして上昇が止まった。と同時にゆっくりと施設が回転し始めた。360度パノラマが楽しめるというのが此処の売りだ。しかも、今はイルミの時期。眼下には先程巡ってきたイルミが一望出来る。遠くを見渡せば、この辺一帯の夜景も楽しめる。

「凄い……」

 あまりの光景に、千夏ちゃんは言葉を失っているようだ。

「下から45メートルの高さにいるんだって、今」

「こんな景色、見たことないです……」

 世の中には、ヘリコプターをチャーターして夜景を見せるという商売があるけど、学生には無理なのでこれで我慢してもらうしかない。普通は此処は、貸切なんか出来ないから。

「さて、と……」

 次なる準備をしなければ。

「千夏ちゃん」

「はい、何でしょうか」

「私達……一応恋人同士だよね?」

「何故疑問系なんですか。だからダメなんです」

 お、仰るとおりで……。

「何かダメな部分しか最近見せていないから、自信なくなっちゃって……」

「そうかもしれないですけど、先輩はわたしの自慢の彼女なんです。もっと自信持って下さい」

「こんなダメダメな私でも?」

「寧ろ、わたしの知らない先輩が見られて嬉しいです」

 そういう解釈もあるのか……なら。

「ち、千夏ちゃん。これを受け取って下さい!」

 そう言って、私はある物を千夏ちゃんに差し出した。

「これって……」

 私が差し出したのは、一対のペアリングが入った箱だった。

「私達が一生一緒にいられるように願ったリングです。これで堂々と恋人同士と言えるよう頑張ります。どうか、受け取ってください!」

 こんな形でしか言えない彼女だけど、これからは疑問系にならないよう努力するから。

「……」

 千夏ちゃんの様子が気になり、顔を上げたら、泣きながら両手で口を覆っていた。

「せ、先輩、こんな所でこんなの……反則過ぎます」

「受け取ってもらえないですか?」

 折角の最大のサプライズ、失敗か?

「受け取らないわけないじゃないですか。わたしも、先輩の彼女として恥ずかしくないよう頑張ります」

 そう言って箱を受け取り、

「手を出して下さい」

 リングを私に填めようとしてきた。

「何処の指にすればいいんですか?」

「一応……薬指で」

 そう私が言うと、スッと薬指に填めてきた。

「私も」

 千夏ちゃんから箱を受け取り、彼女の薬指にリングを填めた。

「私は、千夏ちゃんを一生愛し続けます」

「わたしも……一生傍にいます」

 そして、どちらからともなくキスをする。


『おめでと~!』


 突然、そんな声と共にクラッカーが鳴らされた。「え、春菜。菜々美ぃ!?」

「みんな……祐華まで」

 何故かそこには、今回の旅のメンバーが全員揃っていた。

「これは、ウチからのサプライズや」

 こんなのが待っていたなんて……流石は菜々美。でも、祐華ちゃんはどうやって?

「あんたらを見失った後、そこの関西娘に拉致られたんだ」

 そこまで達観していたのか、菜々美は……。

「何はともあれ、おめでと~」

「あ、ありがとう……で良いのかな?」

 みんなから祝福される。約一名を除いて。

「祐華……」

「わたしは認めないからな」

「いい加減諦めなさい。リングまでされたじゃあねぇ」

 クラスメイトが祐華ちゃんを慰めている。

「ほな、一件落着ということで、時間いっぱいまでこの景色を堪能しよか」

 菜々美の一言で、みんなが窓側に移動し、イルミ&夜景を楽しんだ。

「先輩」

「ん?」

「わたし、この日を一生忘れません」

「ん、私も」

 そう言って、みんなの見えないところでもう一度軽くキスをした。




 明けて、クリスマス当日となった帰り道。


 私は、新幹線車内で千夏ちゃんと隣り合って座っている。その横の席には、午前中アウトレットで買い込んだ品物が多数。その中には、千夏ちゃんから私にというクリスマスプレゼントも混ざっている。なんでも、ナラスパに行くと聞いた時点で狙っていた商品があったとか。先に渡す気でいたらしいので、申し訳ないと謝っておいた。

「大河一美」

 気がつくと、傍らに祐華ちゃんが来ていた。

「何?」

「今回は完敗だ」

 隣で寝ている彼女を気遣ってか、小声で話しかけてきた。

「そんなことないよ。前半戦は私の完敗だから」

「でも、あのサプライズはわたしでは無理だった」

「アレも、友人の協力があってこそだよ」

 そう、春菜や菜々美が協力してくれなければ、今回の一大サプライズは出来なかった。

「しかし、あの関西娘は何者だ?」

「さぁてね。私にもわからん部分はあるよ」

「そうか……」

 菜々美の謎めいた部分は多分、一生かかっても解明されないだろう。そんな気がする。

「とにかく、わたしはお前を認めない」

 夏にもそんな事言われたなぁ。

「でも……千夏が受け入れた以上、わたしは一旦引く。彼女を泣かせたら、いの一番に報復に向かうからな」

「うわ、それは大変だ。そうならないよう努力するよ」

「言質は取った。千夏を……よろしく頼む」

 そう言って、彼女は頭を垂れた。

「ん、任された」

 私は、それにサムズアップで応えた。



 将来どうなるかなんて、誰にもわからない。

 でも、私は千夏ちゃんを愛し続けると誓った。

 彼女の悲しい顔は見たくないから。

 今できる精一杯を彼女に捧げよう。


 そう心に誓い、自分の街に着くまで彼女と二人、ひとときの安らぎに身を任せるのだった。



Fin

一応、今回でこのお話は完結と致します

……が、気が向いたら番外編なんかをうpするかも知れません

どうなるかは一美達次第?w

「私達に丸投げする気!?」

「解せぬ」

「作者はんの放任主義にも困ったもんや~」


……期待せずにお待ち頂けると幸いです

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