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27-1

お待たせしております

冬コミで発刊した最新話を分割してうpします

祐華SIDE


「おはようございます」

「千夏ちゃんおはよう。すっかり寒くなったねぇ」

 そう言って二人は腕を組む。全校公認カップルなので、お構いなしだ。

「はぁ、此処だけは未だ常夏やのぅ……」

「いっそ爆発すればいいんじゃね?」

 それにはわたしも同意する。


 12月。寒さも本格的になってきた。

 毎朝通る通学路。千夏を含めた4人が、いつものように賑やかく歩いている。その集団から約50メートル後方でわたし、沖 祐華が後をつけるように歩いている。決してストーカーをしているわけじゃない。通学電車の都合上、たまたまこんな距離が出来上がってるだけ。先述の集団の中に、わたしの想い人である藤宮千夏がいるのだ。その彼女が、わたしの天敵である大河一美と腕を組んでいる。

(千夏、その泥棒猫から離れるんだ)

 下唇を噛みしめ、ぐぬぬとなりながら離れろと念じる。しかしそれは無理な話。あの2人は相思相愛なのだから。

 でも、私は諦めない。あの横から現れた泥棒猫から、何としてでも千夏を取り返してみせる!

「うひょう!?」

「何よ菜々美、変な声出して」

「何や素敵な殺気が後ろから……」

 ちっ、気づかれたか、。あのちっさな関西弁の先輩は只者じゃないな。この距離で、わたしの殺意に気づくとは。

「あ、祐華」

 釣られて千夏も後ろを向いたので、私という存在に気づいたようだ。その拍子に前方の歩みが止まったので、一気に追いついてしまった。

「おはよう、千夏……と諸先輩方」

 後半の台詞を、威嚇しながら千夏以外にぶつける。

「相変わらずだなぁ」

 泥棒猫と同じぐらい背の高い先輩が苦笑していた。

「その殺気、いい加減やめてくんないかなぁ。心臓に悪い」

「千夏と縁を切ればやめてやるよ、大河一美」

「もぅ、祐華ったらぁ……」

 隣で想い人が頭を抱えていた。



 教室へ移動してきた。

 HRが始まるまでの時間、自分の机でまったり過ごす。この時間は嫌いじゃない。クラスメイトとたわいもない話をするのも、嫌いじゃない。ただ、今日はいつもと違う。千夏が話の輪にいない。

「祐華、ご機嫌斜め?」

「そ、そんなことないぞ」

「汝、嘘をつく事なかれ」

「何のキャラ?それ」

「特に意味はない」

「祐華~、誤魔化してもムダだよ?あんた、嘘をつくと眉がピクピクするんだよね」

 言われて、咄嗟に眉を両手で隠す。

「マジ?そんな癖、自分でも気がついていないのに」

「最近気がついたんだよね~。千夏がいないとき限定だけどね」

「あ~、時々うわの空な時があるもんね~?」

「そそ。そん時に祐華を呼ぶと、決まって同じリアクションするから観察してたのよ」

 ……それで、癖を見つけたと。

「あんた、千夏がいないとだいたいご機嫌斜めだもんね」

 余計なお世話だ。

「祐華の千夏好きも相当なもんだよね」

「そーそー、もう決まった相手もいるというのに」

「悪かったな」

 痛いところを突かれ、さらに不機嫌になる。

「まぁ諦めろ、とは言わないけどさ……分が悪いよ?」

「だよね~。あの文武両道三人組の一角だもんね」

「そんなの……わかってるさ」

 夏の時点で一応は、二人の関係を認めた。でも、完全に諦めるなんて出来ない。それ位、千夏への想いは軽いものではない。文化祭ではあの女の鈍感な部分が幸いして、デートすることに成功はしたが……。

 時は12月。今月はクリスマスという一大イベントが待ち構えている。こんな機会を易々と見逃すほどわたしは莫迦ではない。着々と、計画を練っているのだよ。今度こそ、千夏を振り向かせるんだから。

「その顔……何か考えてるのね?」

「我に秘策あり!」

「まぁ頑張れ?クラスメイトとして応援くらいはしてやんよ」

「気持ちだけはありがたく受け取っておくよ」

 そんなことを話してると、教室のドアが開き、想い人が入ってきた。

「千夏~おかえり。日直だったんだね」

「学校着くまで忘れてたよ~」

「それは千夏だけだ」

 友人達と笑いあう千夏。その光景を、わたしは静かに見守っていた。

 ある想いを胸に秘めながら……。




一美SIDE


 私、大河一美は悩んでいた。


 12月に入って、クリスマスという一大イベントが近づいているというのに、恋人である藤宮千夏ちゃんを未だにデートに誘えていない。文化祭で恋敵?である沖 祐華ちゃんに出し抜かれてしまったので、今度こそ!と息巻いているのだが……如何せん、デートプランが思いつかない。う~ん、困った……。

「スーパー春菜イズムチョーップ!」

 机でウンウン唸っていたら、いきなり頭に攻撃を喰らった。

「何すんのよ、春菜!」

「辛気くさい顔は、いちみに似合わないぞ~?」

「人が真剣に悩んでるというのに」

「だからツッコんだ♪」

 等々力春菜の台詞を聞いた刹那、私は両手の親指で彼女のこめかみを思いっきり押してあげた。

「ぬわ~~~っ、痛い痛い痛いっ!!」

「ハルもホンマ、チャレンジャーやなぁ」

 その横ではもう一人の友人、彩恩菜々美が苦笑していた。

「それよりも助け……いだだだっ!?」

「自業自得や」

 そろそろいいか、と私は春菜を解放した。

「ふぃ~っ、痛かったぁー」

「まだ本気ちゃうよね?いっちゃん」

「6割程度?」

「マジカヨ~」

「……本気、試してみる?」

 私の台詞に対し、真っ青な顔して首が千切れんばかりにブンブンと顔を横に振ってる春菜。それを見て私と菜々美は笑いを堪えきれず、プッと吹き出した。

「あ~、面白いモン見られたわ~」

「本人的には面白くないんですけどー!!」

「まぁまぁ」

 憤慨する春菜を宥める。

「それはそうと、何を悩んでいるんだ?」

 機嫌が治った春菜から、ふとそんな質問を投げかけられた。

「まぁ、いっちゃんが悩むと言うたら、彼女さんのことやろな~」

「……何でそんなに鋭いのよ、菜々美は」

 相変わらずの菜々美の切れっぷりに、私は戦々恐々する。

「喧嘩でもしたん?」

「順風満帆です」

「なら悩む必要もないだろうに」

 ごもっとも。

「千夏ちゃんとのクリスマスを、どうしようか~って悩んで……って、何でそんな憐れみな視線を向けるのよ!」

「ツッコむだけ野暮だったか」

「せやなぁ~。彼女さんも可哀想に」

 二人からのダウナー系ツッコミを受けて、私は心に大ダメージを受けてしまった。

「もう師走やで?いっちゃん。まぁだ誘ってへんかったんか?」

「中身も決まっていないのに、誘える?」

 私は至極当然な回答をしたつもりだったが、菜々美は頭を抱えて溜息をついていた。

「あんなぁ、文化祭での一件覚えてるか?」

「も、勿論よ。だから、真剣に……」

「ゴチャゴチャ考えんと、先に誘ったらええねん」

 はぁぁぁっ!?

 菜々美のトンデモ発言に、私の顎が落ちた。

「恋敵に誘われる前に、とにかく約束を取り付けるんや。プランは後でもええ」

「そうだな。誘えなきゃ何にも始まらないよな」

 春菜も同調してきた。

「世の中には、『サプライズ』っちゅう便利な言葉(システム)もあるんやで?」

「相手も、行き先などがわからないと、ドキドキするもんな」

 ふむ……サプライズねぇ。そういう手もあるか。

「でも、いつ行くかの都合も……」

「そんなん、イブの日でええやん」

「都合も聞かずに決めていいのっ!?」

 そういう私に、菜々美はチチチと指でアクションする。

「今年最後のイベントや。彼女さん、絶対予定空けて待ってるよって」

「イブに誘えなきゃいつ誘うんだよ」

「そんなものなのかねぇ……」

「そんなもんや。無事誘えたら、デートプランの作成にちょう協力してもええよ?」

「ホント?言質取るよ?」

「迷えるいっちゃんの為や。女に二言はない」

「あたしも協力す……」

『ハルはいらん』

 菜々美と二人でハモってしまった。

「一人だけハブかよ~」

「悪いけどあんた、恋愛方面で役に立ったことないじゃん」

「先生、このクラスにはイジメがあります!」

「イジメとかそんな生易しいもんやないで。ハルの場合は」

「もっとヒドいじゃん!?」

 二人の漫才がヒートアップする前に、私は春菜に一つの提案をした。

「じゃあ、一週間以内に私と菜々美が納得出来るようなデートプランを考えてきて」

「いいんか?」

 菜々美が不安そうな視線を投げかけてきた。

「取りあえず『宿題』としてやらせてみましょう。上手くいけば使わせてもらうだけだしね」

「よっしゃー!いちみ達をギャフンと言わせてやるぞ~」

 ……大丈夫かしら。

 私は、春菜の気合い入れを見て一抹の不安を覚えるのだった。





千夏SIDE


 わたし、藤宮千夏は頭を抱えていた。


 今日の授業も終わり、期末考査の準備期間なので部活も無し。HRが終わって直ぐに祐華が私の席にやってきた。

「途中まで一緒に帰ろう!」

「わたし、先輩と帰る約束してるんだけど?」

 祐華にそう告げた途端、彼女の雰囲気が一変した……ような気がした。

「今日こそ、あの泥棒猫に引導を渡してくれるわ」

「何をする気?事の次第では友達やめるから」

「そ、それを言われるとツラい……」

 相変わらず、先輩と祐華の相性は悪い。というより祐華が一方的に先輩を敵視してるだけなんだけど。それでも毎度の如く衝突するのは勘弁してほしい。

 昇降口で靴に履き替え。先輩の待つ校門へ。何故か祐華も付いてきている。そして、校門に近づき先輩の姿を見つけるや否や、ロックオンしたミサイルの如く先輩に突進していく祐華。

「泥棒猫、覚悟!」

「また性懲りもなく……」

 そう言って、先輩は祐華の頭を手で押さえる。

「うがーっ、天誅ーっ!」

 威勢がいい祐華だが、長身の先輩とではリーチ差がありすぎて、先輩に祐華の拳が届かない。

「そろそろこのパターンも……」

「飽きてもうたなぁ。笑いは繰り返しが基本言うても、度が過ぎるとあかんでぇ?」

「あ、お二方も一緒でしたか」

 今更になって、菜々美先輩達を認識した。っていうか、ギャグシーンなの?これ……。

「ちょう、彼女さんに用があってな」

「わたし……ですか?」

 菜々美先輩がわたしに用があるって、何だろう?

「まぁ、正確にはいっちゃんが彼女さんに、やけどな」

 あ、そういうことですか。

「む、千夏に用とはどういうことだ?」

 菜々美先輩の言葉に、何故か祐華が反応した。

「詳しいことはいっちゃんから」

 ですね。当事者から聞くのが一番ですよね。

「時期的に察しはついてると思うけど……」

「ま、まさか」

 思う節があったのか、祐華が焦って……いる?

「千夏ちゃん、えっと」

「む、そうはさせん!」

 そう言って、大河先輩と祐華が同時にこっちを見た。そして、同時に言い放った。


『私とイブにデートして!』


 ……ぇえ?デート!?しかも二人に同時に誘われた!?

「貴女もなの?」

「泥棒猫もか」

「私は、千夏ちゃんの恋人なのよ?誘って当然でしょ?」

「関係ない。今度こそ泥棒猫から千夏を取り返すんだから」

 二人で喧々囂々。

 一応、先輩に誘われることを想定して予定は空けてあるけど、まさか祐華からも誘われるとは。ダブルブッキングとは違うけど、これはこれで困ったなぁ。普通なら先輩を優先するんだけど、それで簡単に身を引く祐華じゃないしなぁ……。

「同時になんて……ウケるわ~」

 春菜先輩、完全に他人事ですね。

「でも、今回はちょっと噛んでる面もあるから、いちみの誘いを受けてくれると嬉しいかな」

「噛んでる……?」

 どういうことですか?

「まぁ、その辺はいちみの名誉のためにノーコメントで」

「また何か企んでいません?」

「それは菜々の得意分野だから」

 わたしは懐疑的な目で春菜先輩を見たが、本当に何も考えていないようなので、視線を件の二人に向けたが……まだやり合ってるよ。

「ほならこうしよか」

 突然、菜々美先輩が大声を出しながらパンパン、と手を打った。

「丁度試験時期やし、彼女さん達でテスト勝負といこか」

 とんでもない提案がなされた。

「私と祐華ちゃん……じゃなくて?」

「学年違うし意味ないやん」

「確かにそうだけど……争うなら私達でしょ?」

 そうですよね。わたしと祐華が争う方が意味ないのでは?と考える。

「こういうのはどう?いっちゃんは彼女さんの勉強の応援。そちらの彼女さんは、誰でも良いから味方をつけて試験勉強する。その上で、彼女さん達に期末考査の総合点で勝負してもらう、てな感じや」

「千夏ちゃんが勝ったら、私とデート出来るんだね?」

「いっちゃんが彼女さんと、やで?そこんとこ間違えないようにな」

 微妙な日本語の言い回し……わたしはつい苦笑してしまった。まるでわたしに選択権があるみたいです。

「そうか……わたしが勝てば千夏とデート出来るのか……」

「そういうことや。後腐れのないフェアな勝負や。見届けはウチとハルでやる。結果に文句は言わせへん」

 菜々美先輩達は中立的な立場になるようだ。やや変則的だけど、大河先輩と祐華の真剣勝負。

「文武両道が伊達じゃないって事、証明してあげるわ」

「ふん、貴様がどう出ようと返り討ちにしてくれるわ」

 二人の目が燃え上がっている。何かわたしだけ置いて行かれたような錯覚に捕らわれた。ということで、ここでようやく冒頭に繋がるのでした。




一美SIDE


 ということで、何故か千夏ちゃんと試験勉強する流れになり、私の部屋で猛烈?に勉強中。千夏ちゃんの点数が全てを決めることになるから、そりゃ気合いも入りますって。

「先輩。此処なんですけど……」

「ん?どれどれ」

 千夏ちゃんに質問され、彼女のノートを覗き込む。二人の頬が密着する勢いで。

「ち、ちょ、先輩。顔近すぎですってば」

「え~、嬉しくないのぉ?」

「それは嬉しいに決まってますけど……って、今は勉強中ですよ!」

 うんうん。困ったちゃんな千夏ちゃんも可愛いなぁ、もぉ。

「こういうシチュもドキドキするよね。千夏ちゃん、良い匂いするし」

「真面目にやってください」

「ヤバい。千夏ちゃんのせいで、理性のタガが外れそう……試験勉強なんかやめてイチャイチャしよ?」

「わたしのせいって何ですか……デート出来なくなってもいいんですか?」

「デートよりも今が大事だよ……」

「せ、先輩……」

 よしっ、このままキスまで行って……。


「そこまでや!!」


 突然、ホイッスルと共に菜々美の大声が飛んできた。

「なによ~邪魔する気ぃ?」

 折角の甘々な時間を壊された私は、菜々美に対して憤怒した。

「人前でいちゃつくんじゃね~よ、ったく」

 その隣では、春菜がゲンナリした顔をしてこちらを見ていた。

「というか、お二人が此処にいると言うこと自体が謎なんですが」

 あぁ、千夏ちゃんが現実に戻ってしまった。折角久しぶりに甘えていたのに。

「いっちゃん、それじゃ勉強の邪魔をしているだけやん」

「勉強教えること以外やることないからツマンナイんだもん」

 菜々美のツッコミに私は文句で返す。

「そんないっちゃんに、イエローカードや」

 そう言って、菜々美はサッカーなどで使う黄色いカードを私に突きつけた。裏を見ると、反則行為ならぬいちゃつき行為が書き込まれていた。

「何これ?」

「イエローカードそのものや。いっちゃんの彼女さんへの行為に対し、勉強の範疇を逸脱した場合への警告や」

 ということは、千夏ちゃんとイチャイチャが出来ないじゃない。

「横暴だ~、ブーブー」

 私は当然反論したが、菜々美はこめかみを押さえた。何か怒りマークも見えてる……気がするんですが。

「あんなぁ、いっちゃん。ホンマにデート出来んくなってもええんか?」

「どゆこと?」

「彼女さんは、英語は完璧でも他が平均レヴェルなんやで」

「な、何かいっぱい申し訳ないです……」

 菜々美に指摘され、縮こまる千夏ちゃん。

「あぁ、別にそれを責めてるんちゃうよ?気ぃ悪くしたらゴメンな。で、ここからが問題や」

 菜々美の表情が、一気に真剣なモノになる。

「向こうのお嬢さんは、英語が出来ないけど他が平均より出来る。言ってる意味わかるか?」

 そこで、春菜から補足が入る。

「つまりだ。向こうは英語さえ頑張れば、藤宮に勝てる可能性があるってことだ」

 要約すると、千夏ちゃんに英語以外を教え込まないと、祐華ちゃんに勝てない。つまりデートが出来なくなるということになる。でも、私は心配していない。千夏ちゃんもやれば出来る子だ。実際、夏に教えたところを復習したらちゃんと出来ていた。

「でも……何故イエローカードが出てくるの?」

 私は至極当然な質問をしたつもりだった。今までの話の流れで、カードが必要になる場面が想像出来ない。そんな私の質問に、菜々美の返した答えは想像の斜め上のものだった。

「これはいっちゃん用や」

「私ぃ!?」

「いっちゃん達を二人きりにすると、いっちゃんが暴走する可能性がある。現に今、そうやったしな」

「そんな行為をしないよう監視するためにあたしらがいるわけよ」

「そうだったんですか……」

 春菜達の説明に納得する千夏ちゃん。何か悲しい気分です。

「ちなみに、2枚目をもらうとどうなるの?サッカーではレッド同等となって即退場のはずだけど」

「レッド同等は同じや。そうなったら、今回の勝負でいっちゃんの負けが確定する事になるえ。勝負以前の段階でな」

 ということは、既に1枚だから……もう、試験終わるまで千夏ちゃんといちゃつけない……の?

「そういうことだ。観念しろ、いちみ」

 な、何てこと……私は自分で自分の首を絞めてしまったのかーっ!

「先輩、お互い頑張りましょう。わたしは勉強を。先輩は禁欲を」

 千夏ちゃんに慰められた……感動のあまり抱きついたら、また菜々美のホイッスルが鳴り響いた。

「危険行為や。イエロー一歩手前やで」

「えぇ~っ、抱きついてもいけないのぉ?」

「それ位真剣にやってもらわないと、勝てへんかもしれん相手なんや。ウチらも、今回は心を鬼にしてるんや」

「あたしのデートプランもかかってるんだ。厳しく行くぞ」

 試験が終わるまで2週間弱。

 私、耐えられるかしらん……。

「先輩、頑張って♪」

「ん、デートのために」

「あ、ちなみに、いちゃつき禁止は結果発表するまでやからな?」

 え、マジカヨ~……。





春菜SIDE


 あたし、等々力春菜は緊張していた。


 バレーの試合でも、こんなに緊張したことはないんだけどなぁ……。

 理由は至極簡単。あたしの考えてきたデートプランが、いちみに気に入られるかどうかって事なんだけど、むしろ気に入られなかったらどうなるんだろう?という方が怖い。

 今日は、例のテスト勝負の結果発表日。屋上でいつも通りお昼を食べた後、その場で結果披露される手はずになっている。で、その後あたしのプランも公開することに。まぁ、あたしのテストはぶっちゃけいつも通り。今回は菜々の方が調子が良かったようで5点差で負けた。いちみもいつも通り。今回はガリ勉さんで有名な人に次ぐ2位だったようで、本人も驚いていた。

「さて、お昼食べようかしらね~」

 屋上のいつもの場所で、のんきな台詞を吐きながらお昼の準備をするいちみ。緊張のかけらも感じられない。

「気楽なモンやなぁ、いっちゃん」

 横で菜々が軽く呆れていた。

「だって、頑張るのは千夏ちゃんだよ?」

「その彼女さんの点数次第、ってわかってるんか?」

「やることはやったし」

 ホント気楽だなぁ。こうなると、逆に負けるところを見てみたくなるのが普通の人間の心理だよな。負けてしまえ、いちみ。

「……春菜。今失礼なこと考えたわね?」

「め、滅相もない」

 な、何でそういう時だけ鋭いのかなぁ。

「ハルは単純やからなぁ。表情で直ぐわかるんやで?」

 ……マジっすか。

「お邪魔しま~す」

「し、仕方ないからきてやったわよ」

 そうこうしている内に、下級生二人も屋上に到着。ランチタイムの始まりだ。


「では、お披露目といこうかの?お二人さん」

 食事も終わりお茶で一息ついた頃、菜々が今回のメインディッシュな話題を切り出した。

「あまり自信がないですが……」

「どうぞ見てちょうだい!」

 対照的な態度の二人。藤宮の方は、デートがかかっているというのに何でそんなに自信がないのだろう。

「千夏ちゃん、大丈夫!」

 いちみが藤宮に向かってサムズアップ。元気づけるためにやっているのだろう。

「泥棒猫がしゃしゃり出るなぁ!」

 それに対して、沖と言ったか?が威嚇。周りがそんなだが、気にせずあたしと菜々は二人のテストを受け取り、総合点を計算していく。……ふむふむ、ぉお、そう来たか。これは面白い展開になってきたぞ?

「結果発表~」

 菜々からみんなに言い渡される。

「ちょっと困ったことになってん……」

「どういう事?」

 菜々の発言に、いちみもかなり気になってる様子。だって……。


「なんと、同点やねん」


『えええ~っ!?』


 あたし以外のみんなが驚く。そりゃそうだ。まさかこんなオチとは誰も予想していないだろう。

「彼女さんは英語満点は当然として、他の教科も軒並み高得点。そちらさんは、他教科はいつも通り高得点らしいけど、英語がイマイチ伸びんかったようやな。そのおかげで得点差が埋まってしもうたようや」

 菜々からの、内訳の説明。

「こんな点数、取ったことないです」

「だから言ったでしょ?貴女はやれば出来るって」

 そんな二人に対し、

「くぅ~っ、英語は今回そこそこ自信があったのに」

 落ち込むもう一人の下級生。

「面白い展開やけど、どうするん?いっちゃん」

「同点は……予想してなかったわね」

 さすがのいちみも、そこまでは予想していなかったのね。では、いよいよあたしの出番かな?


「なら、みんなで遊びに行けばいんじゃね?」


 あたしの発言に、皆の目がテンになる。

「あんた何を考え……あ、例のプラン?」

 何かに気づいたいちみが反応してきた。

「そ。デートプラン考えてきたけど、考えるのがめんどいあたしとしては、ナラスパで良いんじゃないかと」

「ナラスパ?」

「聞き慣れんとこ……待って。まさか思うけど」

「どこです?それ」

「ナラスパって……あの?」

 いちみ、菜々、藤宮、沖……それぞれの反応が面白い。でも、流石お嬢二人は何となくわかったようだな。

「ナラシマスパーランド。西の方で有名なレジャーランド&ショッピングモールがあるところ。遊園地で遊ぶも良し、ショッピングするも良し、どっちも対応出来る所だよ」

 アウトレットモールが最近出来て人気が復活しているので、いいかと思ったんだよね。

「あぁ、あそこか……」

 いちみも合点がいったようだ。

「問題は……距離やね」

 そう、それが一番のネック。

 でも、あたしは更に続ける。


「遠いから一泊で行こうか?」


「一泊って……宿取れるの?」

 あたしの一言にみんな固まったが、またもや早く復活したのはいちみだった。

「あぁ、大丈夫。ホテルが隣接してるからね。まぁ、部屋は菜々のコネ頼みだけど。テヘッ」

「ウチ頼みかーいっ!!」

 いつの間にか復活していた菜々にツッコミを喰らう。

「まぁええわ。ハルにしては考えてるんやないか?いっちゃん」

「そう……だねぇ。春菜にしては」

 二度言わなくていいから。

「ゆうわけでぇ。そちらさんさえ良ければ、夏のメンバーで一緒に行かへんか?」

「わたしに……そんな権利ある……のか?」

 おどおどしながら、沖が聞いてきた。まぁ、同点という結果だから勝負が曖昧になってるんだもんねぇ。

「無問題や。勝負は引き分けやし、一旦水に流そ。改めて当日に何か勝負してもええしな」

 菜々にそう言われて、真剣に考え始める沖。何か色々真面目に考え込んでいる。気楽に遊びに行く感覚で良いのに。

「一応、恋敵も一緒やしなぁ」

 それもそうか。

「暫く考えさせてくれ。決まったら千夏に伝言する。いいよね?千夏」

「あ、うん。わかった」

「彼女さんもゴメンな。二人っきりのデートやなくなってしもて」

「まぁ、仕方ないですね。これも全部、先輩の不甲斐なさのせいですから」

 そう言って、藤宮はいちみを睨んでいる。

「わ、私のせいなのっ!?」

「せや。いっちゃんがもっと早う彼女さんを誘っていれば、こうはならんかったはずやで?」

 それには、あたしも同意する。

「その点に関しては、海よりも深く反省します」

 反省モードに入ったのか、背が高いはずのいちみが項垂れて縮こまってしまった。それを見て、あたし達はプッと吹いてしまった。



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