表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/31

17

デートの前に、お弁当イベントを書いてみました

side一美


「おは~」

「おはよう」

「おはようさん」

 翌日、いつものように通学路で三人集合。

「今日は早出やないんやな」

「あれは昨日だけよ」

「ホント、昨日はびっくりしたさ~。予告なしの早出って初めてだよね?」

 う~ん、そうだったかな?

「まぁ、それだけ彼女さんが気になった、ちゅ~ことやもんな」

「心臓に悪い事はもう勘弁な~」

 そう言う春菜に、私はこめかみにアイアンクローをかませる。

「い、痛い痛い~っ!何で攻撃されてるの?」

「さっきの言葉、そっくり返してあげるわ。私は、あんたのせいで何度心臓に悪い経験をした事か…」

 言ってさらに指に力を込める。

「いいい痛い痛いってば!シャレになってないよ!」

 おっと、無意識に力を入れすぎたか。解放するとしますか。

「ひ~~っ、まだヒリヒリするぅ…」

「これに懲りて反省するんやな」

 普通にしていれば何も問題ない春菜なんだけど、時々とんでもないポカをやってくれる。去年の特大遅刻事件が一番印象に残ってるんだよね。色んな条件が悪い方向に重なっての出来事だったので、怒るに怒れなかったんだけど。

「ん?巾着持ってるんだ、いちみ。今日はお弁当?」

「久しぶりにね」

「しかも二つ…ゴチになりやす♪」

「あんたのじゃない!」

 巾着に手を伸ばしてきた春菜を振り払う。

「ウチんの…でもなさそうやな」

「菜々美は毎日お弁当じゃない」

 そう言って、私は菜々美の手元にある小さめのトートバッグに視線をやる。

「ほんなら、誰の分…あ、そういうことやな」

 菜々美、鋭すぎ。

「そう、千夏ちゃんの分よ」

「ほほ~、何でまた」

「昨日誘ったのよ、お昼一緒にどう?って」

 そう言ったら、突然二人は小声でひそひそ話し始めた。

「ちょっと、どういうことですの?奥さん。らしくない行動を取ってますわよ」

「まぁ、ちっとは色気づいてきたゆうことやないでしょうか…」

「少しは成長した、とみてよろしいんでしょうか」

「突発的な思いつき、という線も捨てがたいですなぁ」

 …全部聞こえてるんだけど。

 昨日の帰り際に誘ったのは事実。突発的に思いついたのも事実。当たってるだけに言い返せない。

 しかも、昨夜帰ってからも家で一悶着?があったわけで…。



 昨夜一〇時頃に話は戻る。

 お風呂の準備をしながら、お弁当の下準備をしていたところへ、両親が一緒に帰ってきた。…のはいいのだが。

「た~ら~い~ま~っ…ヒック」

「今帰ったろ~…ウィ」

 ちょっと待て!二人とも酔っぱらいかよ!?

「父さんは良いとして…いや、こっちも状況が良くないが取りあえずスルーして、母さんまで酔ってるってどういう事なの?」

「な、何と…父さん無視された…泣いちゃうぞ~」

 もう、うるさいから黙ってて!

「たまたまぁ~たべようぅ~えきでぇ~いっしょにぃ~なってぇ~おとうさんとぉ~なってぇ~いざかやさんでぇ~はなしにぃ~」

 あぅ、話が支離滅裂になってる。仮にも看護師でしょう。急患来たらどうするのよ。

「だいじょうび~、きょうはぁ~きゅうかん~おやすみだからぁ~あはははははは~」

 だめだ、使い物にならん。急患の電話が来ない事を祈ろう。それにしても飲ませ過ぎよ、父さん。

「俺は止めたんだぞ~。目を離した隙にいつの間にかがばがば飲んでたんだ、止めようがないって」

 あぁ~あ、折角軽い食事作っておいたのに…無駄になりそう。

「お、一美用意してくれてたんだ」

「こんな状態じゃご飯食べてないでしょ」

「え、なに?かずみのごはんあるの?」

 何か勢いよく反応したんですがっ!?

「たべるたべる~、はよもってこ~いっ!」

 もぅ、酔うと途端に扱いにくいキャラになるんだから。はい、お茶漬けと簡単なおかずだよ。

「きゃっほ~っ、かずみあいしてる~」

 酔っぱらいの愛情なんかいらん。

「でも、よく用意してあったな」

「ま、どっちも夕飯食べてこないんじゃないかっていう予想もあったんだけど…明日久しぶりにお弁当作ろうかなって、その準備もしてたの」

「父さんも弁当欲しいですっ!」

 予想通りの反応…はいはい、用意するわ。

「はいは~い、かあさんもほしい~っ」

 か、母さんまでっ!?

「だめなのぉ~?かずみつめたいぃ~」

 あぁ、もうわかったから作るわよ、母さんの分も。手間は変わらないし。

「娘の弁当キターーーーーーーーッ!」

「わ~いわ~い」

 もう収集つかん。早く食べて寝ておしまいっ!



「大変やったのう…」

「ちっと同情するよ…」

 な、何故回想シーンにコメントが。

「何言うてるん」

「全部喋ってたじゃん」

 あうっ、またやってしまったのか…。

 取りあえず、お弁当は用意できたわけで…問題はアレだけね。

「まさかとは思うけど、菜々美。千夏ちゃんのクラス知ってる?」

「何でそんな事聞くんの?」

「私知らないし、変な事まで知ってる菜々美なら…と」

「変な事とは失礼な。情報収集の努力の結果や」

 それは知ってるけど、たまにベクトルが変じゃない。特に、私の家の内部事情に変に詳しいじゃない。教えてもいないのに。

「いっちゃんの周辺の調べ物が、一番面白いんや」

「それはいいから、知ってる?」

「それは当然や」

 どや顔で返されても…。なら教えて下さい。

「本来は自分で調べるものやから…高いで?」

 お金取るのっ!?

「取らへん取らへん。ちょう、おかずをわけて欲しいんや」

 え、何、ついてくる気満々?

「もちろんや。お昼一緒させてもらうえ~」

「面白そう。あたしも行こうっと」

 は、春菜まで!?

 ま、まずい…二人でお昼という計画がぁ…。千夏ちゃんの怒り顔が目に浮かぶようだよ~。



side千夏


 授業が終わってお昼時間。

 ここは一年C組。わたし、藤宮千夏の所属するクラスです。

 今日は、大河先輩とお昼を一緒する日。

 でも、肝心の先輩から具体的なお誘いがなかった。わたし、どうしたら良いんだろう。困った、動けない。

「千夏~、お昼一緒しないか~い?」

 友達からもお誘いが来るのだが、

「ごめん、今日は先約があるから…」

と、三連続で断っている。まいったなぁ。…そう思ってたところに、突然教室のドアが開いた。

「たのも~っ!」

「…道場破りちゃうねん」

 いつも通りの漫才を見せる等々力先輩と彩恩先輩が、わたしたちの教室にっ!?

「泣いてる子はいねが~?藤宮はいねが~?」

「なまはげもちゃうねん」

 先輩達の突然の登場に、教室に残っていたクラスメイト達は固まってしまって微動だにしない。

 このままでは漫才が止まらないので、唯一面識があるわたしが前に出るしかない。

「どうしたんですか、お二方」

「おぉ、彼女さんや。昨日ぶり」

「本人が出てきたんなら、手っ取り早い」

 何の話ですか?

「待ち人を連れて来たんよ」

 よく見たら、二人の後ろには大河先輩が恥ずかしそうに立っていた。

「…この二人に任せるんじゃなかった。激しく後悔」

 その気持ち、お察しします。

「騒がしくしてごめん。お昼食べよ」

「それはいいんですけど…どこで食べるんですか?」

「屋上を考えてるんだけど…あ」

 わたしの足に視線をやる先輩。

「迂闊だった。怪我の事を失念してたよ~」

 日曜日に怪我した右足首。腫れもほとんど引いているけど、包帯のおかげで歩きにくい。しかし、移動はそんなに大変ではなくなってきた。

「大丈夫ですよ。一階ぶんの移動くらいは平気です」

「そうなの?」

「病院での処置が良かったのか、痛みはもうありません」

 先輩の中で、まだ何かが引っかかっているのだろうか?もう大丈夫ですよ。そんなニュアンスで言葉を伝える。

「…無理してない?」

「全然です」

「…信用するわ。じゃ、屋上へ行こう」

 わかりました。

 夢に見た光景が現実になろうとは。

 幸せすぎて気を失いそう。

 しっかりするのよ、お楽しみはこれから。


side一美



 屋上に着いて手頃なベンチを確保し、昨夜から仕込んできたお弁当を広げる。女の子同士なので量はそんなに要らないから、味と盛りつけで勝負!みたいな感じのお弁当にしてみました。ちなみに、お弁当に飢えていた約二名にも一応作っておいたのは、ここだけの秘密♪

「うわ~、凝ってますねぇ」

 ちょっと気合い入れすぎたかな、はは。

「本当に頂いても良いんですか?」

「そのために作ってきたんだしね。食べてくれない方がショックだよ」

「では遠慮なく頂きます…は良いんですけど」

 おかずに箸が届く直前で千夏ちゃんの動作が止まる。

「…これは一体何の公開処刑ですか」

 やっぱ、気になっちゃうか…。

「あぁ、こちらは気にせずごゆっくり~」

「存分に二人の世界に行きなはれ~」

 この場にいて欲しくない余分な面子が二名ほど、対面のベンチに鎮座している。

「ただの見物人ですから~」

「ウチは報酬を貰わなあかんからな」

 ごめんなさい。ついてくるって聞かなくて…。

「まぁ、今回は仕方ないですね。でも、次回からは…空気読んで下さいね」

 了解しました。この程度で済んでよかったぁ。次回は、菜々美をどう振り切るかがネックね。

「大丈夫やよ。ウチだって、そうそう邪魔はせぇへん。馬に蹴られたないし」

「今回はたまたまついてきただけだしぃ?後は、いちみの態度次第かな」

 春菜の場合、対処方法は幾つもあるから気にしてないわ。最悪有無を言わさないから。

「何であたしの時だけ攻撃的かなぁ…」

「ハルの場合、自業自得やから」

 取りあえず、食べようか。お昼休みが終わっちゃう。

「…そうですね。では改めて、いただきます」

 おかずの定番である卵焼きから箸をつけるようです。今回のお弁当は、冷凍物は一切使ってない。自分が食べるだけなら別に拘らないけど、初めてのお弁当でそれは失礼に当たるよね。

 手間はかかるけど、今回は合計四人分を作ったのでそれほど苦じゃなかった。普段は家族の食事の時間がバラバラなのであまり量が作れないし、間違えて作りすぎると料理が無駄になりかねないという理由もあって、夕食のみそれなりに作って朝食は夕食の残りを適当にアレンジして完食する。お弁当に回すまでの量は作らない。だから、お昼は学食か購買が普通な私。

「…美味しいです。そして、悔しい」

 え、何故悔しいのですか?美味しいという評価は素直に嬉しいんですが。

「わたしも料理しますが、ここまでとは…」

 ほぉ、千夏ちゃんも料理するんだ。

「母さんの帰りが遅いときがあるので、時々…」

 じゃあ、次の機会にお弁当作ってもらおうかな。

「…は、はい」

 あら?顔を赤くして縮こまっちゃったよ。

「あぁ~あ、直球投げちゃったよ」

「普段は出ないのに、こういうときだけは出るんやから始末が悪いんよ」

 え、私が悪いの?

「自覚ないから余計に…」

「それがいっちゃんやし」

 何か、好き放題に弄られてるんですが…。



side千夏


 大河先輩のお弁当を完食。ごちそうさまでした。

「うん、綺麗に食べてくれたわね。お粗末様でした」

 ふと対面に視線を移すと、二人の先輩が姿を消していた。どこへ行ったのだろう?

「あぁ、何か呼び出しをされたみたいよ、二人とも」

 そうなんですか。お弁当に集中してて気づきませんでした。

「美味しそうに食べてたもんねぇ。作った甲斐があったわ」

 な、何か今になって恥ずかしさがこみ上げてきた。変な顔とかしてなかったよね?と、自問自答する。

「はい、お茶。緑茶だけどいいよね」

 あ、ありがとうございます。緑茶はあんまり飲んだ事がないので嬉しいです。

「そうなんだ。親戚が静岡にあるから、新茶なんかよく送ってくるんだよ」

 そうなんですか。じゃあ、普段から緑茶を?

「そうでもないよ。父さんが『緑茶以外は認めん!』っていうから、父さんがいるときだけ」

 わたしの家でも、来客があるときぐらいです。

「割といい値段するからねぇ」

 それより、今度の休みの予定大丈夫ですよね?

 二人だけになったので、改めて昨日の話題を先輩に振ってみた。

「今度の休み…何だっけ?」

 せ、先輩…本気で忘れてるんですかっ?

「あ、デートするんだっけ。忘れてませんよ。お弁当に気合い入れすぎて、頭から抜けてたよ~」

 人はそれを忘れるって言うんですっ!本気で怒りますよ!

「本気モードは勘弁して下さい~。頭からは抜けてたけど、手帳にはちゃんと書いて予定組んであるから」

 ほら、と手帳の中身を見せてきた。うん、ちゃんと書いてある。先輩は文武両道なのに、並列処理が苦手なのかな?それとも、恋愛ごとが絡むと途端にダメダメになるのかなぁ。

「昨夜の内に書き込んでおいたんだよ?完全には忘れてないんだから許して~」

 はぁ、わかりました。じゃあ、お仕置きはデート当日に実行します。覚悟しておいて下さい。

「えっ、ま、マジですか…」

 さて、どんな内容にしようかな。別の意味で楽しみになってきました。

「何か、千夏ちゃんが黒くなっていく…」

 とはいえ、内容は三分の二ほど決まってるんですけどね。先輩のわたしへ愛が試されるんですよ。

「ど、どんな内容なのか気になる~っ!」



前回、お昼に誘うシーンがあったので

書いてみました

もうちょっと書きたい気もあったけど

ネタが出なかった…orz


最後は、デートの前振りで終わってます

どんな内容になるのか?

次回はコミケ後の更新となります

相変わらず遅筆ですいません…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ