14
ちょびっと新展開です?
side一美
月曜日。
朝も早い時間に、私は校門の傍らにいた。
時々、朝練をやっている部活の生徒がこちらを見ながら、首をかしげてランニングで通過していく。
登校する生徒もまばらな時間に、校門で小一時間立ってれば、それは怪訝な顔をするよねぇ。
なぜこんな事をしてるか…。
まぁ、ぶっちゃけ千夏ちゃんが無事登校してくるか気になったからなんだけど。
朝慌てて起きて、学校に向かったのはいいけど、途中で家に直接行けば良かったかな?なんて思ったり、それは家の人にご迷惑だとも思ってやめてみたり、ならば校門で待っていれば、行き違いはないだろう…などと考えた結果、今に至るわけです。
…こうやって待ってるのも、悪くないかな。
時々、三人で街に行くときの待ち合わせで、春菜が遅刻して待たされるのとは違うし。
考えてみたら、付き合いだした恋人同士がよくやるシチュエーションじゃない、これ。
あと、途中で待ち合わせて一緒に登校とか…。
私ってこんなキャラだっけ?
「うん、そうかもしれへんね~」
…え?
「おはようさん。こんな時間にいっちゃんに会うなんて、ちょうビックリや」
「あぁ、おはよ」
菜々美がいつの間にか隣にいた。気配を感じさせないとは…。
「ちゃうちゃう。いっちゃんが考え事をしててウチに気ぃつかへんかっただけやよ」
「そうなの?しかも、私の思考につっこんでるし」
「前にも言うたと思うけど、いっちゃん時々独り言だだ漏れしてるえ」
ぇえっ!またやってしまったのか…。
「それよりも、こんな時間に何してるん?」
「…千夏ちゃんが無事登校してくるか見届けたいのよ。菜々美こそ早いじゃない」
「ウチは弓道場の掃除当番や」
ふ~ん、そんなのあるんだ。
「それよりも、今日こそは部活に来てくれへん?土曜日は色々あってうやむやになってもうたし」
そうでした。
出かけようとした矢先に、夜勤から帰ってきた母さんに停められた上に、買い物に付き合え~って拉致られたおかげで、行けなくなっちゃったのでした。
「仕方ないわね。放課後顔を出すわ」
「それでこそいっちゃんや」
「やっぱり…いちみ珍しく早いじゃない」
そんな会話をしてると、春菜が自転車で颯爽と姿を現した。
「おはよ」
「おはよ~さん、ハル」
「いつもの時間にいつもの場所にいないから、まさかとは思ったけど…一瞬遅刻か?と思ったじゃない」
「そんなドジはしないわよ。春菜じゃあるまいし」
「…なんでそこで苛めるんですか」
「ハルの遅刻は、過去に何回あっかたな…両手で足りひんよなぁ」
「全方位攻撃ですかいっ!」
そんな三人でのいつものやり取りをしていると、校門前に一台の車が停まった。
その車のドアから、松葉杖がにょきっと出てきて、降りてきたのは…千夏ちゃんだった。
「うん…何とか大丈夫。帰りもお願い。学校終わったら電話入れる」
お母さんだろうか…二言三言会話して、車は発進していった。
「ふぅ…」
意を決した表情…そんなところへ私は声をかけた。
「おはよう、千夏ちゃん」
私の声を聞いて振り返り、ビックリしていた。
「あっ!…お、おはようございます、先輩。他の皆さんも」
「うん、おはよう」
「おはよ~さん。無事に送ってもらえたんやな」
「あ、はい。仕事へ行くついでだって言われて、早い時間になってしまいましたが」
「はは…それはまぁ、仕方がないかな」
でも、無事に登校してくれて良かった。まずは一安心。
「教室まで送ろうか?」
片方とはいえ、松葉杖では大変でしょう。
「お気持ちは嬉しいのですが、そうそう甘えてばかりも悪いので…。それに目立っちゃうと恥ずかしいし」
え~~~~っ。折角恋人同士なのにぃ…。
「それに、いつも先輩がそばにいる訳じゃないし、頑張って一人で歩いてみます」
そっか…千夏ちゃんは強い子だね。
「あと、職員室に用事があるので、お先に失礼します」
そう言って、ぴょこぴょこと杖をついて学校内へと消えていった。
「や~い、振られた~」
グサッ!
春菜からの攻撃に、心が傷つく。
「いっちゃん?優しいのも大事やけど、たまには温かい目で見守るのも大事やで」
菜々美さんのごもっともな意見、ありがとうございます。
「いいもん。悔しくないもん…」
軽くブルーになる私。
「珍しくいっちゃんが駄々っ子や」
放課後。
約束通り、弓道部へ顔を出す為教室を出る。
菜々美は支度があるというので、一足先に弓道場へ向かっている。
昇降口まで降りてきたら、下駄箱に佇む人物を発見。千夏ちゃんだった。
「どうしたの?こんなところで」
「…あ、先輩」
ようやく私に気づいたのか、顔をこちらに向けてくる。
「お迎え待ってるの?」
「そうなんですけど…仕事時間が延びてるらしくて、遅くなるって電話が来たんです。それでどうしようかと考えてまして…」
あらら。それはお気の毒に。その足じゃあ帰るの大変だもんねぇ。
「どうしようかな…」
そこで、私の中で一つの考えが浮かんだ。
「ねぇ、暇なら私に付き合わない?」
「…はい?」
「私、今から弓道部へ行くのよ。見学してみない?」
「弓道部…ですか?」
「うん。菜々美…私らのグループの一番ちっこい子ね。その子が所属していて、コーチングを頼まれてるのよ」
「そうなんですか」
「ただ待ってるよりはいいかな~と思うんだけどぉ、どう?」
「こんな足でお邪魔じゃないでしょうか」
「大丈夫よ。菜々美がうまくやってくれると思うし」
「いいのかなぁ…」
「何より、私があなたと一緒に居たいから…なんて言ったら引くかなぁ」
ボンッ!
変な音がしたなぁ、と思って千夏ちゃんを見たら、顔を真っ赤にして俯いていた。
「…私も…先輩と…一緒が…いいです…」
小声ながらも、はっきりと気持ちを伝えてくれた。
「それじゃあ、行こうか」
私は、照れながら彼女の手を取り、弓道場へ向かった。
side千夏
皆川学園弓道場。
私と先輩は、道場の入口の前に立っていた。
先輩が扉に手をかけた瞬間、それは起こった。
ドドドドドドドドドドド…。
な、何?この地響き。
「ちっ、気づかれたか…」
え、何々?
「千夏ちゃん、ちょっと私から離れて。巻き込んじゃうと悪いから」
「は、はぁ」
そう言われて、先輩と距離を取る。
…何が起こるんだろう?
何事もないように、先輩は扉を開けた。
ガラガラガラ…。
「待ってたわよ~、大河一美ィ~っ!!」
ひ、人が飛んできたっ!?
「フンッ!」
その人…らしきものが飛んできてるにも関わらず、冷静のまま、襟首を掴んだ…と思った瞬間、
「でやぁ~~~~~っ!」
柔道よろしく、投げ飛ばしたっ!?
しかも、先輩制服のまま!
し、下着が…見えない。残念(マテ)。
ズダァ~~~~ンっ!
相手?は、綺麗に投げ飛ばされていた。
「巴投げ、一本!」
菜々美さんだっけ?決まり技をアナウンスしてる。何でそこまで冷静でいられるんですか?
「部長抑えておいて、って言っておいたでしょう?」
「一瞬のスキを突かれたんや。いっちゃんに対するあの反応速度は、人間業やない思うで」
「毎回付き合わされる身にもなってよ。ましてや、今回はゲストが居るのに…」
「ゲストぉ?…おろ、彼女さん、いらっしゃ~い」
某落語家風の挨拶に、コケそうになる。
「ど、どうも…」
「ちょう、ビックリしたやろ。堪忍なぁ」
ビックリしまくりです。人が飛んでくるなんて予想もしませんってば。
「道場に入るときは、いつもこうなんですか?」
「まぁ、いっちゃんのときだけな。部長と勝負してるんよ」
「投げられたの、部長さんなんですかっ!?」
「そう。弓道部入部を賭けた勝負なんよ」
どんな勝負なんですか…。
「…私が投げられなかったら、弓道部に入るという条件でね…今回は勝てると思ったのにぃ~っ!」
復活したのか、部長という人が話に入ってきた。
「否応なしに勝負させられてるんだけどねぇ」
先輩が苦笑してる。
「…ん?この子見ない顔だねぇ。もしかして♪入部希望者?初めまして。弓道部々長の日比野皐という者よ」
ぇえ?私勧誘されてる?
「…一年の藤宮千夏といいます。期待させて何ですが、陸上部に所属してます」
「あららん、それは残念」
「何で一緒に来たん?」
「迎えが遅れてて暇そうだったから、連れてきた。時間潰しに見学でもどう?って」
別に暇ではなかったんですが…。
「迎えって…あら?足を怪我してるのね」
「はい。捻っちゃいまして…」
「それじゃあ立ってるのは大変ね。そこの子、椅子を用意してあげて」
「はいっ」
手近にいた部員が、部長さんの指示で椅子を用意してくれた。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
その椅子に腰掛ける。ようやく落ち着いた。
「あ、そうそう。藤宮さんって言ったっけ。携帯はマナーにしておいてね。射が乱れちゃうから」
あ、はい。了解です。
「それで、今日はコーチングしてくれるんだよね?大河一美」
「まぁ、菜々美にも頼まれてましたので、そのつもりですが」
運動全般何でもOKとは聞いていたけど、さっきの投げといい、武道まで出来るんですね。やっぱ先輩は凄いわ。
「部員を手取り足取り教えてあげて。…もちろん、わ・た・し・も♪」
カチン!
な、何この人!もしかして私の大河先輩を狙ってる?
「…丁重にお断りいたします。部長に関しては」
「んもぉ~、いけずぅ」
ゴゴゴゴゴゴゴ…。
こんな所にライバルが居たなんて。
私の先輩を取らないでください。
「おおぅ、向こうから嫉妬のオーラが伝わってくるえ~」
「…連れてこない方が良かったかなぁ」
「部長、部長。あんまりいっちゃんにちょっかい出すとあちらさんが暴れてまいますよ~」
「何で?大河一美は私の物なのに~」
…何ですと?
「なった覚えはありません!」
先輩のこの発言で、怒りが少し収まる。
冷静になるんだ、藤宮千夏。
私は、すでに先輩と結ばれている間柄だ。
他の女がちょっかい出しても、先輩は靡かない。
大河先輩を信じるんだ、藤宮千夏。
「実はぁ、いっちゃんとあちらさんは、既にラブラブなんですよ」
「…………」
あれ?固まったよ。
「…そんなこと…」
え、今度は部長さんが燃えてるぅ?
「そんなこと、お母さんが許しませんよっ!!」
私より先に爆発したっ!
「誰が私のお母さんか~~~~っ!」
スッパ~~~ンッ!
大河先輩が、ハリセンで部長さんにツッコミを!?
「いった~いっ!やだなぁ~、ちょっとしたジョークじゃないの」
「まぎわらしいジョークはやめてください」
どこからどこまでジョークなんだろう…。
「とにかく、千夏ちゃんは私の『彼女』ですから、波風立てないでください。私が彼女に怒られる…」
あ、公言しちゃった。…恥ずかしいけど、嬉しい。
周りでも、どよめきの声が上がってます。
「いっちゃん、よく言った!」
「言うしかないでしょう。この状況じゃあ…」
「うんうん、ようやくあなたにもハニーが見つかったのね。お母さん嬉しいわ」
まだ引っ張りますか、そのネタ。
「よし、そのおめでたい出来事に、がっつり練習して県予選突破という花を添えるわよ!」
「お~~~っ!」
な、何という団結力…ベクトルは変だが。
「普通に練習してください…」
あ、先輩が脱力してる。
大変お待たせいたしましたm(__)m
新展開、弓道部編?ですw
何気に新キャラ登場してます(ぉ
本当は途中で千夏視点に変わってるところで切る予定でしたが
先が続かなかったので、まとめてしまいました^^;
時間が無くてなかなか書けませんorz
さて、続きをどう書こうかな…