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side一美


 繁華街から少し離れた住宅街の一角。

 そこに、千夏ちゃんの家はあった。

「へぇ~、私の家からも割と近いね」

 それが、私の率直な感想だった。

「そうなんですか?」

「うん。私の家はもう少し学校寄りのとこだから」

「そうなんですか…あ、今鍵を開けます」

 カチャッ。

 鍵の開く音がした後、引き戸を開ける彼女。

「先輩、ひとつ我が儘を言っても良いですか?」

「ほい、なんでしょうか?」

「私を部屋まで連れて行ってくれませんか?」

 えぇぇぇぇぇぇ~っ!

 何という大胆なお願い…。

「いいいいののののでしょうか?わわわ私なんかで」

 動揺しすぎだ、落ち着け私。

「…先輩じゃなきゃ、こんなお願いしません」

 う、嬉しいじゃありませんか。

「言い間違えました。『彼女』だからお願いしてるんです」

 か、彼女…。

 嬉しすぎて、気を失っちゃいそう。

「では、失礼して…」

 お姫様抱っこで、千夏ちゃんを抱える。

「ええっ!またですか!?」

 …どうも、彼女はこの抱っこに抵抗があるようですね。

「そんなにいや?」

「い、いえ…そうじゃないんですけど、恥ずかしくて」

「大丈夫。今は私しか見てないよ」

「…は、はい…」

 そうして、そのまま彼女の部屋へ運び込んだ。

 ちょっと階段がきつかったけど。

「到着」

 そう言って部屋に入り、ベッドに彼女を降ろす。

「ありがとうございます」

 降ろして手をほどき離れようとしたら、私の首に彼女の手が回り、引き寄せられた。

「きゃっ!」

 自然と、彼女と密着する形となった。

「あわわわわ…」

「すいません。こんな大胆な私で…」

 そ、そんなことありません。むしろ大歓迎?

「今、この家は私達二人っきりです」

 そんな感じだったわね。ご両親は不在みたいだったし。

「兄弟姉妹はいないの?」

「はい。一人っ子です」

 本当に二人っきりなんだ、今。

 ということは、このシチュが意味するところは…。

「せんぱい…」

 またまた、目を閉じられましたよ!?

 誘われてるんだ。

 どうも、リードされっぱなしなんですが。

 ま、いいでしょう。私もそれを望んでるみたいだし。

 ちゅっ。


 今までで一番長いキスだったように思える。

「千夏ちゃん」

「は、はい」

「あまりキスばっかしてると、自分が抑えられなくなりそう」

 そう、キスの先…恋人同士なら必然的に求めるもの。

「それは…わたしもです」

「え…?」

「私はこの先も求めてます。夢が覚めないうちに」

 夢じゃないんだけどなぁ。

「先輩と繋がることが出来たらこんなに嬉しいことはないです」

 でも…。

「貴女は足を怪我してるのよ?弱みにつけ込むみたいで…」

「この怪我のおかげで、両想いになれたんです。足首に負担が掛からなければ平気です」

「そうは言うけどねぇ…」

 捻挫が悪化しないか気が気でない。

「先輩が本当に私のことが好きなら、私を、私のすべてを先輩のモノにしてください」

 ズキューン…。

 こんなに大胆でしたか?貴女は。

 完全にリードされっぱなし。

 やっぱ、私は『彼氏』じゃなくて『彼女』なのかな。

 ここまで言われたら、行くしかないじゃないですか。

「わかったわ。後悔はしない?」

「先輩となら後悔しません」

「じゃ、じゃあいくわよ」

 


「そろそろ大会が終わる頃ね」

 ふと、部屋にあった時計を見て、そうつぶやいた。

「何をしてるんでしょうね、私達」

「部屋でいちゃいちゃしている恋人同士?」

 自分から言って可笑しくなってしまった。

「今日は色んなことがありすぎました」

 そうね…。

 大会を見に行って、貴女が怪我をして、病院へ連れて行って、それから…。

「何か、今になってドッと疲れが出てきたかも」

「することしましたからねぇ」

 彼女も、思い出して苦笑する。

「シャワー浴びます?少しはすっきりするかもです」

「そうね…お借りしようかな。貴女も浴びるでしょ?」

「私は…この足ですし」

 足下に目をやってうなだれる彼女。

「大丈夫。ビニール袋で保護すれば平気。なんだったら、後で包帯まき直してあげるよ」

「そうですか」

「時間がもったいないから、一緒に入っちゃおうか?」

「えぇぇぇぇぇっ!」

「まともに立ちにくいから、大変でしょ?手伝ってあげる」

「そそそそんな、恥ずかしい」

 もう、すべてを見せ合った仲じゃない。遠慮しないの。

「そういうときは彼氏ポジションですね…」

「うだうだ言わないの。お風呂場はどこ?」



side千夏


 小一時間後。

 私は普段着、先輩は着てきた私服に戻った。

 さすがに、これ以上長居は無理ってもの。

「そろそろ帰ろうかしらね。結構長居しちゃったし」

「引き留めちゃったみたいですいません」

「いいのよ~。気にしない」

 そこに…。

 ピンポーン。

 玄関のチャイムが鳴った。

「誰だろう」

「私が出てあげる。その足じゃ移動も大変でしょ」

 ありがとうございます。

 …………

 程なくして、ドタドタと階段を上がってくる音が…二人分?

「千夏っ!お見舞いがてら、荷物持ってきたよ」

 扉が勢いよく開いたその先には…。

 き、キミー先輩!?

「顧問からある程度は聞いたけど、大変だったねぇ」

「まぁ、はい」

「かずみんも、千夏に付いててくれてありがと」

「いえ、暇でしたから」

 そういえば、陸上部で私の家を知ってるの、キミー先輩だけでしたね。以前遊びに来たことがありましたっけ。

「そうよ~。一年はみんな知らないって言うじゃん?だから、あたいが代わりに持ってきてやったんよ。感謝しなさ~い♪」

 強引に奪ってきたようなイメージが浮かび上がるんですが…。

「何か言った?」

 いえいえ、何も~。

「それにしても、捻挫で済んで良かったね。今年の全国はフイになっちゃったけど」

 仕方がないですね。自分が悪いわけですし。

「でも、来年はいけると思うよ、素質あるし」

 大河先輩…。

「かずみんのお墨付きなら大丈夫だ。今年はゆっくり足を治しな。全国は私が制してくるから♪」

 捻挫ですから、一月もあれば治りますよ。

「でも、また力んで飛んだら同じことの繰り返しになっちゃうよ?今年いっぱいは基礎体力作りに重点を置くこと」

 キミー先輩にそこまで言われたら、仕方ないですね。おとなしく従います。

「かずみんは、千夏が暴走しないように適度に監視してね。これは、あたいからの依頼」

「コーチングとは別に?」

「別じゃなくてもいいよ。部に顔を出したときに見てくれたらそれで良いよ」

「ま、受けておきましょう」

 なんか、二人の間で交渉がまとまってる!?

「それよりキミー先輩、今日の結果は?」

 先輩がここにいるってことは、大会が終わったんですよね。

「結果なんて知れてるじゃん。あたいの勝ちで決まってるんだから」

 やっぱり。そうだとは思ったんですが…。

「目標は、あくまでかずみんの記録抜き!それ以外に興味はない」

「わ、私の?」

「去年のあんたの記録が、あたいの目標なんよ」

「…あぁ、千夏ちゃんから聞きました。どうぞ抜いてください。抜けるモノなら」

 ぅわ~、キミー先輩にふっかけてるよ~。

「言われなくてもやってやるわよ。抜いた暁には、もう一度勝負してもらうわよ」

「そんな約束してましたねぇ、…まずいなぁ」

 そんなやり取りがあったんですか。

 キミー先輩が燃えるわけだ。

「んじゃ、千夏の元気な姿も見られたし、帰るとするか」

「そうだ、私も帰るんだった」

「じゃ、途中まで一緒に帰る?」

「それは、遠慮しておきます」

 …先輩が空気読める人で良かった。

「じゃ、千夏ちゃん。お大事にね」

「ゆっくり休みなよ~」

 二人の先輩は帰っていった。

 明日は学校…行けるかなぁ。あ、お母さんに送ってもらおうかな。歩くにはちょっと辛い距離だしなぁ…。


ようやく、こちらも新年1発目をうp出来ました

お待ちになっていた方、すいませんm(__)m

やっぱり、例によって少しカットしてます(ぉ


次回分から、新展開になります

といっても、そう大きくは変わらないかも?

ただ、菜々美の弓道部を書きたくなったので

その方向に行くだけです 新カップルは出るのか?

そんなのわかるわけうわなにするはなせやめ


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