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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ@コミカライズ企画進行中
第8話 最弱と最強

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8-7 エルフ王国


 お城にいくつもある尖塔(せんとう)のひとつ。

 そこから見える景色は、まるでここが魔界だと忘れてしまうほどだ。

 広大な平原。穏やかな風が身体を撫でる。

 

 俺はディアさんに抱きかかえられていた。

 

「それで、なにか大切なお話があるんですよね」

「あら? デートはお嫌いかしら」

「そういうワケじゃないですけど……」


 ディアさんは、遠い目をしていた。

 目の前の平原じゃなくて、どこかもっと遠くを見ているようだ。


「――シュバルはね、弱虫なのよ。それも、すっごいね」

「……グリュウも言ってました。シュバル本人も……でも、俺はそう思いません」


 でも、本人の弁がどうであれ。

 俺にとっては大切な友達で、強いドラゴンだ。


「――かつて、こんなことがあったわ」


 ディアさんが語ってくれたのは、かつて黒竜が滅ぼした国の話だ。


 400年ほど前――

 その血に流れる狂暴さを制御することなく、人間の世界を荒らし回っていた黒竜一族。

 そんな黒竜に憧れるドラゴン。敬い、従うドラゴンも続出した。

 一大勢力となったドラゴンだったが――

 ある日を境に、人間たちが強大な力を手にしたことを知る。


 竜殺の武器(ドラゴンキラー)の登場だ。


 さらにドラゴンへ対抗するべく、強力な装備や魔法がいくつも生み出された。

 その中心に居たのが――


「あのエルフ王国ですか?」

「そう。エルフ王国の生み出す対ドラゴン装備は、我々ドラゴンにとって脅威でしかなかったわ」


 そして運命の日。

 黒竜たちは、エルフ王国を強襲した。

 しかし、エルフたちも黙ってやられるワケがなかった。


「エルフたちは既に竜滅魔法ドラゴンスレイヤースペルを完成させていたわ――何匹も同族がやられ、わたしもその時の傷がまだ癒えないの。ほら」


 ドレスの肩部分をずらし、うなじが丸見えだ。

 しかし、そこには痛々しい傷跡があった。


「シュバルはその光景に恐怖し――戦場から逃げ出したの。闘争本能に支配されているはずの黒竜が、ね」


 しかしシュバルが逃げ、洞窟に頭を突っ込み、岩盤に埋まるように隠れたその先には――まだ幼いエルが居たのだ。

 

「その時に、どんなやり取りをしたのかは知らないわ――けれど、シュバルはエルメイアちゃんを捕まえ……エルフへ投降するように訴えたわ」


 エルフの培ったすべての知識の集合であるエルメイア。

 その命だけは失われてはいけないと、エルフ側の上層部も徹底抗戦(てっていこうせん)を諦め――投降した。

 一部のエルフだけを残し、王国は火の海に包まれた。


 連れ帰ったエルフたちは主従の契約により、しもべとなったが――


「エルメイアちゃんは殺処分した方がいいって仲間内で意見が出てねぇ」


 しかし、それに断固として反対したのがシュバル本人だった。


「族長の息子って立場もあるし、本能に飲まれないシュバルなら悪用しないだろうって――」

「ふんふん……えっ、シュバルって族長さんの息子!?」

「それでエルメイアちゃんは、シュバルと契約を結ぶことになったの」


「……シュバルもだけど……なんでエルのこと。俺に話したの?」

「グリュウさんが先走ったように、エルメイアちゃんはドラゴンの間でも微妙な存在なの」


 言ってみれば。

 ドラゴンキラーと言っても人間の冒険者では精々、銃火器程度の火力なんだろう。

 でもエルは違う。

 恐らく、戦艦や弾道ミサイルクラスの対ドラゴン魔法が使えるんだ。

 

「ドラゴンだけじゃない。存在を知られれば、悪い魔族がエルメイアちゃんをきっと狙ってくる――だからね」


「シュバルとエルメイアちゃんの味方になって欲しいの……」

「べ、べつに今でも仲間ですけどね」

「特にエルメイアちゃんが狙われた場合……わたしたちは動けないの。いまだに殺処分を推奨している同族も居るし……」


 同族同士での争いは、絶対に起こしてはいけない――それが竜の掟だと教えてくれた。


「だから竜決闘なんてシステムができたのよね~」

「分かりました、ディアさん」


「俺がシュバルと、エル。2人とも、守ってみせます!」

「あら~……ボルなのに、シローくんって男らしいのね~」


 優しく頭を撫でられちゃった。

 

「そ、そうですか?」

「わたし、男らしい子って好きよ~……食べちゃいたいくらい」


 ディアさんの声のトーンが、少し下がったような気がした。

 

「……えっ」

「ちょっとでいいから、噛ませて貰ってもいいかしら?」

「え、いや、ちょっ――イヤァァアア、シュバルゥ!!」


 めっちゃ背中を、齧られちゃったのであった。

 もう少しで死にそうだったよ――


 ◆ ◆ ◆


 秘書さんに回復魔法(ヒール)をかけて貰っていると、床に伏したままだった緑髪の少女が起き上がった。

 ちなみに服装は、俺がかつてデザインした和装メイド服に変更して貰った。

 なんとなく。


「な、なななな――なんじゃこりゃぁあああッ!!?」


 甲高い声を上げ、少女がその場でブロッコリーのような髪をかきむしった。

 

「ニンゲンの、それも小娘の姿じゃねーか!? どうなって――」

「起きたかい、グリュウ」


 野性的で、叫ぶたびに犬歯が見え隠れする美少女へと変貌したグリュウは、ラルドさんへ食ってかかった。


「おめぇラルド! オレ様の身体になにしやがった!」

「なにをしたって? そりゃ、ナニ取ったんだよ」


 ラルドさんが思いっきりグリュウの股間(アレ)を踏みつける。

 男であれば、そこにアレがあるんだけど――


「い――たくねぇ。オレ様のチ〇コが!!」


 スカートを捲り、パンティを脱ぎ捨てて、(あら)わになる局部。

 はしたないなぁ、もう。

 

「テメェ、ラルド! 上級竜魔法(マグナ・ドラゴスペル)使いやがったな!」


 ラルドさんの襟首を掴むグリュウ(女)。


「ちなみに上級竜魔法(マグナ・ドラゴスペル)って?」

「ん~。竜貴族の特権魔法って言えば分かりやすいかしら。……例えば性別は変化できない魔法も、完全な姿に変化させることもできるのよ」

「なるほど」


 それで完全な女の子になったワケか。

 見た目が可愛くても、中身があのグリュウじゃなあ……。

 

「いいかいグリュウ。族長は、お前の勝手な行動にお怒りだ。それだけじゃない。黒竜の族長も、だ」

「……それのなにが悪い! 魔界で安穏(あんのん)と生きるドラゴンになんの未来があるッ!」


 犬歯を剥き出しに、グリュウは吠える。


「だからオレ様は、あのエルメイアを使い、竜族を支配し――いずれ魔界すべてを手中に納め――へぐっ」


 ラルドさんが、襟首を掴んだままのグリュウの顔面を、グーでパンチした。

 少女の身体が、軽く弧を描き――地面へと落ちた。


「お前さんのそういう荒々しいところは好きだけどねぇ」


 倒れたグリュウの身体を、馬乗りになって固定するラルドさん。


「なにをしやが――ぐえっ」

「今回はやり方が悪かった。エルメイアちゃんに手を出したのはよくなかったねぇ」

「おいラル――へぶしッ!」

「仲間も作らず先走っちゃって――お前さんは、そういったところがなっちゃいない。だから、シュバル坊ちゃんのところで――」

「げぶっ、がっ、ごふっ」

「しっかりと、学んできな」

「――うるせぇ……」

「さすがのガンコさねぇ――シュバル坊ちゃん」

「は、はい」

「コレの調教やっておくからさ。ちょっと1週間くらい合流が遅れるけど、いいかい?」

「そ、その――はい」


 さっきまでムカつくだけの相手だってのに――

 ボコボコにされるの見てると、ちょっとグリュウに同情しちゃうな……。


「デネブ組の連中も、今回の決闘に巻き込まれた他のダンジョンの修繕工事に回るから、手助けはあんまりできないけど――」

「いえ、お気遣いありがとうございます。ですが……」

「ギュスターの社長ちゃんの件ね。分かってるよ。――その代わり、このバカを徹底的に使ってくれていいからね!」


 豪快に笑う、肝っ玉母ちゃんって感じのラルドさん。

 

「イイ感じに話がまとまったところで……シュバル」

「はいッ!」


 背筋をピンッと伸ばし、シュバルはディアさんの方へ向き直る。


「理由はどうあれ1か月後――結果を残せないようであれば……」

「ごくり……」

「わたし自らの手で、もいであげるからね」

「ひぃ――」

 

 ディアさんならマジでやりそうだ。

 

 長いようで短かったこのグリュウとの決闘。

 一夜を城で明かした俺たちは、再びダンジョン1位を目指し――みんなの待つ、黒の迷宮へと帰っていったのだ。


 うん? なにか忘れているような――

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