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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ@コミカライズ企画進行中
第8話 最弱と最強

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8-3 グリュウの権能


「ぐあッ――てめぇ!」


 突然の攻撃に、グリュウは地面へと降り立つ。

 肩に乗っていたのは――人化したシュバルだった!


「その武器は――!」

「ロンギヌスの槍という名前らしいぞ」


 俺が銘をつけた槍だ!

 

「決闘中にニンゲンなんかに変身しやがって……ドラゴンの矜持(プライド)はねーのかよ! お前自身の全力で来いよ!!」 

「フンッ、笑わせるな。――魔法を使い、他人の心を掌握し、まともに正面からやり合わないというのがお前の全力だというのなら――」


 シュバルが肩から槍を引き抜き、再びグリュウと距離を取る。

 

「人間の姿と知恵を借りてでも戦う。これがワシの全力だ」

「カッコイイ! そうだシュバル。グリュウなんかそのままやっちまえ!」


 なんてことを言いながらも、俺はエルの下へと走っていた。

 しかし――

 

「ここからはお通しできません」

「秘書さん!」


 やっぱりそう簡単にはいかない。

 青髪のサキュバスの瞳には、緑の魔法陣が鈍く輝く――

 でもたしか、身体のどこかにある傷を、上から傷で上書きすればいいんだっけ。


「でも、どこだ……」


 彼女らは、みんなボンテージファッションだ。

 露出度が高いから、見える部分に傷があればすぐに分かりそうだけど……。


「ガハハッ! そうか。だったら、オレ様も己の全力でいかさせて貰うぜ」


 そう言い終えると同時に、グリュウの肩の傷がみるみると塞がっていく。

 

「――来い。我が下へッ!」

「なんだ――ッ!?」


 グリュウの血で汚れた槍が、一瞬だけ震える。

 次の瞬間――槍は、まるでグリュウが主だと言わんばかりに、かたわらへと飛んでいった。


「お前ごときの刻印なんぞ、オレの竜魔法(ドラゴスペル)で即座に上書きよ」


 傷だけでなく血だけでも、モノ相手でもできるのかよソレ!


「こいお前ら!」

「はい、グリュウ様」


 5人のサキュバスたちは、グリュウの周囲へと集まった。

 シュバルも、魔法で新しくロングソードを手元に出現させた。


「貴様――彼女らを盾にする気か」

「お前の言う通り、これがオレ様の能力を使った全力よ……いいんだぜ? こんなゴミ共、気にせず蹴散(けち)らしてくれれば」


 人質を操って盾にするなんて――どっかで聞いたような話だけど。


「お前ら。時間を稼げ」

『御意』


 サキュバスたちは、カマやレイピアなどを持ち、シュバルへと襲いかかる。

 シュバルは彼女らの攻撃を(かわ)し、立ち位置を変えつつ、攻撃を(さば)いていく。

 

「このオレ様の極滅竜魔法(ドラゴスペル)で、ゴミまとめてテメェを吹き飛ばしてやるぜ――ルゥゥ……」


 さっきのアレよりも強力な魔法ってこと!?

 でも、ここへ来る途中――


『なにがあってもワシを信じてくれ。……個竜での決闘で、第3者の介入があれば。契約によりその者は、裁きの一撃を受けるのだ』


 戦いの前にやる竜の契約ってのは、ただの体面(メンツ)や約束事だけじゃない。

 そういう魔術の儀式なんだってのは、なんとなく分かった。


「でもこのままだとシュバルが――」

 

 あのサキュバスのお姉さんたちが認められているのは、グリュウの所有物だからか。

 この場でシュバルの所有物と認められそうなのは――やはりエルしいない。

 まだ主従契約が有効なのかは分からないけど、なにもしないまま立っているワケにはいかない。


「悪いけど秘書さん。ここは通して貰うよ!」


 リュックを降ろし、中から黒い欠片を取り出す。

 仮にもブラックドラゴンのウロコ。俺よりはるかにレベルの高い彼女らにも、通用するはずだ。


「腹、スネ、ふともも――」


 見えない部分へ当てずっぽうで攻撃するしかない。

 シュバルみたいに強力な魔力を当てて無効化とか出来るワケないし――うん?


「魔力……そうだ!」

「確保します」


 操られているせいか、のっそりとした緩慢(かんまん)な動き。

 俺はウロコをその場に捨て、こちらを捕まえようと伸ばしてきた秘書さんの腕の手首を掴む。

 そのまま、腕を思いっきり引いた。


「そりゃ!」


 そうすることによって、秘書さんは前のめりに体勢を崩す。

 俺はすかさず、近づいてきた顔面へフタを開けた小瓶を突っ込んだ。


「もがッ!?」

「飲んで、秘書さん!」


 彼女の身体を引き倒し、黄色っぽい液体はどんどん口の中へ――


「ぐっ、ガァッ!?」

「うわっ」


 ポーションは全部飲ませれたとは思うけど――ボンテージの胸元を引き裂き、白目を剥きながら苦しんでる……。


「だ、大丈夫!?」


 俺が飲んだら爆発するって言ってたけど……もしかして、秘書さんでもダメだったの!?


「うっ――ゲェ……ごほっ、ごほっ」

「秘書さん!」


 苦しそうに口から真っ赤な血を吐き出している彼女の背中を、思わずさする。

 明らかに尋常じゃない量だ――

 

「だ、大丈夫です……シロー様」

「あっ、正気に戻ったんだね」

「どうやらあの碧竜によって――体内に大量の血を飲まれていたようで……」

「血!?」


 そういえばさっきも血で槍を奪ってたな。


「竜の血は、猛毒です。本来ならば、その因子によって体内より血に冒され死に絶えますが……碧竜は、その因子を魔法でコントロールして対象を操るようです……」

「なるほど……?」


 さっきのマジックポーションのおかげで、血に混じってたグリュウの血を押し出せたって解釈でいいのかな。


「じ、事情は把握してます……エルさんを捕えている魔法陣は、なんとか解除を試みてみます。それより、シュバル様に――」

「うん。エルのことは気にしないで、全力でやっちゃえって伝えておくね」

「違います。あのサキュバスたちには特別な仕掛けが――」

「えっ!?」

 

 そう言われてシュバルの方へと振り向くと――サキュバスたちの攻撃を()(くぐ)り、シュバルの剣はグリュウへと届き――


「なんだと?」


 グリュウの喉を貫いた一撃。

 しかし即座にグリュウの姿は歪み――鎖へと変化していた。

 周囲のサキュバスたちも同じだ。

 彼女らも、姿が鋼鉄の鎖へと変化し、そのすべてがシュバルの身体へと巻き付いたのだ。


『ガッハハッ!』


 グリュウの下卑た笑い声がこだまする。

 スッと――まるで魔法が解けたように、虚空からあの緑のウロコに覆われた巨体が現れたのだ。


「バカめが。このオレ様が大事なコレクションのあるここで、んな竜魔法(ドラゴスペル)ぶっぱなすワケねーだろ」

虚計(ブラフ)か……」


 鎖が巻き付いたシュバルの姿が一瞬歪み、すぐに黒い竜へと姿を変えてしまった。

 変化の魔法が解けたんだ。


「この鎖は……」

「サキュバスどもの変化能力じゃ、無機物に変化できねーが――」


 グリュウは自慢げに鎖を指差した。


「このオレ様による“支配”にかかれば……無機物はもちろん、あのドラゴンキラーの模倣(コピー)すら可能になるワケだ」

「そんな魔法の効果が――」

「能あるドラゴンは牙を隠すってな。――まっ、たかが500歳程度の坊やにしては頑張った方だが……ここまでだな」

「くっ」


 グリュウは宙に浮いている二股の槍を操作し、シュバルへと向けた。


「さぁて、お別れの時間だ――」

「ま、待て!」


 この空間に響き渡る、なさけない震えた声――


「あん?」

「グリュウ。この俺が相手だ!」


 全力で走ってここまでやってきた、俺だ。

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