6-8 ダンジョン総選挙・完
「わあッ、びっくりした――!」
悪夢から目を覚ました俺は、その場で起き上がる。
周囲を見渡せば――イベントやってたフロアの地面で、俺は寝っ転がっていたようだ。
「ポム!(班長おきました?)」
掃き掃除なんかしてたのか、掃除用具を持ったボル班のみんなが駆け寄ってきた。
「うん。いや、なんか槍に串刺しにされる夢を見ちゃって……」
「ポム(思いっきり刺さってたぜ、班長)」
ポンッと、頭に乗るブルーの手。
……やっぱり夢じゃなかったか。
よく考えたら俺……戦い方とかちゃんと教わったの、中学の柔道の授業くらいだったよ……。
「ポム(イベントは終了したので、みんな待機してます)」
「……最後は、どうなったの?」
「ポム、ポム(ふっ。ニンゲンもやるようだったが、やはりシュバル様の力には及ばず――最後は全員撤退したぜ)」
「え~、いいなー」
せっかくだし、シュバルの活躍も見たかったなぁ。
「ただいまより、第1回黒の迷宮、ダンジョンヒロイン総選挙の結果を発表します!」
『おおー!』
簡易的な壇上が設置され、その上には4人の候補者が並んでいる。
マイクを持っているのは、頭から角を生やした、執事服のいつもの悪魔娘さん。
「まずは、第5位――ヌメルンさん!」
「はぁ……多少は好みの男もいたけど、ぜんぜんヌメりがいがなかったわ」
特設の牢獄でナニやってたんだろ。
「第4位は、ボルのピンクさん!」
「ポム!(みんなにナデナデして貰いました!)」
「ポム!(さすがピンクだ!)」
意外と受けは良かったらしい。
「で、第3位はというと――」
そのまま続けようとしたら、異議の申し立てが出た。
「ちょっと待ってください」
挙手したのは、エルだった。
「あれ? なんですかエルさん」
「3位だと……あと3人いることになりますけど」
「わたしも知らな~い。5人目って誰だったの?」
2人が首を捻る。
そこへ、1人の和装メイドが壇上へとあがってきた。
「ワシだ」
サプライズゲストの登場に、観客になっているモンスターたちも盛り上がる。
「おおー!?」
「ボス~そのニンゲンの姿なんですか~?」
その声を聞いて、2人も目の前にいる人物の正体に、すぐ気づいたようだ。
「…………え、シュバル様!?」
「ウソ~、シュバルちゃん!? カワイイ~!」
その隙に、司会はどんどん進行していく。
「というワケで第3位は……エルさん!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「第2位はサキュバスクイーンのスリーピィさん!」
「いぇ~い♪ って、もしかして……」
スリーピィの予想通りだ。
「栄えある第1位は――我らがダンジョンマスター、シュバル様です!」
『おお~ッ!!』
「え、えぇ!?」
「えー? ちょっと票数見せてよ~」
「こちらをどうぞ」
――――――――――――――
モンスター票1匹1点 全103匹
冒険者票 硬貨1枚につき1点 全1221枚
モンスター 冒険者 合計
ヌメルン 12点 22点 34点
ピンク 4点 47点 51点
エル 21点 271点 292点
スリーピィ18点 275点 293点
シュバル 48点 606点 654点
――――――――――――――
「うわっ。シュバルちゃん圧倒的じゃん」
「でもシュバル様は牢獄なんかに捕まってませんでしたよね?」
「あくまで硬貨を集めた数が、冒険者の票となる――そういう話だったはずだ」
ぶっちゃけ反則な手だけど。
「事前にルールを決めた時に『候補者本人が、冒険者から硬貨を貰うのはダメ』ってのはなかったよ。そうだよねー、シュバル」
「ああ」
「ふーん~……でもこれ、ダンジョンヒロインなんだけど……シュバルちゃんはこれから、その恰好でいるの?」
「グッ、うっ、それは……」
痛いところをついてきた。
「でも、カワイイからヨシッ」
「よくはないと思うぞ……」
「ふふーん。まぁでも、1票でも勝ちは勝ちだよね、エルちゃん」
「……わ、分かってます」
この結果を見て、スリーピィはニンマリと口角をあげる。
そのタイミングで、俺はわざとらしい声をあげた。
「あっ、そうだ。うっかりしてたな~」
「うん?」
「俺、投票すんの忘れてたよ~」
「おお! ではシローさん、せっかくなんで誰かに入れますか?」
「じゃー、お世話になってるし~……エルに入れとくよ」
「シローくん!?」
「ではこれで、第2位は同率ということになりますね!」
「シュバル! では、お願いをどうぞ」
「うむ――我にとって、2人だけでなく。ここにいるすべてのモンスターが大切な仲間であり、家族だと思っている」
凛々しいハスキーな声が、みんなへの想いとして、言葉にでてくる。
「魔界や人間界――さまざまな故郷を持つ者の集まりだ。互いの価値観の違いから、衝突することもあるだろう」
ほぼ女体化した姿だったが、誰もそのことは茶化さなかった。
「魔界においては強者が絶対だが、このダンジョンにおいては、ワシがルールとなる……不満があるのなら、まずワシにぶつけるがいい」
胸に手を当て、静かに目を閉じる。
「感情のコントロールとは難しいものだ。だが、それを理由にして、他へ攻撃的になるべきではない」
再び目を開ける時には、エルとスリーピィの2人の瞳を――じっと見ていた。
「分かったか、2人とも」
「……はい。シュバル様」
「……はぁ。分かったよ、シュバルちゃん」
まだ心の奥底は分からないけど。
表面上は、2人は納得したようだ。
「たしかに言いすぎでした……クイーン様。――ダンジョンのため、これからもよろしくお願いします」
「スリーピィって呼んでくれていいよー。……まーこれからはわたしのダンジョンの一員だし、一応よろしくね♪」
2人とも向き合い、和やかに笑顔を交わす。
「よし、じゃあ最後に、互いに熱い握手を――」
「ふん」
「はっ」
エルは右ストレートを、スリーピィの頬に。
スリーピィもまた右ストレートを、エルの頬に。
これはクロスカウンター……!
「いや、なにやってんの!?」
「……いえ。やっぱり1発ぶん殴らないと、スッキリしませんので」
「そうね~。これで今回のことは、水に流すってことで♪」
互いに鼻血やら、涙目になったりしてるけど――それでも、さっきよりも爽やかな表情だ。
「なるほど……じゃあ、さっぱり解決できたし。ランキングの集計も楽しみ――うん?」
俺の前に立ちふさがる、2つの影。
「それはそうと――」
「最初からまともな投票する気、なかったよね?」
「あー、えーっと……」
「そんな都合よく、1票差になんかなりませんよね」
「うふふ~シローくん――どんなお仕置きが好みかな♪」
かの中国に伝わりし、兵法三十六計のラストにはこう書かれている。
どうにもならないときには、逃げるべし。
「――おさらばッ!」
「待ちなさい! シロー!」
「三角木馬と、水車どっちが好きかな~?」
全力で逃げる俺――
まぁ、一瞬で身柄を押えられるんだけど。
レベル差が辛い!
「た、大変です~!」
フェルネが、1枚の紙を持ってやってきた。
た、助かった!
「ああ、フェルネ! ラ、ランキングどうだった?」
選挙よりも、そっちが重要なんだ。
グリュウとの決闘なんだし――だから、その足ドケて!
「それが……その」
なんか言い難そうだ。
どのような言葉を選んでいいのか、分からないといった顔だ。
「黒の迷宮、2万430ポイント。碧の洞窟、6万5520ポイント……」
そのフェルネの報告は、信じがたいものだった。
「……我が黒の迷宮が、負けました」
さっきまで大盛り上がりだったイベントフロアは、まるで深夜の墓所のように――
冷たく、静まり返った。
「嘘でしょ……」
◆おまけ
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
種族:ボル(ランク10)
称号:ブラックドラゴンの盟友
ドラゴン営巣担当、他
名前:シロー
レベル:7
ライフP:124
マジックP:102
ちから:57
がんじょう:91
すばやさ:27
たいりょく:110
まりょく:190
けいけんち:25
魔法:???(魔力不足により開示されません)
スキル:死ぬとレベルアップ、隠密LV1、徒手空拳LV1、エナジードレインLV1、マジックドレインLV1
NEWスキル:支援強化LV1
説明:サポート魔法を受けると、その効果が増加する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
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