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死にスキルを持って最弱魔物に転生した俺―友達のドラゴンが経営するダンジョンで巣作り担当やってます―  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ@コミカライズ企画進行中
第6話 スタンピード・ザ・総選挙

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6-6 ダンジョン総選挙・3


 戦いは、膠着(こうちゃく)状態に陥っていた。


「まぁ、そういう塩梅な難易度なんだけど……」


 それでも、モンスターたちの間をすり抜け、上手く向こう岸にある牢獄への転送装置へ駆け出す冒険者がちらほら出始める。


「ダンジョンの魔力により、我々は疲労を感じない――元より冒険者側には不利だろうな」


 ダンジョン契約モンスターは、様々な恩恵をダンジョンから受ける。

 蘇生もそのひとつだけど、他にも疲れ知らずだったり、ステータスが向上されたりとか。

 

「……それより、なんでシローは埋まっているのだ」

「……助けて」


 たまたま戻ってきたシュバル(ほぼ女体化)に引っこ抜いて貰い、その後頭部に捕まる。


「そのまましがみついていろ――ハッ!」

「ぐああッ」


 体制を崩したところを、オークに背後から襲われかけた若者を助けるシュバル。

 オークはそのまま逃げていってしまう。


「大丈夫か――くっ」

「アンタも大丈夫か!?」

「黒竜の魔力により、意識が持っていかれそうだ――」

「まさか! アンタも黒竜のさらわれたっていう……」

「はぁ、はぁ――頼む。あのコインを。黒竜は気が付いておらんが、アレには一時的に魔力を祓う効果がある……」


 硬貨だけに。


「わ、分かった……これに、そんな特殊効果があっただんて」


 ずっしりとした小さな麻袋を受け取る。


「古代の国には、旅人へのお守り代わりとして魔除けの呪文を印字してる硬貨もあるんだ……」


 その設定は初耳なんですけど。

 シュバルの創作? それとも本当に?


「ありがとう。少し楽になった」

「アンタはここから逃げた方がいい」

「……ありがたいが、捕まっているみんなもいる。ここでもう少し、他の冒険者たちの手助けがしたい」

「分かった……アンタの名は?」

「…………ク、クロだ」


 ネーミングセンスッ!

 しまった、名前考えてなかった。


「クロか。俺はカイン……互いに、頑張ろうな」

「ああ、お前もな」


 腰に吊るした鞘に剣を収め、一息つくシュバル。


「……こうやってコインを掠め取るのは気が引けるな」

「そう簡単に姫に会えたら困るからね。時間オーバーになっても、上の階層でまた券を稼いで貰うから大丈夫」

「では、これはまた他の者に渡して――むッ」

「うわっと」


 振り向きざまに剣を抜き、その一撃を受け止める。


「ぐっ」


 噓でしょ。

 シュバルが攻撃を受け流せず、そのままザザッと後ろに下がるなんて。


「ギヘッ、ヒャハハハッ!」

 

 その身体よりも大きな剣を、まるで箒のように軽々と振るう。


「トロールか」

「なにそれ」

「人間には、いくつかの種族がいる。その中でも、強固で強靭な肉体を持つ種族――だ!」

「うおっと!?」


 次々と連続で攻撃してくる。

 こちらはギュスター商会で売ってる強化ロングソードだけど、それでも遠心力を利用した、ただ体重任せの攻撃には手を焼いているみたいだ。

 

「ヒャッハハハッ!」

「な、なんかキマってるんですけど」

「あの瞳を見ろ」


 髪と同じく瞳もブラウンなんだけど――なんか緑色の小さな魔法陣が見えるような。


「アレは、碧竜の竜魔法(ドラゴスペル)だ」

「碧竜ってことは!?」

「ああ。この男は、グリュウの支配下にある――」


 なんか大人しいと思ったら!

 やっぱり、妨害してきたなこの野郎!


「ゲハハ……」

「グヘヘ……」


 気付けば、俺たちの背後にも冒険者が2人。

 サーベルを持った山賊と、ロングソードを持つオッサン。


「こいつ等も!」


 やっぱり瞳には緑の魔法陣。


「目的は――このワシの始末か」

「ゲハハハッ!」

「グヘェ!!」

「ヒャッハーッ!」


 3人は同時にシュバルへと斬りかかる。

 背後からのサーベルを寸前で躱し、ロングソードを剣で受け止め――

 横なぎでくる大剣の攻撃は、


「ふっ」


 その場でジャンプして、高らかに舞う。


「――ひとつ」


 そのまま体をくねらせながら、まず山賊男の右腕へ一撃。


「ゲハッ!?」

「ヒャッハッ!」

「――ふたつ」

 

 着地と同時に、地面スレスレまで低く駆け出し、大男の股下をスライディングですり抜ける。

 そのすれ違いざまに、背中を切りつける。


「グヒャッ!!」


 起き上がったところへ、オッサンが飛びかかって――


「ふんッ」

「グフッ!?」


 その腹へ、回し上段蹴りを決める。

 そのまま、左肩を突き刺した。


「ウッ――」


 3人はそのまま、地に伏したまま動かなくなっていた。

 それを確認してから、シュバルは剣を納めた。


「すげぇ……」

「これを見ろ」


 さっき左肩を突き刺したオッサンの服を破くと――傷跡のところに、ひっかいたような傷がある。


「これはグリュウの爪だ。こうして傷をつけた相手の血液に魔力を入れ、全身を操ることができる」

「なんて能力だ。アイツがやってる冒険者ギルドの人たちも、全員操られているんじゃないの!?」

 

 こんなのあったら、好き放題できるじゃないか!


「……血に流し込んだ魔力が大量であれば拒絶を起こし、人間では耐えられないだろう。恐らく、効果時間はそれほど長くないはずだ」


「あと、傷は刻印の役目を果たす。この傷の上より、他の傷で上書きしてやれば――」

「あ、あれ……痛ッ! なんでオレはこんなところにいるんだ?」

「大丈夫か。お前は碧竜にやられていたようだ……覚えはあるか?」

「碧竜……そうだ。たしか、村で碧竜が楽々狩れる穴場のダンジョンがあるって紹介してもらって……。

 ぐっ――碧竜に攻撃されたところまでは、覚えてるんだが……」

「やはりな……」


 ほか2人も目を覚まし、傷つけられた部分を押えながら立ち上がった。


「お前らは脱出するといい。その傷では、もう戦えまい」

「どこだここ……?」


 困惑しながらも、3人はシュバルが指差した転送魔法陣のある場所へ向かっていった。


「……恐らくグリュウのダンジョンでは、操られた冒険者が力尽きるまで徘徊させられているんだろう」

「それ禁止事項に該当しないの!?」


 ダンジョン側が、冒険者を拉致監禁してはいけないってやつ。


「怪しい線引きだな。しかし、告発したところで……すぐに能力を解除してしまえば――あくまで自発的に徘徊してたって言い訳でもすれば、それで終わる」


 強者主義社会の弊害!


「……しかし襲ってきたのはあの3人だけか。ヤツが本気で妨害してくるなら、ここにやってくる冒険者全員を支配下におけるはず」

「……ダンジョンポイント稼ぐように、残りは全員向こうにいるとか?」

「分からん……だが今は、この催しに集中しよう。まだまだこちらも、ポイントを稼がねばならない」


 せめてこのイベントだけでも、無事終わってくれないかな。

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