5-8 契約成立……?
「うーん――そ、それは江戸48手、御所車じゃないか――ハッ」
「大丈夫か、シローよ。うなされていたみたいだが……」
心配そうに顔を覗き込んでくるシュバルと、目と目が合う。
「な、なんか色々激しい夢だったな――」
ソファで寝かされていた俺は、静かに起き上がる。
身体は――相変わらずのオレンジボディ。
真っ二つになって割けるチーズになってた体は、いつの間にか元に戻っている。
「なんかすごい疲れた気分――うん?」
「ぐおー……ぐおー……」
この骨は、結局酒飲んで寝てただけかよ。
なにしに来たんだっけ?
「ごめんねー。魂とちょくせつ繋がりたかったから、痛くないように殺したんだけど……加減ミスって、臓物ぶちまけちゃった♪」
ソファとかは別に血で汚れてないけど――フェルネが青ざめた顔でこちらを見ている。
「その……すごいことになってました」
なってたかー。
「その分、わたしの血も足しておいたし。ちゃんと蘇生ったから、許してね♪」
「分かったよ……」
なんか不穏だけど――いきなり操られたりしないよね?
「条件1つはクリアだねー。じゃあもう1つ」
「まだなにかあるの?」
もう死ぬようなのは勘弁して欲しい。
「それはねー――黒の迷宮で職場体験、やりたいな☆」
「「「はぁ?」」」
俺とフェルネと、あとシュバルの声がキレイにハモった。
「ダンジョンマスターも長いことやってきたけど、先輩みたいに10万人や100万人と交尾するのもけっこう大変でさー」
「100万!?」
さすが性の大悪魔。ケタが違う。
「わたしなんか夢セッ〇スで満足しちゃうから、ぜんぜんリアル回数伸びないから……よく先輩サキュバスクイーンに怒られちゃうんだよ」
「はぁ……」
「サキュバスで経験人数1万人以下は処女と同じだと、大先輩たちはおっしゃられますね」
「だから、せっかくだし黒の迷宮で働くよ! いいでしょ?」
そんな上目遣いにお願いされてしまっては――
◆ ◆ ◆
「えー……今日から一緒に働くことになった……」
「レッドだよぉ♪ みんなよろしくねー☆」
頭に赤いリボンをつけた、流ちょうに喋るボル。
「ポム!(先輩として、しっかり教育してやるぜ)」
「ポム!(よろしくね! ボクはグリーンだよ!)」
「えへへ~。みんなカワイイね~シローくん」
そうなのである。
これは、スリーピィが変身した姿である。
部下の人にも、
『シロー様。クイーンのこと、よろしくお願いいたします』
なんて言われちゃうし。
だからって、ダンジョンの風紀を乱すマネは止めて欲しい――ってお願いしたら。
『あはは、大丈夫。シローくん以外とはヤらないから、安心して♪』
――あれ、大丈夫なのかそれ。
そんなことを思案していたら、部屋のドアをノックする音。
「失礼します――契約書をお持ちしました」
「ありがとねー。エルちゃん♪」
「……」
あれ、エルがなんかジェスチャーで――こっち来いって?
俺はエルと連れ立って、部屋の外へと出た。
「どうなってるんですか。なんでサキュバスクイーンが、ボルとしてウチで働くことになってるんですか!?」
「えーっと、話すと長くなるような――そうでもないような」
「……これも、アナタの発案ですか」
「そこは違うけど――でも、グリュウの野郎に勝つには、これしかないんだ」
「――眠りの塔出張所を、このダンジョンに造るって話でしたよね」
「ああ。隠しイベントみたいな感じで、でも分かりやすく地下1階に造ろうと思う――」
「はぁ……あんないかがわしい店を、シュバル様のダンジョンに……」
エルがその場でしゃがみ込んで頭を抱える。
これはマズい――俺はその肩へ手を乗せながら、必死に説明する。
「ぼ、冒険者相手だけだから! 一時的なもので、ちゃんと元に戻すからさ」
「…………分かってます。行って見ただけです」
それでも、グチを言わねばならなかったのだろう。
俺としても、これは聞かねばならない。
「すべてはシュバル様の勝利のため――わたしは全身全霊の覚悟で、それをサポートする所存です」
「うん」
「…………はぁ」
覚悟は決まっても、現実を受け入れるのはなかなか厳しいようだ。
「エルさん、シローさん! 大変です!」
「どうしたのフェルネ……まさか、またグリュウがなにか――」
ズゥゥゥン――!
ダンジョン全体が揺れる。
「え、なに。地震?」
ゴゴゴゴゴッという重い音と振動が、天井を伝わってダンジョンすべてに響いていく。
「外へ――スリーピィさんも一緒に!」
彼女に急かされるまま、俺たちはスリーピィを連れ立って、転送魔法陣でダンジョン外へと出た。
そこには、ありえない光景が広がっていた。
「なん、だと――?」
「こ、これは……!?」
ダンジョンの入り口休憩所、および地下への階段のある地上1階部分。
その上に――見覚えのある古びた塔の、最上階から3階分だけ切り取られたような――そんなパーツが、迷宮入り口の上に乗っていた。
「あっ、言い忘れてたけど~」
気付けば、スリーピィは少女の姿に戻っていた。
しかしいつものボンテージファッションではなく、どっかで見たことのあるスカート丈の短いメイド服だ。
「もう面倒くさいから、眠りの塔。店じまいしちゃった☆」
間。
「え、えぇ!?」
「クイーンさん、辞めちゃったんですか!?」
「そ、そこまでしなくていいのに……!」
「だってさ~元々わたしと、子供たちの実績作りのためだったし~。ぶっちゃけ、ダンジョンマスターも飽きちゃったし~」
イジイジと、自身の両手を絡ませる。
「あっ大丈夫♪ モンスター向けのお店は残った塔でやるし。ここにはわたしと子供たちの住居と、冒険者向けのお店をを造る予定だから――」
ニッコリと、とびっきりの笑顔。
「これでいつでも一緒だよ、シローくん♪」
どういうこと――?
「え~分かんないかな~?」
「ひゃっ、お尻撫でるのやめて――」
俺がセクハラを受けていると、塔よりゾロゾロとサキュバスたちが出てくる。
『よろしくお願いいたします、シロー様』
その数、ざっと10名ほど。
いやぁ、これは――ウチの男性陣は喜びそうだけども――
「ハッ、殺意――!?」
――振り向くと、エルが鬼のような形相で立っていた。
「どういうことか、シロー」
「いや、俺、これは知ら――」
ガシッと胴体を、そのまま握り潰すような勢いで捕まれる。
「責・任・者・は、」
鬼を通り越して、もはや般若に近い。
「アナタですよ?」
「ふぁ、ふぁい――」
そのまま俺は、エルから説明責任という名の説教を――何時間も聞かされることになったのだ。
◆おまけ
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
種族:ボル(ランク10)
称号:ブラックドラゴンの盟友
ドラゴン営巣担当
サキュバスと夢交尾
名前:シロー
レベル:6
ライフP:95
マジックP:80
ちから:43
がんじょう:70
すばやさ:15
たいりょく:102
まりょく:160
けいけんち:20
魔法:???(魔力不足により開示されません)
スキル:死ぬとレベルアップ、隠密LV1、徒手空拳LV1
NEWスキル:エナジードレインLV1、マジックドレインLV1
説明:肌と肌が接触している相手から精力、魔力を吸収する。
吸収速度はレベルと魔力に依存する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
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